@misc{oai:niigata-u.repo.nii.ac.jp:00005526, author = {棒田, 恵}, month = {Sep}, note = {研究の背景・目的 中国では、1978年の改革開放政策後、都市の拡大や農村の都市化によって、集落が消滅し、地域性を失ったユニバーサルな集合住宅に急速に置き換わっている。しかし、そのような状況下でも中国に広く分布している暖房設備であるカン(炕:kang)を持つ住居は、消滅せずに残っている。これらの住居には、住居形態や住まい方をその時代の需要により少しずつ変化させ、画一化、硬直化しない柔軟な仕組みが存在している。中国東北部のカンを持つ住居は、現在の農村住居でも残され利用されており、変化を受容する住まい方の仕組みがあると考えられる住居である。本研究は、奥行き一段構成の横長方形住宅の変容と、その他の多様な平面構成における炊事空間の変容の2つの視点から、 中国農村住居の変容を捉える。一つ目は、カンと炊事空間との強い結びつきに着目し、住まい方、改修と増築による空間の変化との関連性を分析し、居住者の新しい住要求を従来の農村住居の中で成立させている仕組みを明らかにする。次に、カンを持つ農村住居の重要な空間要素の1つである炊事空間の利用形態からカマドのある炊事空間の変容を、カンとの関連性から考察する。これらの仕組みの解明によって、今後さらに多様化する住まい方、新たな家族形態を受け入れ変容し、継承される住居の持続性の解明が本研究の目的である。 論文の構成と概要 本研究は、全6章で構成されており、各章の概要を以下に示す。第1章では、研究背景、目的の他に、既往研究(中国の住居研究、カンの研究、炊事空間の研究)と新潟大学・北海道大学で行った中国東北部の共同研究より本研究の位置づけを行った。また、本研究のプロセスについて記述した。第2章では、本研究の調査体制、調査方法、 調査地域の概略について記述した。本研究は、中国東北部の複数の都市近郊の農村において、主に漢族の住む住居の生活実態の調査を実施した。 調査方法は、訪問調査を原則として、実測調査とインタビューを行い、居住者に空間と家具との関係を確認しながら生活の状況を質問した。本研究は、漢族のカンが広く分布する中国東北部の主要都市である遼寧省大連市、黒竜江省哈爾浜市の都市近郊の農村地域を対象地域として、2005年から2013年に調査を行った。また、分析にあたり、新潟大学西村伸也研究室が1993年から2001年に行った大連市、哈爾浜市での調査データも一部利用した。, 第3章では、 カンを持つ農村住居の基本的な空間構成と住まい方を示すとともに、建設年代によるカンとカマドの形態的な変容の傾向を説明し、カンとカマドのある厨房との関連性を示した。中国東北部のカンを持つ農村住居は、 入口兼厨房であるカマドのある厨房(外地)とカンの設置される寝室(臥室)で構成されている。外地に設置されているカマドは、カンと隣り合う構成であるため緊密な関係である。従来の農村住居のカン上では接客、就寝、食事、団欒などが行われ、また外地では炊事、洗濯、夏の食事、簡易な接客が行われており、様々な行為が重層している。そのため、カンとカマドのある厨房が、 お互いに影響し合いながら変容していると考えられる。また、同一住居の異なる世帯毎でカンとカマドを所有していたため、居住者の減少などによる家族構成の変化が、カンでの住まい方とカマドのある厨房の利用形態へ影響すると考えられる。カンとカマドのある厨房は共に建設年が新しくなるにつれて、従来の農村住居とは異なる位置に設置され、カンとカマドのある厨房を左右非対称に設置する住居が発生していた。カンの利用と強い関連性を持つ炊事空間は、カマドのある厨房の設えの変化、炊事設備の近代化、家族構成の変化の影響を強く受けていると考えられる。そのため、カンを持つ農村住居の住まいの仕組みの解明には、生活の中心であるカンを炊事空間の変容との関連の中から捉えることが重要であるとした。, 第4章では、農村住居、奥行きが一段の横長方形住宅の改修と増築による変容を捉えた。農村住居の改修と増築による空間構成や住まい方の変容を炊事空間(外地や厨房)の変容を手がかりとして、従来の農村住居の中に新しい住要求を成立させているカンを持つ農村住居の空間更新の仕組みの解明を行った。改修による主要な変化としてカンの取り壊し、カマドの取り壊し、間仕切りの設置があり、また、主要な改修場所としてカマドのある炊事空間が多く、炊事空間の改善がこれらの住居には重要であった。また、正房の増築でも、新たに炊事空間を増築して、その位置を外地から別の場所に移行することからも読み取れる。複数の改修と増築を組合せる住居では、炊事空間を伴う組合せが多く、炊事空間と関連している空間が変容していると考えられる。また、これらの改修と増築の変化により、就寝の移行、カン上の食事や接客の移行、世帯の分離が、主な改修と増築による生活行為の変化として捉えられた。就寝の移行は、カンの取り壊しによって空間が確保され、客庁や餐庁を確保する為に行われているわけではなかった。空間の分割による生活行為の移行は、外地奥の空間がカン上の行為を受容する空間となることで移行が可能となっていた。さらに複数の改修と増築により、親世帯と子世帯の空間を分離し、親世帯はカンを中心とした従来通りの生活を送り、子世帯はカンを就寝の場所として利用できる空間を形成していた。これらの住居では、就寝、接客、食事を中心として生活行為が機能分化しており、単純に分化しているのではなく、使い分けを行いながら季節や状況に応じて機能分化していた。特に、食事は季節による使い分けが多く、接客は状況による使い分けが特徴として挙げられ 、行為による異なる性質が捉えられた。カンの上の生活が、改修や増築によりベッドのある臥室や外地奥の餐庁や客庁に移行し、外地がカン上の生活行為の移行の影響を受けて変容していた。これら改修と増築の変容は、単純に住居にカン上の機能を分離するものではなく、カンでの生活をより充実させるために、炊事空間である外地を変化させることで対応していることを明らかにした。, 第5章では、炊事空間の変容に焦点を絞り、カンを持つ農村住居の炊事空間と利用方法の特徴、その仕組みについて分析している。外地で行われていた行為のうち、炊事と洗濯の生活行為に着目して、炊事空間の形態的特徴について分析した。その後、炊事と洗濯の空間利用に着目して、生活行為の繋がりから炊事空間の変容の仕組みを考察した。炊事空間の変容は、カマドのある厨房の位置を変化させることに加え、炊事場所と洗濯場所の拡張、分離、またカマドのある厨房の複数化といった形態の変容により、空間を拡大していた。炊事場所は、専用の場所を設ける住居も存在するが、多くの住居では、炊事拡張を行っており、また他の行為と場所を共有している。一方、洗濯場所は、カマドのある厨房から分離し、炊事場所との混在が避けられている。また、空間を準備するだけではなく、カマドのある厨房と炊事場所あるいはカマドとコンロの季節、時間帯、調理工程による使い分けを行い、状況による利用形態が異なっていた。さらに、炊事拡張を行うことで、カン上の生活と炊事空間の改善が行われていた。さらにカマドのある厨房は、カン上の行為を行えるように空間の利用形態を変化させていた。一方、洗濯は、炊事ほど複雑な利用形態とはならず、洗濯場所で炊事とは混在させない利用形態となっていた。カマドのある厨房の複数化は、世帯毎の独立した生活を確保しつつ、生活の一部を共有する住まい方も可能とする住居形態であった。2世帯の生活空間を分離するためにカマドのある厨房を複数化する住居があるが、将来の2世帯同居の準備として複数化を行っている住居も存在していた。