<中扉> 財団法人 電気通信普及財団 平成24年度 研究調査助成 視覚障害者の携帯電話・スマートフォン・タブレット・ パソコン利用状況調査2013 平成26年6月 研究代表者:渡辺 哲也(新潟大学 工学部 福祉人間工学科) 研究協力者: 山口 俊光・南谷 和範 <平成24年度 電気通信普及財団 研究調査助成 成果報告書> ■ テーマ 視覚障害者の携帯電話利用状況調査 ■ 組織 ○研究代表者: 渡辺 哲也 新潟大学 工学部 福祉人間工学科・准教授 ○研究協力者: 山口 俊光 新潟大学 自然科学研究科・特任助手 南谷 和範 大学入試センター・准教授 ■ 期間と経費 平成25年度・・・・・・1,282千円 ■ 研究調査の経過 平成25年4月〜9月 調査方法・内容の検討,調査票の作成 平成25年9月〜11月 調査の実施 平成25年10月〜11月 調査データの入力 平成25年11月〜平成26年6月 調査データの集計・整理,学会発表,成果報告会の開催,報告書の作成 ■ 研究成果発表 【学会等発表】 渡辺哲也 視覚障害者の携帯電話・スマートフォン・タブレット利用状況調査 研究集会「科学情報の電子化・自動処理,およびそのアクセシビリティ―デジタル教科書のアクセシビリティをめぐって―」, キャンパスイノベーションセンター東京, 東京都港区, 平成26年2月8-9日. 渡辺哲也, 山口俊光, 南谷和範 視覚障害者の携帯電話・スマートフォン等利用状況調査2013 電子情報通信学会技術研究報告, Vol.113, No.481, pp.25-30 (WIT2013-71), March 2014. 渡辺哲也, 山口俊光, 南谷和範 視覚障害者にとってのスマートフォン・タブレットの利点と問題点 −ICT機器利用状況調査結果の分析− 電子情報通信学会福祉情報工学研究会, 金沢, June 2014.(発表予定) 渡辺哲也, 山口俊光, 南谷和範 視覚障害者のICT機器利用状況調査2013 第23回視覚障害リハビリテーション研究発表大会, 京都, July 2014.(発表予定) 渡辺哲也, 山口俊光, 南谷和範 視覚障害者のパソコン利用状況調査2013 電子情報通信学会福祉情報工学研究会, 神戸, August 2014.(発表予定) 【成果報告会】 「視覚障害者の携帯電話・スマートフォン・タブレット・パソコン利用状況調査2013」及び 「視覚障害者のセーフ・モバイル・アクセスを実現する腕時計型点字ディスプレイの開発」 会場:キャンパスイノベーションセンター東京(東京都港区) 日時:平成26年3月15日10:00〜16:30 <目次> 第1章  背景と目的 第2章  調査の実施 第3章  結果 第1節  回答者 第2節  携帯電話,スマートフォン,タブレット,パソコンの利用状況(全般) 第3節  携帯電話の利用状況 第4節  スマートフォンの利用状況 第5節  タブレットの利用状況 第6節  パソコンの利用状況 第4章  まとめ 付録 1.  成果報告会の概要と開催要項 2.  調査票送付先一覧 3.  調査票 4.  スマートフォン・タブレットのアクセシビリティ <扉紙> 調査 Survey 第1章 背景と目的 パソコンや携帯電話などのICT機器とその支援技術(音声出力,拡大表示など)は,視覚障害者の文字アクセス環境の構築に大きく貢献してきた。そのICT利用環境の中で,近年もっとも大きな変化がスマートフォンとタブレットの台頭である。 大きな画面とタッチパネル操作を特徴とするスマートフォンとタブレットは,画面拡大操作がしやすい,拡大読書器の代わりに使えるなど,ロービジョン者にとって利点が多く,その普及のための活動が進められている。両機器はアプリを簡単にインストールできる点も特徴である。アプリの中には,カメラで撮影した物体の自動認識やGPSナビゲーションなど,視覚障害を補償する「便利アプリ」も流通しており,これらは全盲者にとっても有効である。 このような便利さの反面で,視覚障害が理由で使いにくい点もあると思われる。たとえ音声出力機能があっても,触覚的手がかりのないタッチパネル操作は全盲者にとって難しいのではないだろうか。ロービジョン者は,パネル上の意図しない箇所をタッチしてしまうことはないだろうか。 このようなスマートフォンとタブレットの利点と問題点を正確に捉えて情報を提供することで,視覚障害者やその支援者にとっては,次に使うICT機器選びの参考してもらいたい,研究者や開発者(特に携帯端末のメーカー)にとっては問題点の正確な認識とそれを改善するための研究開発につなげてもらいたいというのが,今回の利用状況調査を実施する主たる動機である。ひとくくりに視覚障害者と言っても,上述のようにロービジョン者と全盲者の間で,期待する機能や使用上の課題などが異なると推測されるので,その状況を分析することも目的としている。 著者らはこれまで3回にわたって視覚障害者のICT利用状況調査を行ってきた(2000年,2002年,2007年,次のページを参照)。その調査報告書は,支援技術分野においては研究の基礎資料として引用され,官公庁においては政策の基礎資料として用いられてきた。2007年に実施した前回の調査以後既に5年が経過し,視覚障害者のICT利用の分野では上述したとおりスマートフォン・タブレットの台頭という大きな変化を経験する中で,視覚障害者団体,企業におけるWebアクセシビリティ担当者,官公庁のアクセシビリティ関連部署からは同種の調査実施への期待が寄せられてきた。その社会的責務を果たすために,タッチインタフェース機器だけでなく,従来から利用されてきた携帯電話,パソコン,Webも対象とした包括的なICT利用状況調査を実施することとした。 ■ 過去の調査について これまでに実施した視覚障害者のICT利用状況調査については,以下に示す報告書にまとめられている。いずれもWebからPDF版を入手可能である。 2000年調査 視覚障害者のWindowsパソコン利用状況, 日本障害者雇用促進協会(現高齢・障害・求職者雇用支援機構)障害者職業総合センター研究部門, 資料シリーズNo.22, January 2001. URL: http://www.nivr.jeed.or.jp/research/report/shiryou/shiryou22.html 2002年調査 視覚障害者のWindowsパソコン及びインターネット利用・学習状況, 国立特殊教育総合研究所(現国立特別支援教育総合研究所), 特殊研D-190, March 2003. URL: http://www.nise.go.jp/kenshuka/josa/kankobutsu/pub_d/d-190.html 2007年調査 視覚障害者のパソコン・インターネット・携帯電話利用状況調査2007, 国立特別支援教育総合研究所, 特教研D-267, March 2008. URL: http://www.nise.go.jp/kenshuka/josa/kankobutsu/pub_d/d-267.html 第2章 調査の実施 1.手順 調査の実施は,中途視覚障害者の雇用継続を支援するNPO法人タートル(http://www.turtle.gr.jp/)に委託した。タートルは,視覚障害者が主に参加する47のメーリングリストで回答者を募集した。メーリングリストの一覧は付録の2に示す。 調査期間は2013年9月25日から同年11月10日までとした。 2.調査事項 調査事項は次の六つのパートに分かれている。調査票は付録の3に示す。 (1) 回答者のプロフィール (2) 携帯電話,スマートフォン,タブレット,パソコンの利用状況(全般) (3) 携帯電話の利用状況について (4) スマートフォンの利用状況について (5) タブレットの利用状況について (6) パソコンの利用状況について 第3章 結果 第1節 回答者 全回答者数は304人となった。 性別は,男性199人(65.5%),女性105人(34.5%)と男性の割合が高かった(図3-1-1)。 年齢分布は40代〜60代が過半数を占め203人(66.8%),次に多かったのが20代〜30代で79人(26.0%)を占めた(図3-1-2)。平均値は48.2歳となった。 