@misc{oai:niigata-u.repo.nii.ac.jp:00006038, author = {阿部, 雅弘}, month = {Mar}, note = {軽油代替燃料であるバイオディーゼル燃料(BDF : Bio Diesel Fuel)の低温流動性改善方法の開発を行った。BDFの低温流動性に影響を与える要因は高融点成分の飽和脂肪酸メチルエステル(FAME : Fatty Acid Methyl Esters)の結晶粒子の凝集過程において、低融点成分である不飽和FAMEを含んだ液体が凝集体に取り込まれることである。本研究では、食品添加物として広く利用され、安価かつ安定入手可能な非イオン性界面活性剤のソルビタン脂肪酸エステル(製品名Span)を添加物として固体粒子形状を改質し、BDF低温流動性を改善することを研究構想とした。BDFに含まれる代表的な飽和FAMEと不飽和FAMEを混合したFAME混合物を疑似BDFとし、結晶化開始温度を表す曇り点(CP:Cloud point)を低温流動性改善方法の評価項目として改善方法の評価を行った。第一に、添加物のFAME混合物のCPおよび固体粒子形状への影響を飽和FAMEのパルミチン酸メチルと不飽和FAMEのオレイン酸メチル混合物にSpan40(ソルビタンモノパルミテート)やアルコール類の添加物を加えた疑似BDF三成分系について理論的・実験的に検証した。FAME混合物のCPを熱力学的モデルに基づく結晶化開始温度予測式によりシミュレーションし、目視観察による添加物の固体粒子形状に対する影響を調査した。疑似BDFのCP改善に最も影響を及ぼすのはアルコールのような低分子量添加物であり、これは添加物による希釈効果によって高融点成分の飽和FAMEのモル分率が低下したことで凝固点降下が起きたためであった。さらにアルコール類の添加は疑似BDFの固体粒子形状にほとんど影響がなく、固体による液体取り込みが改善された様子は見られなかった。一方で、Span40は脂肪酸基による相互作用により疑似BDFの固体粒子形状を劇的に変化させ、固体による液体取り込みが抑制される傾向を示した。これらの結果から、Spanをウィンタリゼーションに活用する新たな飽和FAMEを結晶化・分離する方法を着想した。, 第二に、BDFを冷却して固化させた飽和FAMEを分別する方法であるウィンタリゼーションに着目した。ウィンタリゼーションにより得られる液体分離物は低融点な不飽和FAMEに富んでおり、低温流動性が飛躍的に向上したBDFとして利用できる。当然のことながら、ウィンタリゼーションにおいても固体による液体取り込みを原因とした相・成分分離性の低さが問題となる。この問題を解決する方法としてSpanによって結晶粒子の凝集を抑制することで液体取り込み問題を解決する添加物ウィンタリゼーションを提案し、この方法の有効性を検証した。実験方法はBDFの主成分となる様々な飽和FAMEとオレイン酸メチルによるFAME混合物に対して、飽和FAMEと同等の脂肪酸基を有するSpanを任意の量で添加し、試料のCPを基準とした冷却温度で定常化するまで48 h冷却した。結果として、BDF中の飽和FAMEの主成分であるパルミチン酸メチルとステアリン酸メチルとの構造類似性を有するSpan40(ソルビタンモノパルミテート)とSpan60(ソルビタンモノステアレート)を添加濃度0.50 wt%程度添加することで固体による液体取り込みが劇的に改善され、静置冷却後にデカンテーションにより固液分離すると、約70%の液回収率が得られた。液体回収物における飽和FAME濃度は初期濃度と比べて30~40%減少し、CPは最も改善された場合で原料CPの282 Kから273 Kまで9 K改善された。この結果は撹拌を必要とする従来のウィンタリゼーション方法の結果と比較して優れた改善効果を示したといえる。Spanを用いた添加物ウィンタリゼーションによるFAME混合物の分離性向上は、飽和FAME-オレイン酸メチル-Span混合物において、Spanの凝集体が飽和FAMEの種晶として作用すること、さらには粒子表面に吸着することで凝集を抑制し、粒子間の間隙を減少させるためであると結論付けた。第三に、Spanの種晶としての効果を向上させるために、Spanを利用したW/Oエマルション化による添加物ウィンタリゼーション方法を提案し、この方法を検討した。W/Oエマルション化はSpan分子同士の凝集を抑制し、飽和FAMEとの親和性を有するSpan分子の脂肪酸基を油相であるFAME混合物相へ指向させることで、Spanの種晶作用を向上させると予想した。実験方法は、FAME混合物にSpan40を添加・混和させた試料を撹拌しながらイオン交換水を加えた。エマルション化させた試料を撹拌しながら原料FAME混合物のCPと同じ冷却温度で48 h冷却してウィンタリゼーションを行った。Span添加濃度2.0 wt%および水添加濃度1.0 wt%の疑似BDFにおいて固化した固体の一部に飽和FAME濃度90 wt%以上の粗大な粒子を回収することができた。この結果から、W/Oエマルション化によるSpanの種晶としての効果を向上させることが可能なことが示唆された。一方で、液回収率は約90%と高いが、液体回収物の飽和FAME除去率は約7%にとどまり、他のウィンタリゼーションと比べて低い値となった。この方法の確立のためにはさらなる実験条件の検討が必要である。本研究により、ソルビタン脂肪酸エステルであるSpanを用いた添加物ウィンタリゼーションによって、FAME混合物から飽和FAMEを効率的に分離することが可能であり、疑似BDFの低温流動性が飛躍的に改善されることが分かった。今後、これらの工程を実用化するためのさらなる検討が必要である。, 学位の種類: 博士(工学). 報告番号: 甲第4466号. 学位記番号: 新大院博(工)甲第473号. 学位授与年月日: 平成30年3月23日, 新大院博(工)甲第473号}, title = {添加物ウィンタリゼーションによるバイオディーゼル燃料低温流動性の改善方法の開発}, year = {2018} }