@article{oai:niigata-u.repo.nii.ac.jp:00009557, author = {小林, 弘典}, issue = {10}, journal = {新潟医学会雑誌, 新潟医学会雑誌}, month = {Oct}, note = {【背景と目的】 鉄は赤血球におけるヘモグロビン合成や細胞内の酸化還元反応, 細胞増殖のために重要な役割を担っている. 生体内鉄代謝は半閉鎖経路であるのが特徴で, 輸血による強制的な鉄の体内移入や無効造血により容易に鉄過剰状態に陥る. 過剰鉄は活性酸素種(ROS)を介して細胞を傷害したり, アポトーシスに関与することにより各種臓器障害をもたらすと考えられているが, 骨髄機能への影響は明らかではない. これまで鉄過剰症の病態解析は先天性ヘモグロビン症や遺伝性ヘモクロマトーシスにおいて行われてきた. 骨髄異形成症候群や再生不良性貧血に代表される骨髄不全症も鉄過剰症をもたらす代表的疾患であるが, 過去の報告からは生体内鉄代謝の観点から, 骨髄不全症における鉄過剰症の原因は先天性ヘモグロビン症などとは違い輸血が主体であると推測される. 先天性ヘモグロビン症などとは異なり輸血後鉄過剰症の動物モデルについての報告はないため, 骨髄内鉄過剰マウスモデルを作製し, 鉄過剰が造血に及ぼす影響について解析を行った. 【方法】 C57BL/6Jマウスに含糖酸化鉄を腹腔内投与して鉄過剰群とし, 生理食塩水を投与したマウスをコントロールとした. 末梢血血算の評価とともに, 末梢血鉄代謝マーカーの評価, 病理学的に骨髄と肝臓の鉄染色を行い, 生体内鉄過剰の検討を行った. 骨髄では赤血球前駆細胞の割合, 細胞内ROS量, アポトーシスを来している細胞の割合を評価した. 【結果】 鉄過剰群では末梢血中の血清鉄及びトランスフェリン飽和率の有意な上昇を認めた. 病理学的には肝臓では鉄過剰群においてびまん性に著明な肝細胞内の鉄沈着を認めたのに対し, 骨髄においてはマクロファージと血管内皮細胞に強い鉄の沈着を認め, 血液細胞には明らかな鉄の沈着を認めなかった. 血算では鉄過剰群において有意な貧血を認めたが, 白血球数と血小板数には有意差を認めなかった. 骨髄では幼若赤芽球の割合の有意な低下を認め, 比較的成熟した赤芽球の割合には有意差がなかった. 幼若赤芽球の細胞内ROS量に有意差を認めず, アポトーシスを来している細胞の割合にも有意差を認めなかった. 【考察】 今回の輸血後鉄過剰症マウスモデルは, 末梢血鉄代謝マーカーの有意な変化と骨髄及び肝での鉄の沈着を証明できたことから, 輸血後鉄過剰症をin vivoで解析する有用なモデルとなると考えられた. 肝臓でびまん性に鉄の沈着を認めたのに対して, 骨髄ではマクロファージと血管内皮細胞に特異的な鉄の沈着を認め, 輸血後鉄過剰症での両組織における鉄代謝や分布の違いを反映している可能性が示唆された. 輸血後鉄過剰症における造血抑制は赤血球系統に強く出現し, これは幼若赤芽球の分化段階における造血抑制の結果であると考えられたが, 赤芽球内への明らかな鉄沈着がなく, 細胞内ROSの上昇やアポトーシスの亢進は認められず, マクロファージや血管内皮細胞への鉄の沈着を認めた. マクロファージは赤血球特異的な造血支持細胞であり, 血管内皮細胞もその詳細には不明な点も多いが造血支持細胞の一つと考えられていることから, 輸血後鉄過剰による赤血球造血の抑制は赤血球系細胞への直接障害ではなく, 造血微小環境への障害による可能性が示唆された.}, pages = {541--552}, title = {骨髄内鉄過剰症が造血に及ぼす影響 : マウスモデルを用いた検討}, volume = {126}, year = {2012} }