図3-1-1 男女比 n=304 男性 199人(65.5%) 女性 105人 (34.5%) 図3-1-2 年齢分布 n=304 10代 5人 (1.6%) 20代 36人 (11.8%) 30代 43人 (14.1%) 40代 72人 (23.7%) 50代 63人 (20.7%) 60代 68人 (22.4%) 70代 14人 (4.6%) 80代 1人 (0.3%) 90代 1人 (0.3%) 年齢不明1人 障害等級ごとの人数を図3-1-3に示した。1級の人が最も多く191人(62.8%),次に2級の人が84人(27.6%)であった。聴覚障害の等級について併せて答えた人もいたが,ここでは視覚障害の等級のみをデータとして用いた。 視覚を使った文字の読み書きができるかどうかを尋ねたところ,114人(37.5%)ができると答え,190人(62.5%)ができないと答えた(図3-1-4)。以後,この報告書では,できると答えた人をロービジョン,できないと答えた人を全盲と表現する。なお,文字の読み書きができるかどうかの判断は回答者に委ねた。 図3-1-3 障害等級の分布 n=304 1級 191人 (62.8%) 2級 84人 (27.6%) 3級 4人 (1.3%) 4級 5人 (1.6%) 5級 11人 (3.6%) 6級 1人 (0.3%) なし 5人 (1.6%) 等級不明3人 図3-1-4 視覚的な文字の読み書きができるかどうか n=304 できる 114人 (37.5%) できない 190人 (62.5%) 障害等級と全盲/ロービジョンの別の関係を見たところ(図3-1-5),障害等級1級191人の中では,全盲者が164人(85.9%)と大部分を占め,ロービジョン者は27人(14.1%)にとどまる。他方で,同2級84人の中では全盲者が23人(27.4%),ロービジョン者が61人(72.6%)と比率が逆転する。同様に同3級〜6級,並びに手帳を持っていない人の中でもロービジョン者の割合が高く,3級〜6級では21人のうち20人(95.2%)が,手帳を持っていない5人のうち4人(80.0%)がロービジョンであった。 機器の利用状況や利用上のニーズは,視覚を使って文字を読み書きできるかどうかによって質的に変化するため,この観点からの分析は重要である。また,障害等級3級〜6級の人と手帳なしと答えた回答者数は1級・2級の人と比べて少ないため,障害等級を指標とした分析が適切に行えない。これらのことを踏まえて,これ以後は,全盲者の回答とロービジョン者の回答を分けて,利用状況やニーズを分析することにする。 図3-1-5 障害等級別に見た全盲/ロービジョンの割合 1級(191人) 全盲 164人(85.9%) ロービジョン 27人 2級(84人) 全盲 23人 ロービジョン 61人(72.6%) 3級〜6級(21人) 全盲 1人 ロービジョン 20人 なし(5人) 全盲 1人 ロービジョン 4人 第2節 携帯電話,スマートフォン,タブレット,パソコンの利用状況(全般) 1. 利用率 全回答者304人のうち,携帯電話の利用者数は247人(81.3%),スマートフォンは81人(26.6%),タブレットは44人(14.5%),パソコンは290人(95.4%)であった。この情報通信機器の利用率を,全盲者190人とロービジョン者114人に分けてグラフに表したのが図3-2-1である。 全盲者の方が,ロービジョン者より携帯電話の利用率は高かった(全盲:85.8%,ロービジョン:72.8%)。逆に,ロービジョン者の方が,全盲者よりスマートフォンの利用率は高かった(全盲:22.6%,ロービジョン:33.3%)。これらのデータから,ロービジョン者の間では全盲者よりも携帯電話からスマートフォンへの移行が進んでいると言える。 スマートフォンと同様にタブレットの利用率もロービジョン者の方が全盲者より高かった(全盲:9.5%,ロービジョン:22.8%)。 どちらのグループにおいてもパソコンの利用率は9割を超えて高かった(全盲:96.3%,ロービジョン:93.9%)。 図3-2-1 情報通信機器の利用状況 全盲 n=190 ロービジョン n=114 携帯電話 全盲163人(85.8%) ロービジョン84人(73.7%) スマートフォン 全盲43人(22.6%) ロービジョン38人(33.3%) タブレット 全盲18人(9.5%) ロービジョン26人(22.8%) パソコン 183人(96.3%) ロービジョン107人(93.9%) 2. スマートフォンまたはタブレットを使い始めた理由 スマートフォンまたはタブレットの利用者に,これらを使い始めた理由を自由記述形式で回答してもらった。直前の質問におけるスマートフォンまたはタブレットの利用者97人のうち89人から回答を得た。直前の質問では両機器を利用していないと回答したが,本質問の回答欄に記述があり,その内容が機器の利用を推察させた回答者1人の回答(「人から機器をもらった」)も加え,合計90人分の回答を有効回答とする。このうち,全盲者は46人,ロービジョン者は44人である。複数の理由を挙げた回答者もいた。同種の理由を同じカテゴリーとしてまとめて回答を整理した。更に,各カテゴリー内の回答数を全盲者とロービジョン者の回答に分けた(図3-2-2)。 全盲者とロービジョン者で共通して多く寄せられた理由は,様々な機能やアプリが使えて便利というものであった(両群とも18人)。全盲者が具体的に挙げた機能/アプリはLINE (4人),画像・色認識(3人),紙幣の認識(3人),ラジオ(2人),電子書籍(2人)である。ロービジョン者が挙げたのは,外出先での情報収集(5人),地図(3人),スケジュール管理(2人)である。同じ「便利」という言葉で表現されていても,役立つ機能が両群で異なっていることが分かる。 時代の流れに乗るためという理由も両群ともに多かった(ぞれぞれ10人と6人)。ただし,全盲者の回答には「これからはタッチパネル操作を避ける事はできないと思う」や「携帯には未来がないと感じたから」など,消極的な理由が見られたのに対して,ロービジョン者の回答には「時代に取り残されるのではなく積極的に電子機器を活用したい」という前向きな理由が見られた。 スマートフォン/タブレットに興味があったという理由も両群から多く寄せられたが,全盲者の方がロービジョン者より回答者数が多かった(ぞれぞれ17人と8人)。両群において共通する理由は,新しい機器に興味があるという意見であった。これとともに,全盲者の間では,「全盲者でどこまでジェスチャー操作ができるかの確認」や「機能の確認をするため」など,機器の利用可能性に興味が注がれていた。 図3-2-2 スマートフォンまたはタブレットを使い始めた理由 全盲 n=46 ロービジョン n=44 様々な機能やアプリが使えて便利 全盲18人(39.1%) ロービジョン18人(40.9%) 興味があった 全盲17人(37.0%) ロービジョン8人(18.2%) 読み上げ機能がある 全盲11人(23.9%) ロービジョン2人(4.5%) 時代の流れに乗るため 全盲10人(21.7%) ロービジョン6人(13.6%) 画面の見やすさ・視覚補助機能 全盲0人 ロービジョン11人(25.0%) 買い替え時だった 全盲5人(10.9%) ロービジョン3人(6.8%) 使えることが分かった 全盲3人(6.5%) ロービジョン2人(4.5%) 機器を貰った 全盲2人(4.3%) ロービジョン3人(6.8%) 体験会に参加して 全盲4人(8.7%) ロービジョン0人 ガラケーの新機種への不満 全盲3人(6.5%) ロービジョン0人   テザリング可能 全盲3人(6.5%) ロービジョン0人  点字ディスプレイ接続可能 全盲2人(4.3%) ロービジョン0人 周囲の薦め 全盲0人 ロービジョン2人(4.5%) 全盲者とロービジョン者の間で回答者数が顕著に異なる理由もあった。全盲者から多く挙げられたものの,わずかなロービジョン者からしか挙げられなかった理由は,読み上げ機能であった(11人と2人)。全盲者特有として点字ディスプレイに接続できることが2人から理由として挙げられた。そのうちの1人で盲ろうと推察される人からは「点字ディスプレイと接続して利用できるため,視覚と聴覚の両方が不自由でもそれなりに操作可能だから」という理由が挙げられた。全盲者4人は,体験会に参加して機器を使えることが分かったので利用を決めた。