これら炊事空間の変容は、カマドのある厨房の改善だけではなく、カンでの生活を含めた居住環境の改善、入口空間としての利用形態の変更、新たな家族形態への対応といった要望に関連して空間構成を変容していた。第6章では、全体を総括するとともに、中国東北部のカンを持つ農村住居の改修と増築、炊事空間の変容による持続的な仕組みと住環境形成について考察した。カンを持つ農村住居の空間構成の変容は、カンでの生活の保持、炊事空間の改善を行うために、改修と増築、炊事拡張、炊事分離、洗濯分離などの炊事空間の変容があった。中国東北部のカンを持つ農村住居の炊事空間は、カン上の生活を支えるように空間や炊事方法を変化させて、個々の住居の状況に応じた変化をしていた。家族構成の変容に対しても従来の住まい方を継承するだけではなく、世帯毎で異なる住まい方を行えるようにカマドのある厨房を複数化することで対応していた。中国東北部のカンを持つ農村住居では、カンと炊事空間の相補的な関係が動的な機能分化を引き起こし、カンのある空間を軸とした炊事空間の変容が行われ、持続的な仕組みを形成していることを明らかにした。, A rapid development and expansion of urbanized cities is occurring in China. Due to these influences, low-rise housing in agricultural areas is being replaced with electrical components factories, high-rise buildings and so on. However, traditional homes like farmhouses with kang have long existed in northeast China. For centuries, applying rigid and uniformed features has been avoided in these farmhouses, instead maintaining systems which are gradually transformed through resident’s demands of the times. The kind of house has unique elements within farmhouse composition and resident’s behaviour, including lifestyle and farming, in traditional society. In severe environments, residents supported themselves, so that they get along until now. Pinpointing a cold district in northeast China, the study aims to explore sustainable systems within a village and its farmhouses in order to adapt new living demands and family configuration, analyzing the transformation of space composition and recent lifestyle changes. Two main focuses of the study are : 1) The transformation of space composition of kang in conjunction with home renovation and extension influenced by recent lifestyle changes. A key transformation is the shift in kang usage from a multifunctional space to a mono-functional one. Another included the establishment of entertaining and eating space influenced by changing cooking space with kamado. In addition, the study uncovered multi-functional differentiation, more specifically, the flexibility to adapt to recent lifestyle while sustaining kang-centred living. 2) The transformation of cooking space with kamado related to kang in conjunction with behavior in the food preparation area. This study found that the characteristics of transformation were expansion of the cooking space and separation of part of the cooking space with kamado. Meanwhile, the laundry space was separated from the cooking area. These transformations were linked with not only improvement of the cooking space, but also kang-centred living style and two-generation living. We clarified that the systematic change of the cooking space with kamado contributes to the sustainability of the farmhouse so as to maintain the local living environment. The study clarified that the farmhouse with kang possess multi-functional differentiation by kang centred living. In addition, the house transformed in conjunction with reciprocal relationship between kang and cooking space with kamado in order to keep living on the kang. The study concluded two unique features, the multi-functional differentiation and the reciprocal relationship, both of which are created to provide an adaptable system for sustainability., 学位の種類: 博士(工学). 報告番号: 甲第3965号. 学位記番号: 新大院博(工)甲第418号. 学位授与年月日: 平成26年9月22日, 新大院博(工)甲第418号}, title = {中国東北部のカンを持つ農村住居の炊事空間の変容に関する研究}, year = {2014} }