@phdthesis{oai:niigata-u.repo.nii.ac.jp:02001011, author = {野地, 隼平}, month = {2023-05-24, 2023-05-24}, note = {この論文では中性溶質近傍の水の誘電率がバルクよりも低くなることに対して中性溶質近傍の数密度と排除体積の寄与を明らかにすることを目的とした。電気的に中性と仮定した球形タンパク質が水分子に溶けている系では大きい中性溶質近傍において水の誘電率がバルクよりも低くなることが分子動力学(MD)シミュレーションを用いて示されている。中性溶質近傍の誘電率の減少に対する様々な要因の寄与が議論されているが、本論文では特に溶質近傍の数密度と排除体積の寄与に注目する。数密度は溶質外側で溶媒分子の分布の程度、排除体積は溶質内側に溶媒分子が存在できないことを指す。これまでの研究でも中性溶質近傍の誘電率に対する溶質近傍の数密度と排除体積の寄与が議論されている。一方で、中性溶質近傍の誘電率に対する中性溶質近傍の数密度と排除体積の寄与の2つを比較してそれぞれがどの程度寄与しているのかが不明であるという問題があった。そこで本研究では統計力学を用いて中性溶質近傍の数密度と排除体積の2つの要因を独立に取り扱うことで、それぞれの要因の寄与を比較した。中性溶質近傍の数密度と排除体積の2つの要因を独立に取り扱うために、数密度を自由に設定できる理論を用いた。一般に誘電率を得るために電場を印加した系の分極場に関する線形応答理論を用いており、電場を印加しない系の分極場のゆらぎから誘電率を計算している。誘電率は分極場のゆらぎよりも分子的な描像の情報が少ないため、本研究では分極場のゆらぎに注目した。溶質近傍の分極場の揺らぎを計算するためには少なくとも溶質粒子-溶媒粒子-溶媒粒子の3体の相関を考慮する必要がある。これまでの研究では直接理論で取り扱うことが難しいため、溶質との相関を無視した溶媒-溶媒の2体の相関とする近似を用いていた。そこで、電場を印加した系の分極場を密度汎関数理論することにより、直接分極場のゆらぎを計算する困難を避けた。しかし電場を印加した系の分極場の計算には分子の位置座標と分子配向に関する高次元の積分が必要で計算が困難という問題が存在するため、密度汎関数理論のみでは計算ができない。そこで回転不変量で展開することにより、位置座標の配向と分子配向の計算を解析的に行うことでこの問題を解決した。この理論を具体的な系に適用し、分極場のゆらぎに対する中性溶質近傍の数密度と排除体積の2つの要因の影響を議論した。適用した系は点双極子モーメントを重心に持つN個の剛体球溶媒粒子の中に1個の中性溶質を浸した系である。本研究で用いる理論では1.数密度、2.双極子-双極子相互作用の強さを表すパラメータ、3.溶質直径のインプットの3つのパラメータを決めれば、分極場のゆらぎが得られる。そこで3つのパラメータを独立と仮定し、双極子-双極子相互作用の強さを表すパラメータと溶質直径における数密度と排除体積の2つの要因の寄与を調べた。まずMDシミュレーションに近いパラメータを用いて理論計算したところ、シミュレーションの結果を定性的に再現した。溶質が大きい場合の分極場のゆらぎはバルクに比べて小さくなり、分極場のゆらぎにおける溶質からの距離依存性がMDシミュレーションの結果と矛盾ない。一方で溶質が小さい場合の分極場のゆらぎはバルクに比べて大きくなり、溶質が大きい場合と同様にMDシミュレーションと矛盾ない結果が得られた。適用した系はMDシミュレーションの場合と溶媒間相互作用が異なるにもかかわらず、2つの場合のシミュレーションの結果を定性的に再現した。但し、理論計算した分極場のゆらぎの減少はMDシミュレーションの分極場のゆらぎよりも急激に減少した。次に溶質が大きい場合の分極場のゆらぎの減少に対する双極子-双極子相互作用や溶質直径でどう変わるのかを調べた。その結果、双極子-双極子相互作用が大きい程分極場のゆらぎの減少が大きくなることが明らかになった。また、溶質直径が大きくなると分極場のゆらぎの減少が大きくなることも明らかになった。最後に分極場のゆらぎに対する排除体積の寄与を人工的な数密度を用いて計算した。この人工的な数密度を用いることで、分極場のゆらぎに対する溶質外側の数密度の寄与を取り除いた。計算結果として排除体積の寄与のみで分極場のゆらぎが減少することが得られた。但し、数密度の寄与を除く前の方が減少量は大きくなった。そこで分極場のゆらぎの減少に対する排除体積の割合が双極子-双極子相互作用や溶質直径でどう変わるかを調べた。その結果、双極子-双極子相互作用が大きい程排除体積の割合が大きくなることが明らかになった。その割合は双極子-双極子相互作用に対して単調に増加しており、結果の中で最も大きい双極子-双極子相互作用と溶質直径で排除体積による割合が0.57まで増えた。また、溶質直径が大きくなると排除体積の割合が大きくなることも明らかになった。, 新大院博(理)第483号}, school = {新潟大学, Niigata University}, title = {中性粒子近傍における極性溶媒から得られる分極場ゆらぎの密度汎関数理論による研究}, year = {} }