このことから,全盲者にとっては機器の利用可能性そのものに不安があり,その不安を払拭する体験会が重要であることが分かる。 逆にロービジョン者から多く挙げられ(11人),全盲者から全く挙げられなかった理由は,画面の見やすさ・視覚補助機能であった。特にタブレットは拡大読書器の役割を果たすものとして期待されていた。 3. スマートフォンまたはタブレットを使わない理由 スマートフォンまたはタブレットをどちらも使っていない回答者にその理由を自由記述形式で回答してもらった。直前の質問においてスマートフォンとタブレットのいずれも使っていないと答えた人207人のうち158人から具体的な回答を得た。スマートフォンを使っていない理由を挙げたタブレット利用者1人の回答も加え,合計159人の回答を有効回答とする。このうち,全盲者は112人,ロービジョン者は47人である。複数の理由を挙げた回答者もいた。同種の理由を同じカテゴリーとしてまとめて回答を整理した。更に,各カテゴリー内の回答数を全盲者とロービジョン者の回答に分けた(図3-2-3)。 全盲者とロービジョン者で共通して数多く寄せられた理由は,現用の機器で十分というものであった(ぞれぞれ35人と25人)。「現在は携帯電話とパソコンで間に合っている」という回答がこの理由を代表している。この理由を挙げた人数が各群の全回答者に占める割合を比べると31.3%対53.2%となり,ロービジョン者の方が現在の機器で事足りている人の割合が高かった。 全盲者からは,操作が難しく,利用できないのではという不安が数多く挙げられた(38人,33.9%)。その具体的な内容は,タッチスクリーン操作が難しい(36人,32.1%),音声機能への不安・不満(19人,17.0%),文字入力等が不便(難しい,時間がかかる)(8人,7.1%)というものであった。スクリーンが平面で「どこをタッチすればいいのか分からず,全盲のわたしには使えないと思う」という回答がタッチスクリーン操作への不安を物語っている。これらの不安のほとんどは,タッチスクリーン操作を経験したことがない人から寄せられた。試用・学習の機会がない(11人,9.8%),学習時間がない/面倒(6人)なため,タッチスクリーンへの不安が払拭されない。 ロービジョン者においても,操作が難しい,特にタッチスクリーン操作が難しいとする人数は多いが(それぞれ11人と8人),その割合は全盲者よりも低い(それぞれ23.4%と17.0%)。 両群で共通して価格・通信料金が高いという回答が多かった(それぞれ18人と8人)。 図3-2-3 スマートフォンまたはタブレットを使わない理由 全盲 n=112 ロービジョン n=47 現用の機器で十分 全盲35人(31.3%) ロービジョン25人(53.2%) 操作が難しい/難しそう 全盲38人(33.9%) ロービジョン11人(23.4%) タッチスクリーン操作が難しい 全盲36人(32.1%) ロービジョン8人(17.0%) 音声機能への不安・不満 全盲19人(17.0%) ロービジョン3人(6.4%) 文字入力等が不便 全盲8人(7.1%) ロービジョン2人(4.3%) 画面が見づらい 全盲0人 ロービジョン2人(4.3%) 試用・学習の機会がない 全盲11人(9.8%) ロービジョン2人(4.3%) 学習時間がない/面倒 全盲6人(12.8%) ロービジョン3人(6.4%) 価格・通信料金が高い 全盲18人(16.1%) ロービジョン8人(17.0%) 充電の不安 全盲2人(4.3%) ロービジョン1人(2.1%) 折り畳めない 全盲2人(4.3%) ロービジョン0人 4. 新機種のほとんどがスマートフォンである状況について 携帯電話の新機種のほとんどがスマートフォンである状況について望ましいと思うかどうかの意見を,「望ましい」から「望ましくない」までの五つの選択肢から選び,その理由がある場合は自由に記述してもらった。この質問への有効回答者数は289人であった。このうち「望ましくない」と「どちらかというと望ましくない」が178人(61.6%)で6割を占めた。他方で「望ましい」と「どちらかというと望ましい」とする意見は24人(8.3%)と1割にも満たない。「どちらとも言えない」は87人(30.1%)であった。 意見の分かれ具合を全盲/ロービジョンの別で見たのが図3-2-4である。全盲者の方がロービジョン者より,「望ましくない」と「どちらかというと望ましくない」という回答の割合が高い。これは,全盲者の間でタッチスクリーン操作への不安が多いことと合致している。 現在のスマートフォンの所有状況と意見とを照らし合わせてみてみたところ,所有している人の方が所有していない人より「望ましい」と「どちらかというと望ましい」とする意見の割合は高かった(図3-2-5)。 図3-2-4 携帯電話の新機種のほとんどがスマートフォンである状況についての意見 (全盲/ロービジョンの別) 全盲 n=180 ロービジョン n=109 全盲 望ましい3人 どちらかというと望ましい10人 どちらとも言えない50人(27.8%) どちらかというと望ましくない50人(27.8%) 望ましくない67人(37.2%) ロービジョン 望ましい4人 どちらかというと望ましい7人 どちらとも言えない37人(33.9%) どちらかというと望ましくない29人(26.6%) 望ましくない32人(29.4%)  図3-2-5 携帯電話の新機種のほとんどがスマートフォンである状況についての意見 (スマートフォンの所有状況別) 所有している n=79 所有していない n=210 所有している 望ましい7人(8.9%) どちらかというと望ましい7人(8.9%) どちらとも言えない27人(34.2%) どちらかというと望ましくない15人(19.0%) 望ましくない23人(29.1%) 所有していない 望ましい0人 どちらかというと望ましい10人 どちらとも言えない60人(28.6%) どちらかというと望ましくない64人(30.5%) 望ましくない76人(36.2%) 第3節 携帯電話の利用状況 この節では「携帯電話の利用状況について」の質問に対する回答者247人の回答を紹介する 。247人のうち全盲者は163人,ロービジョン者は84人であった。 1. 携帯電話の機種 利用している携帯電話の機種について242人(全盲160人,ロービジョン82人)から有効な回答を得た。そのうち234人はスマートフォンを1台のみ使用していたが,8人は2台,残る1人は3台を所有していたので,合計252台の機種が挙げられた。機種ごとの利用者数を図3-3-1に示す。 最も多く挙げられた機種は「らくらくホン 」シリーズである。利用人数は189人(全盲者とロービジョン者の合算。以下同じ),同シリーズを複数台利用している人がいるため,台数は192台となった。その中で型番ごとの内訳を多い順から並べると,らくらくホン7を88人,らくらくホン プレミアムを20人,らくらくホン6を17人,らくらくホン ベーシック(1から3を合算)を14人,らくらくホンWを11人が利用していた。 らくらくホンの次に利用者が多かったのは「簡単ケータイ 」で,16人が利用していた。同様なコンセプトの「かんたん携帯 」の利用者は2人に留まった。「拡大もじ」機能のあるP706ie を1人が利用していた。これら以外に3人が「音声対応au」などの表現をしていた。図3-3-1では,これらをまとめて「配慮携帯」と表現し,らくらくホンと配慮携帯以外の機種を一般機種としてまとめた。 図3-3-1 携帯電話の機種ごとの利用者数 全盲 n=160 ロービジョン n=82 らくらくホン 全盲147人(91.9%) ロービジョン42人(51.2%) 配慮携帯 全盲12人(7.5%) ロービジョン10人(12.2%) 一般機種 全盲5人(3.1%) ロービジョン32人(39.0%) 全盲者とロービジョン者の間で利用機種の割合を比べると,全盲者では,らくらくホンをほとんどの人が利用し,その利用率が91.9%となり,一般機種の利用率がわずか3.1%であるのに対して,ロービジョン者では,らくらくホンの利用率は50%強に留まり,その分,一般機種の利用率が39.0%と高い。この状況は,全盲者では携帯電話の操作に音声出力が不可欠であるのに対し,ロービジョン者の中には必ずしも音声出力を必要とせず,一般の機器を使うことができる人がいるということを表している。 