@misc{oai:niigata-u.repo.nii.ac.jp:00004784, author = {常石, 真映}, month = {Mar}, note = {スカラー・テンソル重力理論は、BransとDickeによる先導的な研究以来、一般相対性理論の自然な拡張として今日でも、たとえば超弦理論の低エネルギー領域における有効理論として注目されている。一般相対性理論では、重力場は、時空の幾何学的性質として解釈され、計量テンソルで記述される。その意味で一般相対性理論は、テンソル重力理論である。それに対してスカラー・テンソル重力理論は、重力定数をスカラー場と考える理論であり,この意味で、重力はテンソル場だけではなくスカラー場によっても媒介されることになる。ところで、現在にいたるまで、太陽系のような弱い重力場での実験や観測は、一般相対性理論に基づく結果と一致しているが、しかし、そもそもこのような重力場では、スカラー・テンソル重力理論と一般相対性理論との違いは、非常に小さい。そこで本論文では、強い重力場でのスカラー・テンソル重力理論の特有な性質を理解するという目的のため、この理論における静的で軸対称性をもつ特解を用いて、この時空での光の伝搬の性質や重力レンズ効果を調べた。この静的軸対称真空解は、漸近的平坦性という性質を持ち、スカラー場が定数になるときには、一般相対性理論におけるWeyl解の1つであるVoorheesの偏長解に一致する。なお、本論文は、光的測地線が、共形変換に対して不変であるという性質に着目して、結果が、スカラー・テンソル重力理論のモデルの詳細によらいないように、共形変換の手法を用いている。まず、解に含まれる3つのパラメータの物理的意味を明らかにするために、空間的無限遠付近における解の漸近形を導出する。その結果、これらのパラメータが、それぞれ、スカラー場の大きさ、時空の非球対称性、そして共形変換によって対応づけられるEinstein系における質量を表すことが示される。また、解に含まれる極が、近づく方向よっては特異点ではなくなるという、特異点の方向依存性について、簡潔な議論をする。次に、解に含まれるパラメータの値の相違が時空構造にどのように反映されるかを理解するため、赤道面における光的測地線の方程式とSachsの光学的スカラー方程式について調べる。ここで、光的測地線の方程式は、いわゆる光の軌道を表す式であり、光学的スカラー方程式は、光の像の振る舞いを表す式である。光的測地線に関して、いくつかの特別なパラメータのとき、衝突係数に関する関数として光の屈折角を解析的に求めることができる。この解析解から光の屈折角が、負になりえるという興味深い結果が得られる。また、衝突係数が減少するにしたがって、屈折角が増加から減少に移り変わるというシュワルツシルト時空にはない極値の存在が確認できる。, さらに、その他さまざまなパラメータについても、数値的に光の屈折角を求める。そして、シュワルツシルト時空にはない特徴について、すなわち極値の個数、および負の屈折角が実現されるかどうかでパラメータ領域を分類する。その結果、極値が2個存在するという特異なパラメータ領域の存在が見いだされ、その領域がスカラー・テンソル重力理論特有の領域であることがわかる。また、注目すべきは、一般相対性理論におけるWeyl解でも、光の屈折角が負になるパラメータ領域の存在が確認できたことである。ところで、負の屈折角の存在は、光の軌道が、"反射"することを示唆している、そこで、光的測地線の方程式を数値的に計算し、実際に光の軌道が"反射"している様子がわかる具体例を示す。そして、光の軌道が"反射"しているときの条件について考察し、"反射"が実現できるかどうかでパラメータ領域を分類する。さて、光の像の振る舞いは、光学的スカラー方程式を解くことでわかるが、それはRiemann曲率テンソルの要素であるRicci項とWeyl項の性質に依存する。ここで、Ricci項とWeyl項は、それぞれ像の収縮と歪みに寄与する量である。ところが、Ricci項より主にWeyl項が効いており、さらにWeyl項がシュワルツシルト時空と比較して、重大な定性的違いを示すことがわかる。また、Weyl項の定性的性質を特徴づける特別な衝突係数が存在することが解析的にわかる。そこで、Weyl項の定性的な違いをもとに、パラメータ領域を分類したところ、4つの異なった領域が存在することが示される。また、このWeyl項による分類と屈折角の振る舞いによる分類、および光の反射が起こるパラメータ領域を比較したところ、高い類似性があることが示される。最後に、それぞれの領域で、数値的に光学的スカラー方程式を解き、光の像の振る舞いを調べる。このとき、薄いレンズ的描像が成り立つことが示される。また、光学的スカラー方程式に対する簡単な解析的モデルを考察し、このモデルがよい近似であることを示す。光の像に対する像の変形度を求め、衝突係数の関数としてその振る舞い調べた結果、上記の特別な衝突係数の近傍において、像の変形度が非常に大きくなる現象が現れた。そこで、光の像の振る舞いの違いからパラメータ領域を分類したところ、光の像の分類とWeyl項による分類とに密接な関係があるという結果を得た。これは、光の伝播と重力レンズ効果の性質に対して、上述したWeyl項による分類が、非常に重要な物理的意味を持つことを示唆している。, 新大院博(理)甲第248号, 新大院博(理)甲第248号}, title = {スカラー・テンソル重力理論における光の伝播と重力レンズ効果}, year = {2006} }