2. 補助機能 携帯電話の利用を補助する機能の利用率は,全盲者とロービジョン者の間で大きな違いが見られた(図3-3-2)。全盲者の場合,163人のうち159人(97.5%)とほぼ全員が音声読み上げを利用している一方で,視覚的な補助機能については文字サイズの拡大が17人(10.4%),色設定の変更/反転表示が20人(12.3%)と利用率は低かった。これに対してロービジョン者の場合,利用率が最も高かったのは色設定の変更/反転表示で58人(69.0%)に上った。利用率が次に高かったのは音声読み上げで50人(59.5%),3番目は文字サイズの拡大で25人(29.8%)であった。 音声読み上げ機能を利用している209人(全盲159人,ロービジョン50人)のうち,音声読み上げのみを利用している人は149人(全盲133人,ロービジョン16人)であった。視覚的な補助機能(色設定の変更/反転表示と文字サイズの拡大のいずれか,あるいは両方)を利用している人85人(全盲26人,ロービジョン59人)のうち,視覚的な補助機能のみを利用している人は25人(全盲0人,ロービジョン25人)であった。そして,音声読み上げと視覚的な補助機能を重複して利用している人は60人(全盲26人,ロービジョン34人)であった。このように,視覚的な補助機能を利用している人の中でも音声読み上げ機能の利用率が70.6%と高いことがわかった。なお,この計数において「その他」の回答者は除いた。 その他の補助機能を利用しているとして具体的な回答を書いた人は少なく10人であった。その内容は,音声の速度・声質・音量の調整,グループごとの着信音の変化,イヤホンやノイズキャンセラーの利用など,音声を聞き取りやすくする工夫が多かった。ほかに,よく使う機能をオリジナルメニューに登録するといった工夫と,ルーペの使用が挙げられた。 図3-3-2 携帯電話で利用している補助機能 全盲 n=163 ロービジョン n=84 音声読み上げ 全盲159人(97.5%) ロービジョン50人(59.5%) 色設定の変更/反転表示 全盲17人(10.4%) ロービジョン58人(69.0%) 文字サイズの拡大 全盲20人(12.3%) ロービジョン25人(29.8%) その他 全盲7人(4.3%) ロービジョン7人(8.3%) 3. 利用している機能・用途 携帯電話の用途を提示し,利用している機能にチェックをしてもらった。利用者が多い順に10種類を挙げる(上位5位までは数値も示す):通話(全盲:157人,携帯電話について回答した全盲者163人の96.3%,ロービジョン:73人,携帯電話について回答したロービジョン者84人の86.9%),メール(全盲:135人,82.8%,ロービジョン:71人,84.5%),時計(全盲:137人,84.0%,ロービジョン:64人,76.2%),アドレス帳(全盲:105人,64.4%,ロービジョン:55人,65.5%),ブラウザ(全盲:84人,51.5%,ロービジョン:36人,42.9%),歩数計(全盲:86人,52.8%,ロービジョン:34人,40.5%),電卓,スケジュール,写真撮影・閲覧,路線/乗り換え(図3-3-3)。 図3-3-3 携帯電話の用途 全盲 n=163 ロービジョン n=84 通話 全盲157人(96.3%) ロービジョン73人(86.9%) メール 全盲135人(82.8%) ロービジョン71人(84.5%) 時計 全盲137人(84.0%) ロービジョン64人(76.2%) アドレス帳 全盲105人(64.4%) ロービジョン55人(65.5%) ブラウザ 全盲84人(51.5%) ロービジョン36人(42.9%) 歩数計 全盲86人(52.8%) ロービジョン34人(40.5%) 電卓 全盲80人(49.1%) ロービジョン35人(41.7%) スケジュール 全盲70人(42.9%) ロービジョン35人(41.7%) 写真撮影・閲覧 全盲58人(35.6%) ロービジョン43人(51.2%) 路線/乗り換え 全盲63人(38.7%) ロービジョン27人(32.1%) 赤外線通信 全盲55人(33.7%) ロービジョン29人(34.5%) メモ 全盲41人(25.2%) ロービジョン23人(27.4%) ワンセグ 全盲38人(23.3%) ロービジョン19人(22.6%) 天気 全盲38人(23.3%) ロービジョン18人(21.4%) SNS 全盲39人(23.9%) ロービジョン13人(15.5%) QRコードの読み取り 全盲21人(12.9%) ロービジョン24人(28.6%) 動画撮影・視聴 全盲25人(15.3%) ロービジョン14人(16.7%) GPS/地図 全盲21人(12.9%) ロービジョン12人(14.3%) 銀行/証券 全盲14人(8.6%) ロービジョン10人(11.9%) 音楽を聴く 全盲8人(4.9%) ロービジョン6人(7.1%) おサイフケータイ 全盲8人(4.9%) ロービジョン5人(6.0%) 電子書籍 全盲4人(2.5%) ロービジョン4人(4.8%) ゲーム 全盲4人(2.5%) ロービジョン3人(3.6%) ラジオを聴く 全盲3人(1.8%) ロービジョン1人(1.2%) Bluetooth 全盲0人 ロービジョン3人(3.6%) その他 全盲9人(5.5%) ロービジョン5人(6.0%) 全盲者とロービジョン者の間で利用率に大きな差がある用途もあった。利用率が上位の用途の中では,通話,ブラウザ,歩数計については全盲者の方がロービジョン者より10%ほど高い。逆に,写真撮影・閲覧はロービジョン者の方が利用率が15.6%高い。 全盲者9人,ロービジョン者5人がその他の用途16件を具体的に挙げた:辞書(3人),iC通信(2人),電子コンパス,カラーアテンダント(2人),モバイルサピエ,ボイスレコーダー,漢字の検索,ショートメッセージ,タイマー,生協のショッピングのアプリ(声ログ),ジョイサウンドリモコン。 4. 閲覧しているWebサイト 携帯電話から閲覧しているWebサイトとして,全盲者64人,ロービジョン者22人から具体的な回答を得た。回答されたサイトをWebで調べ,同じカテゴリーと思われた回答をまとめ,全盲者とロービジョン者各群で計数し,グラフに表したのが図3-3-4である。同じ人が同種の複数のサイトを挙げた場合は重複して計数した。 図3-3-4 携帯電話から閲覧しているWebサイト 全盲 n=163 ロービジョン n=84 買い物 全盲50人(30.7%) ロービジョン13人(15.5%) 旅行・交通 全盲41人(25.2%) ロービジョン10人(11.9%) 検索 全盲13人(8.0%) ロービジョン5人(6.0%) 銀行・証券 全盲15人(9.2%) ロービジョン2人(2.4%) 音楽関連 全盲11人(6.7%) ロービジョン4人(4.8%) 携帯電話会社 全盲14人(8.6%) ロービジョン1人(1.2%) ブログ・SNS・個人 全盲8人(4.9%) ロービジョン6人(7.1%) ニュース・新聞 全盲5人(3.1%) ロービジョン4人(4.8%) スポーツ 全盲6人(3.7%) ロービジョン2人(2.4%) 天気 全盲6人(3.7%) ロービジョン1人(1.2%) Webサービス 全盲1人(0.6%) ロービジョン4人(4.8%) 動画 全盲4人(2.5%) ロービジョン1人(1.2%) テレビ番組 全盲4人(2.5%) ロービジョン0人 掲示板 全盲1人(0.6%) ロービジョン3人(3.6%) 情報 全盲4人(2.5%) ロービジョン0人 視覚障害者向け 全盲2人(1.2%) ロービジョン2人(2.4%) 料理 全盲3人(1.8%) ロービジョン0人 メールサービス 全盲3人(1.8%) ロービジョン0人 Wiki 全盲2人(1.2%) ロービジョン1人(1.2%) 閲覧者が顕著に多かったのは,買い物(通販・クーポン等)(全盲:50人,ロービジョン:13人)と旅行・交通(全盲:41人,ロービジョン:10人)であった。買い物サイトの中で閲覧者が多かったサイトは楽天(全盲:11人,ロービジョン:2人)とAmazon(全盲:5人,ロービジョン:2人)で,このほかは通販やファーストフード等の各サイトがそれぞれ1人〜2人から挙げられた。交通・宿泊の中で多かったサイトは乗換案内(全盲者9人,ロービジョン:4人),JR各社の予約・運行情報(全盲:6人)で,このほかは鉄道,バス,航空の予約や時刻表,宿泊予約などの各サイトがそれぞれ1〜3人ずつから挙げられた。視覚障害者に特有なサイトとして,ことばの道案内を2人が閲覧していた。 総閲覧者数が10人から20人のWebサイトは,検索サイト(18人),銀行・証券(17人),携帯会社サイト,音楽関連(15人),ブログ・SNS・個人のサイト(14人)であった。検索サイトとして閲覧者数が多かったのはYahoo!(全盲:6人,ロービジョン:4人),Google(全盲:4人,ロービジョン:1人)であった。携帯電話会社サイト閲覧者15人のうち14人がNTTドコモが提供するサイト(ドコモプレミアクラブ,iモードを含む)を閲覧していた。音楽関連サイト閲覧者のうち4人は着メロをダウンロードするサイトであった。銀行・証券の内容は皆ばらばらであった。 これ以降は,ニュース・新聞(9人),スポーツ(8人),天気(7人),Webサービス,動画サイト(5人),テレビ番組,掲示板サイト,情報サイト,視覚障害者向けサイト(4人),料理サイト,メールサービス,Wiki(3人)となった。視覚障害者向けサイトは,日本点字図書館携帯サイト(サピエモバイルを含む)であった。 5. 視覚障害が理由で使いづらい点 視覚障害が理由で携帯電話を使いづらいことについて尋ねたところ,全盲者86人とロービジョン者48人が具体的な回答を記述した。類似した問題を全盲者とロービジョン者各群で計数し,5人以上から回答のあった問題点をグラフに表したのが図3-3-5である。全盲者はロービジョン者より多くの問題点を指摘した(全盲:123件(携帯利用者1人当たりの件数0.76件),ロービジョン:54件(同0.64件))。 両群の間で使いにくいと感じる点に違いがあることがグラフの形の違いから分かる。全盲者が使いにくいとした点を指摘者が多い順に見ると,操作できない(24人,全盲の携帯電話利用者の14.7%),Web・画像を読めない(16人,9.8%),メール・Webの1行読み/1文字読み/詳細読み(14人,8.6%),読み上げ方の問題(11人,6.7%),操作しづらい(10人,6.1%)となった。これに対してロービジョン者では,最も多くの人が使いづらいとした点は,画面・文字の見づらさであった(24人,ロービジョンの携帯電話利用者の28.6%)。2番目に多かった意見は,文字入力の問題(9人,10.7%)であった。これ以外は,読み上げ方の問題,検索・閲覧しづらいなどの問題を4人以下が指摘した。 図3-3-5 視覚障害が理由で携帯電話を使いづらい点 全盲 n=163 ロービジョン n=84 画面・文字が見づらい 全盲3人(1.8%) ロービジョン24人(28.6%) 操作できない 全盲24人(14.7%) ロービジョン1人(1.2%) Web・画像を読めない 全盲16人(9.8%) ロービジョン1人(1.2%) メール・Webの一行読み/一文字読み/詳細読み 全盲14人(8.6%) ロービジョン1人(1.2%) 文字入力の問題 全盲7人(4.3%) ロービジョン9人(10.7%) 読み上げ方の問題 全盲11人(6.7%) ロービジョン4人(4.8%) Webを検索・閲覧しづらい 全盲8人(4.9%) ロービジョン4人(4.8%) 操作しづらい 全盲10人(6.1%) ロービジョン2人(2.4%) アプリ等を読まない 全盲8人(4.9%) ロービジョン3人(3.6%) 公共の場での読み上げ 全盲7人(4.3%) ロービジョン2人(2.4%) 学習に関する問題 全盲8人(4.9%) ロービジョン1人(1.2%) 携帯電話の使いづらい点を具体的に述べた回答者の言葉を問題別に紹介する。 ・画面・文字が見づらい ロービジョン者からは,画面・文字の見づらさについての意見が最も多かった。 「文字が必要な大きさまで拡大できない」(2級,ロービジョン) 「らくらくホンは使いやすいと思いますが,らくらくホン7では画面の白黒反転ができないので見づらい」(3級,ロービジョン) 「昼盲のため,屋外では画面が光って文字が読めない」(2級,ロービジョン) ・操作できない このカテゴリーの意見は次のように分類できる:地図・GPSが使えない(7人),写真撮影できない(7人),メール内のURLにアクセスできない(5人),画像認証を使えない(2人),個々の機能が使えない(4人,ダウンロード,QRコード,スケジューラなど)。 「ナビゲーションシステムにおける誘導歩行の際,誤差が大きい」(1級,全盲) 「携帯のナビでどちらの方向に歩き始めればよいか方角が分からない」(1級,全盲)」 「写真撮影やQRコードの読取りなど,確実にポイントを合わせるのが難しい」(1級,全盲) 「撮影した写真がなんだか分からない。(その場で1枚1枚タイトルを入力するのが大変)」(1級,全盲) 「添付ファイルの利用ができない。メール内のURLにアクセスできない」(1級,全盲) 「携帯電話に限らないことかもしれませんが,画像認証があると困ります」(1級,全盲) ・Web・画像を読めない Webページ・画像を読み上げない問題のほとんどは全盲者から寄せられた。 「アクセスしても全く音声の出ないサイトがあること」(1級,全盲) 「そのページにアクセスしても「画像,画像」としか読まないページがあるので困る」(1級,全盲) 「フラッシュで閲覧するものは読み上げてもらえない」(1級,全盲) ・メール・Webの1行読み/1文字読み/詳細読みがない メール・Webの1行読み/1文字読み/詳細読みがないため,閲覧の効率が悪い,文字を確認できないという問題が生じている。 「メール閲覧モードで1行ずつ聞けない」(2級,全盲) 「受信メールの1文字読みができない」(1級,全盲) 「文字変換時の詳細(読み)はわかるが,決定してからの確認のときは詳細(読み)がわからない」(1級,全盲) 「らくらくホンでは,iモード閲覧時に漢字の詳細読みができない」(1級,全盲) ・文字入力の問題 文字入力の問題としては,変換精度が低く選択に時間がかかる問題と,漢字の詳細読みが使いにくい問題が多かった。音声入力への要望も1人からあった。 「文字変換時の詳細読みが不十分」(1級,全盲) 「かな漢変換能力が低いと手間がかかる」(1級,ロービジョン) ・読み上げ方の問題 読み上げ方については,パソコン用スクリーンリーダと同等な読み上げ方を実現してほしいという意見と,音声合成に対する改善要望があった。 「「ハンカク」を読み上げると聞き取りにくいので読み上げてほしくない」(1級,全盲) 「範囲選択でカーソルを動かすと今選択されている全てを読んでしまう。パソコンのように範囲選択の途中でも今カーソルがある文字だけを読むようにしてほしい」(1級,全盲) 「「削除」と言わない」(1級,全盲) 「音声で文字を正しく読んでくれない」(1級,全盲) 「英語の単語検索で,発音がわからないので理解しにくい」(2級,全盲) ・Webを検索・閲覧しづらい コンテンツやリンクが多いWebを音声で理解するのに時間がかかる問題が挙げられている。 「見出しジャンプやリンクジャンプができないため,情報を得るのに時間がかかってしまう」(1級,全盲) 「メールやネットを操作する際,不要な情報の飛ばし読み,斜め読みができず効率が悪い」(1級,全盲) ・操作しづらい 操作しづらさの問題の半分は,ハードウェアに関するものであった。そのほかは,メニューの階層が深く使いづらい,メールを探すのが大変,などの問題であった。 「ボタンの配置が左利きには使いにくい」(1級,全盲) 「決定キーに印があると,十字キーが使いやすい」(1級,全盲) 「現在市販されている携帯電話の倍近くのサイズのものであればいいな。例えばポケット型プレクストークのようなサイズ」(1級,ロービジョン) ・アプリ等を読めない 読み上げない各種アプリや設定の問題が挙げられている。 「ゲームアプリなど音声ではしゃべらないもの」(2級,全盲) 「iチャネルのテロップを聞いてもう少し詳しく知りたいなぁと思っても,音声が出てくれないので聞けない」(1級,全盲) 「音声では電子マネーを携帯に入れることはできない」(1級,全盲) 「機能設定のなかで,音声読み上げがない場合があり,拡大読書器を使用しなければいけないことがあります」(2級,ロービジョン) ・公共の場での読み上げ 公共の場における音声操作は,音声が聞き取りにくい問題と,逆に外に聞こえてしまう問題がある。 「たくさんの人が集まる場所や繁華街では音が聞き取りにくい。たとえ,イヤホーンでボリユームをあげてもかなり聞きづらい。」(1級,全盲) 「イヤフォーンをしないままだと電車,バスなどでは通話しているように誤解される」(2級,全盲) 「電話がかかって来た時の着信名読み上げが周囲の人に聞かれてしまう」(2級,全盲) ・学習に関する問題 学習に関する問題は,指導者が近くにいないこと,点字マニュアルの記載不足,またはマニュアルを読めないという内容であった。 「田舎のため指導者がおらず,機能を使いこなしていない」(2級,全盲) 「ケータイ電話の説明書を読むことができい」(1級,全盲) 「必要とする機能が点字版のマニュアルに記載されていなくて苦労した経験がある」(1級,全盲) このほかに価格・費用が高いという問題が3人から,音声読み上げの標準装備を求める声が2人から(「音声読み上げできるケータイの機種が限られていて選べない」(1級,全盲))挙げられた。その他の問題として,2011年3月11日に「災害伝言板171は,混雑,3日かけられなかった」,電波の受信状況の悪さ,本体の電池の消耗の速さ,ボタン式の「らくらくホン8」への希望などが挙げられた。 6. 望まれる機能 視覚障害を補償するために携帯電話に望まれる機能として,122人(全盲:81人,ロービジョン:41人)から具体的な回答を得た。類似した要望を全盲者とロービジョン者各群で計数し,グラフに表したのが図3-3-6である。全盲者はロービジョン者より多くの要望を挙げた(全盲:144件(携帯利用者1人当たりの件数0.88件),ロービジョン:57件(同0.68件))。 読み上げ機能の向上は両群から最も多くの要望が挙げられているが(全盲:46人,ロービジョン:20人),回答者に対する割合で見ると,全盲者の方が要望率が高かった(全盲:28.2%,ロービジョン:23.8%)。全盲者とロービジョン者の間で要望数が大きく異なるのは,外出時の支援(全盲:27人,ロービジョン:3人),画面拡大・白黒反転(全盲:1人,ロービジョン:13人),物体認識・OCR(全盲:13人,ロービジョン:1人)であった。このように,全盲者とロービジョン者の間で携帯電話への要望が質的に異なることが分かった。 図3-3-6 携帯電話に望まれる機能 全盲 n=163 ロービジョン n=84 読み上げ機能の向上 全盲46人(28.2%) ロービジョン20人(23.8%) 外出時の支援 全盲27人(16.6%) ロービジョン3人(3.6%) 画面拡大・反転表示 全盲1人(0.6%) ロービジョン13人(15.5%) 物体認識・OCR 全盲13人(8.0%) ロービジョン1人(1.2%) 操作性の改善 全盲8人(4.9%) ロービジョン2人(2.4%) ラジオ・テレビ 全盲4人(2.5%) ロービジョン4人(4.8%) コード認識・無線チップ対応 全盲5人(3.1%) ロービジョン0人 メモ・コピー機能 全盲4人(2.5%) ロービジョン1人(1.2%) 読み上げ機能の向上に対する要望は数が多く,更に具体的な要望へと分類することができた。その分類結果を示したのが図3-3-7である。最も多い要望は,すべてのアプリ・Web画面・画像を読み上げてほしいというものであり,全盲者14人とロービジョン者4人が要望した。 図3-3-7 携帯電話に望まれる読み上げ機能の詳細 全盲 n=46 ロービジョン n=20 Web・画像・アプリの読み上げ 全盲14人(30.4%) ロービジョン4人(20.0%) 音声入力 全盲7人(15.2%) ロービジョン2人(10.0%) 音声読み上げの標準装備 全盲6人(13.0%) ロービジョン3人(15.0%) メール・Webの一行/1文字/詳細読み 全盲5人(10.9%) ロービジョン3人(15.0%) 音声ガイド 全盲6人(13.0%) ロービジョン2人(10.0%) 文字入力時の漢字の読み上げ 全盲4人(8.7%) ロービジョン3人(15.0%) 全般的な読み上げ機能の充実 全盲2人(4.3%) ロービジョン2人(10.0%) 読み上げの音声 全盲2人(4.3%) ロービジョン1人(5.0%) 読み上げ機能の向上に関する具体的な回答者の記述を紹介する。 ・Web画面・画像・アプリの読み上げ 使いづらい点に対応した要望である。スマートフォン,タブレット,パソコンの各節でも挙げられた普遍的な要望であり,それだけ問題が根深く,広いことを示している。 「音声読み上げに対応したアプリの充実」(1級,全盲) 「全部のブラウザを音声読み上げにする機能」(2級,全盲) 「画像をテキストに変換することができればよいと思う」(1級,全盲) ・音声入力 スマートフォン・タブレットでは音声入力が標準で搭載されており,携帯電話にもその搭載が要望されるようになった。 「音声入力メールを無料で使えるようにしてほしい」(1級,全盲) 「スケジュールを声認識で管理」(2級,ロービジョン) 「各種設定がすべて音声でできるとうれしい」(1級,全盲) ・音声読み上げの標準装備 「音声読み上げ機能は必須です」(1級,全盲) 「音声読み上げ機能が標準装備されていると,携帯電話を選ぶ幅が広がります」(2級,ロービジョン) ・メール・Webの1行読み/1文字読み/詳細読み これも使いづらい点に対応した要望である。 「上記問題点である「1行読み・1文字読み」ができるように改善してほしい」(4級,全盲) ・音声ガイド 「トラブルやエラーが発生した場合,そのメッセージや対処方法を音声で読み上げてほしい」(1級,全盲) 「詳細設定の音声ガイドを充実してほしい」(2級,ロービジョン) ・文字入力時の漢字の読み上げ 「文字入力の時の変換候補の読み上げが不十分です」(1級,全盲) 「漢字の読みもパソコンのように「辞書登録」できれば助かります」(2級,ロービジョン) 「文字を確定したあと,確認するときに詳細読みをしてほしい」(1級,全盲) ・全般的な読み上げ機能の充実 スクリーンリーダと同程度の機能が求められた。 ・読み上げの音声 「読み上げ速度をもっと速く」(1級,全盲),「正確」に(2級,ロービジョン),そして「読み上げ音声に種類」があってほしい(1級,全盲)という要望があった。 外出時の支援に関する要望は,GPS・経路・周囲案内,信号の読み上げ,交通機関・建物内の案内,歩行の支援に分類された。 ・GPS・経路・周囲案内 興味ある地点(店舗等),現在地,経路,地図に関する情報が15人から求められた。これらの情報の多くはスマートフォンで提供されるようになっており,このため要望が顕在化したと考えられる。 「お店の位置情報や場所の情報などが分かるといいと思います」(1級,全盲) 「音声による詳細な道案内が欲しいです」(1級,全盲) 「地図を音声でも読む機能が欲しいです」(1級,全盲) ・交通機関・建物内の案内 駅構内では電光掲示板情報の通知,電車内では行き先・次の駅の通知,車内では空席の検知,エレベータ内では通過階の通知とエレベータの操作,これらができる機能への要望があった(のべ6人)。 ・信号の読み上げ・制御 信号の色の通知,音響信号のボタン操作を携帯電話から行いたいという要望があった(のべ5人)。 ・障害物検出・通知 障害物の検出と通知,電気自動車や自転車の接近の通知を要望する意見があった(のべ4人)。 ・画面拡大・反転表示 画面拡大については,より大きく,鮮明に,拡大率を自由に変更可能という意見と(10人)反転表示への予防が(4人)いずれもロービジョン者から寄せられた。 「拡大がもっと鮮明で,大きくできる機能」(5級,ロービジョン) 「もっと自由に文字サイズが選べると便利です」(2級,ロービジョン) 「拡大読書器的機能。いちいち撮影しないでただ拡大と白黒反転したい」(2級,ロービジョン) ・物体認識・OCR 物体認識(4人)や色の認識(3人),文字認識(3人),紙幣の認識(4人)の要望が全盲者を中心に寄せられた。この機能もスマートフォンで実用化されたため,携帯電話に対しても要望が顕在化したと考えられる。 「カメラ機能などを使って目の代わりをしてくれるものがあるとうれしいです」(1級,全盲) 「商品名や消費期限を教えてくれる機能など」(1級,全盲) 「物の色について,鮮明に答えてほしい」(1級,全盲) 「撮影した対象物の文字検出・読み上げ機能」(1級,全盲) 「スキャナーでなぞった文字や絵などを読んでくれる機能があるといいな」(1級,全盲) 「紙幣の読み取りが簡単にできるように」(1級,全盲) ・操作を簡単にしてほしい 機能が多い,手順が複雑などの理由で操作方法が分からないので簡単にしてほしいという意見と(6人),インターネットとメールが使いにくいという意見(4人)が寄せられた。 「使用方法に関する説明ボタンがあるといい」(1級,全盲) 「赤外線の使い方がよくわからないので,わかりやすくしてほしい」(3級,ロービジョン) 「確実に操作が機器側に受け止められたかどうかの反応が欲しい」(1級,ロービジョン) 「携帯読み上げ取扱い説明書,使い方講座,等が欲しい」(2級,全盲) 「機能を沢山できる研究よりも,簡単に使える工夫を望みます」(2級,全盲) ・ラジオ・テレビ ラジオの聴取・予約・録音への要望が7人からと多い。ほかにワンセグへの要望もあった。 「ラジオが聴けるとうれしい。録音ができるとよい」(1級,全盲) 「ラジオ,ラジオ予約機能」(2級,ロービジョン) ・コード認識・無線チップ対応 視覚障害を保障するため「QRコードのピンとが合ったときに音が出る」機能のほか,タッチメモやものしりトークは「ハードではなくソフトとして販売すべき」といった要望が延べ6人から寄せられた。 ・メモ・コピー機能 「Webサイト閲覧中でもテキストのコピーができるように改善してほしい」(1級,全盲) 「お知らせ・買いたい物リスト・メモをさっと携帯に保存できるようなショートカット機能」(2級,ロービジョン) 図3-3-6に挙がっていない5人未満からの要望を紹介する。 通話・ネット接続料金の低廉化や「通話後の通話料金が確認できる機能」への要望が寄せられた(4人)。 全面的なタッチ操作への移行への危惧からハードウェアキーボード存続への要望,既存のハードボタンの使いやすさの向上が望まれた(3人)。 屋外で使用する「イヤホンを巻き取り式にしてほしい」などの意見が寄せられた(3人)。 第4節 スマートフォンの利用状況 この節では「スマートフォンの利用状況について」の質問に対する回答者81人の回答を紹介する 。81人のうち全盲者は43人,ロービジョン者は38人であった。 1. スマートフォンの機種 回答者81人全員が,利用しているスマートフォンの機種を答えた。回答者81人のうち77人はスマートフォンを1台のみ使用していたが,4人は複数台を使用していた。この4人のうち3人は2台,他の1人は6台を所有していたので,合計89台の機種が挙げられた。同じカテゴリーの機種を複数台所有している人は1人として数えた。機種ごとの利用者数を図3-4-1に示す。 利用者が最も多かった機種はiPhoneで,59人(スマートフォンについての回答者81人の72.8%)が利用していた。iPhoneの中ではiPhone 5の利用者数が最も多く39人(5sも合算),次いでiPhone 4が13人であった(4sも合算)。 iPhoneの次に利用者数が多かった機種はらくらくスマートフォンだが,その人数は利用者数7人(8.6%)であり,iPhoneに比べると格段に少ない。らくらくスマートフォン8台の中では,プレミアムが6台を占めた。らくらくスマートフォンプレミアムが発売されたのは本調査開始直後であり,その利用者数は調査後も増えているものと見込まれる。 Android OSを搭載したスマートフォン(らくらくスマートフォンを除く)を18人が利用していた(22.2%)。利用されている機種の内訳は,Xperiaが6台,AQUOS PHONEとGalaxyがいずれも4台,そのほかの機種が各1台ずつ8台挙げられた。 全盲者とロービジョン者の間で利用機種の割合を比べると,iPhoneについては全盲者のほうが利用率が高く(全盲:81.4%。ロービジョン:63.2%),逆にAndroid端末についてはロービジョン者の方が利用率が高かった(全盲:16.3%。ロービジョン:28.9%)。その理由として,ロービジョン者の中には,音声出力機能がなくてもタッチインタフェースを使える人がいるためということが考えられる。 図3-4-1 スマートフォンの機種ごとの利用者数 全盲 n=43 ロービジョン n=38 iPhone 全盲35人(81.4%) ロービジョン24人(63.2%) らくらくスマートフォン 全盲4人(9.3%) ロービジョン3人(7.9%) Android端末 全盲7人(16.3%) ロービジョン11人(28.9%) 2. 補助機能 スマートフォンの利用を補助する機能の利用率は,全盲者とロービジョン者の間で大きな違いが見られた(図3-4-2)。全盲者では43人中41人(95.3%)とほとんどの人が音声読み上げを利用し,これ以外の補助機能の利用者数は2〜3人と少なかった(その他を除く)。これに対してロービジョン者では,画面拡大,文字サイズの拡大,色設定の変更/反転表示の利用率が高く(39.5〜65.8%),これらに比べると音声読み上げの利用率39.5%は高くはない。 音声読み上げ機能を利用している56人(全盲:41人,ロービジョン:15人)のうち,音声読み上げのみを利用している人は38人(全盲:37人,ロービジョン:1人)であった。視覚的な補助機能(画面拡大,文字サイズの拡大,色設定の変更/反転表示のいずれか,あるいは2種類以上)を利用している人38人(全盲:4人,ロービジョン:34人)のうち,視覚的な補助機能のみを利用している人は20人(全盲:0人,ロービジョン:20人)であった。そして,音声読み上げと視覚的な補助機能を重複して利用している人は18人(全盲:4人,ロービジョン:14人)であった。このように,視覚的な補助機能を利用している38人の中でも音声読み上げ機能の利用率が47.4%と高いことがわかった。なお,この計数において「その他」の回答者は除いた。 図3-4-2 スマートフォンで利用している補助機能 全盲 n=43 ロービジョン n=38 音声読み上げ 全盲41人(95.3%) ロービジョン15人(39.5%) 画面拡大 全盲2人(4.7%) ロービジョン24人(63.2%) 文字サイズの拡大 全盲3人(7.0%) ロービジョン25人(65.8%) 色設定の変更/反転表示 全盲3人(7.0%) ロービジョン15人(39.5%) その他 全盲5人(11.6%) ロービジョン3人(7.9%) 3. 文字入力 スマートフォンにおける文字入力方法の利用率も,全盲者とロービジョン者の間で違いが見られた(図3-4-3)。 図3-4-3 スマートフォンにおける文字入力方法 全盲 n=43 ロービジョン n=38 音声入力 全盲27人(62.8%) ロービジョン11人(28.9%) ローマ字漢字入力 全盲20人(46.5%) ロービジョン11人(28.9%) フリック入力 全盲11人(25.6%) ロービジョン20人(52.6%) テンキー方式 全盲18人(41.9%) ロービジョン12人(31.6%) 外付けキーボード 全盲16人(37.2%) ロービジョン3人(7.9%) 50音表 全盲8人(18.6%) ロービジョン8人(21.1%) 手書き入力 全盲0人 ロービジョン4人(10.5%) 全盲者43人の中では,音声入力の利用率が最も高く27人(62.8%),その次にローマ字漢字入力が20人(46.5%),3番目がテンキー方式で18人(41.9%),4番目が外付けキーボードで16人(52.6%)であった。フリック入力と50音表方式の利用者はそれぞれ11人(25.6%),8人(18.6%)と比較的少なかった。 他方で,ロービジョン者で最も利用率が高かったのはフリック入力で20人(52.6 %)だった。その次には,テンキー入力が12人(31.6%),3番目には音声入力とローマ字漢字入力がいずれも11人(28.9%)で並んだ。 音声入力を選択した回答者が他の入力方法を併用しているかどうかを調べたところ,全盲の音声入力利用者27人のうち3人が音声入力のみを答えていたが,それ以外の24人は他の入力方法も利用していた。ここから,例えば検索のように短い語句を入力する場合は音声で行い,他方でメールのように長く,また他人に聞かれたくない文章の入力にはソフトウェアあるいはハードウェアのキーボードを使うという利用場面ごとの使い分けを行っていることが推察される。 4. 利用している機能・用途・アプリ スマートフォンの用途を提示し,利用している機能にチェックをしてもらった。利用者が多い順に10種類を挙げる(上位5位までは数値も示す):ブラウザ(全盲:40人,スマートフォンについて回答した全盲者43人の93.0%,ロービジョン:30人,スマートフォンについて回答したロービジョン者38人の78.9%),通話(全盲:37人,86.0%,ロービジョン:32人,84.2%),メール(全盲:37人,86.0,ロービジョン:32人,84.2%),時計(全盲:32人,74.4%,ロービジョン:29人,76.3%),天気(全盲:32人,74.4%,ロービジョン:29人,76.3%),音楽を聞く,アドレス帳,写真撮影・閲覧,路線/乗り換え,ラジオを聞く(図3-4-4)。 全盲者とロービジョン者の間で利用率に差がある用途もあった。利用率が上位の用途の中では,アドレス帳,写真撮影・閲覧,路線/乗り換えについてはロービジョン者の方が全盲者よりいずれも10%以上利用率が高い。逆に,ブラウザ,ラジオを聞くにおいては全盲者の方が10%以上利用率が高かった。 Bluetooth通信は,ロービジョン者より全盲者の中に利用者が多い。Bluetooth通信24人のうち12人が文字入力に関する質問において外付けキーボードを回答していることから,キーボード接続にBluetooth通信を使っていると考えられる。 携帯電話の用途と比べると,利用率上位10種類については半分以上が共通していた。スマートフォンの上位10種類の中で携帯電話と一致しないのは天気,音楽を聴く,ラジオを聞く,の3種類であった。 図3-4-4 スマートフォンの用途 全盲 n=43 ロービジョン n=38 ブラウザ 全盲40人(93.0%) ロービジョン30人(78.9%) 電話 全盲37人(86.0%) ロービジョン32人(84.2%) メール 全盲37人(86.0%) ロービジョン32人(84.2%) 時計 全盲32人(74.4%) ロービジョン29人(76.3%) 天気 全盲32人(74.4%) ロービジョン29人(76.3%) 音楽を聴く 全盲30人(69.8%) ロービジョン25人(65.8%) アドレス帳 全盲24人(55.8%) ロービジョン30人(78.9%) 写真撮影・閲覧 全盲21人(48.8%) ロービジョン31人(81.6%) 路線/乗り換え 全盲19人(44.2%) ロービジョン29人(76.3%) ラジオを聴く 全盲27人(62.8%) ロービジョン18人(47.4%) SNS 全盲22人(51.2%) ロービジョン22人(57.9%) メモ 全盲19人(44.2%) ロービジョン22人(57.9%) GPS/地図 全盲20人(46.5%) ロービジョン20人(52.6%) 動画撮影・視聴 全盲16人(37.2%) ロービジョン19人(50.0%) スケジュール 全盲14人(32.6%) ロービジョン21人(55.3%) 電卓 全盲8人(18.6%) ロービジョン21人(55.3%) QRコードの読み取り 全盲5人(11.6%) ロービジョン19人(50.0%) Bluetooth通信 全盲20人(46.5%) ロービジョン4人(10.5%) 電子書籍 全盲12人(27.9%) ロービジョン7人(18.4%) ワンセグ 全盲8人(18.6%) ロービジョン5人(13.2%) ゲーム 全盲4人(9.3%) ロービジョン9人(23.7%) 歩数計 全盲4人(9.3%) ロービジョン5人(13.2%) 赤外線通信 全盲2人(4.7%) ロービジョン6人(15.8%) おサイフケータイ 全盲4人(9.3%) ロービジョン3人(7.9%) 銀行/証券 全盲3人(7.0%) ロービジョン3人(7.9%) その他 全盲8人(18.6%) ロービジョン5人(13.2%) 図3-4-5 スマートフォンから閲覧しているWebサイト 全盲 n=43 ロービジョン n=38 検索 全盲7人(16.3%) ロービジョン9人(23.7%) 乗り換え・地図 全盲8人(18.6%) ロービジョン5人(13.2%) 買い物 全盲4人(9.3%) ロービジョン7人(18.4%) ニュース・新聞 全盲3人(7.0%) ロービジョン7人(18.4%) 携帯電話会社 全盲6人(14.0%) ロービジョン2人(5.3%) 動画 全盲2人(4.7%) ロービジョン4人(10.5%) 音楽 全盲0人 ロービジョン5人(13.2%) 5. 閲覧しているWebサイト スマートフォンから閲覧しているWebサイトを答えてもらった。回答者数は,全盲者13人,ロービジョン者17人であった。回答されたサイトをWebで調べ,同じカテゴリーと思われた回答をまとめ,全盲者とロービジョン者各群で計数し,グラフに表したのが図3-4-5である。全般として,ロービジョン者の方が閲覧サイトへの回答が多かった(全盲:30件,ロービジョン:39件)。 最も回答が多かったのは検索で,全盲者7人,ロービジョン者9人が閲覧していた。2番目は乗り換え・地図で,全盲者8人,ロービジョン者5人,3番目は買い物で,全盲者4人,ロービジョン者7人であった。以下は,ニュース(全盲:3人,ロービジョン:7人),携帯電話会社(全盲:6人,ロービジョン:2人),動画(全盲:2人,ロービジョン:4人),音楽(全盲:0人,ロービジョン5人)であった。 6. 従来の携帯電話と比べたスマートフォンの利便性 スマートフォンの利便性について従来の携帯電話と比較して答えてもらった(図3-4-6)。全盲者では,従来の携帯電話よりも便利な点があると答えた人が37人(スマートフォンについて回答した全盲者43人の86.0%)と高い割合であったが,そのうち29人(67.4%)は,便利な点もあるが,従来の携帯電話より使いにくい点もあると答えた。使いにくいとだけ回答した人は4人(9.3%),使い勝手は従来の携帯電話と変わらないと答えた人が2人(4.7%)だった。 ロービジョン者でも,従来の携帯電話よりも便利な点があると答えた人が31人(スマートフォンについて回答したロービジョン者38人の81.6%)と高い割合を占めた。そのうち,便利な点があるが,従来の携帯電話より使いにくい点もあると答えた人は14人(36.8%)であり,従来より便利とだけ答えた人は17人(41.9%)であった。使いにくいとだけ回答した人は6人(15.8%),使い勝手は従来の携帯電話と変わらないと答えた人が3人(2.6%)だった。 以上をまとめると,全盲者もロービジョン者も,スマートフォン利用者は従来の携帯電話より便利だと感じている人が大部分(86.0%と81.6%)であった。しかし,スマートフォンを使いにくいと感じている人はロービジョン者で約半分なのに対して,全盲者では4分の3となり,全盲者にとってスマートフォンの使い勝手には課題が大きいことが分かる。 図3-4-6 従来の携帯電話と比べたスマートフォンの利便性 全盲 n=43 ロービジョン n=38 全盲 従来より便利8人(18.6%) 従来より便利・使いにくい29人(67.4%) 使いにくい4人 変わらない2人 ロービジョン 従来より便利17人(44.7%) 従来より便利・使いにくい14人(36.8%) 使いにくい6人 変わらない1人 6.1. 従来の携帯電話より便利な点 スマートフォンには従来の携帯電話よりも便利な点があると回答した人に,便利な点を具体的に記述してもらった。回答者数は,全盲者24人,ロービジョン者26人であった。同種の便利な点を全盲者とロービジョン者各群で計数し,総計5人以上の回答をグラフに表したのが図3-4-7である。 全盲者では,Web閲覧が容易(12人),物体・画像・光・色の認識(10人),空間地理情報(9人),音声入力(8人),アプリによる拡張性(7人)の順に回答が多かった。 一方,ロービジョン者では,空間地理情報(10人),画面の見やすさ(9人),Web閲覧が容易(7人),音楽・ラジオ(5人),音声入力(4人)の順に回答が多かった。 従来の携帯電話にない機能(物体認識)や性能(大きな画面による見やすさの改善),従来の携帯電話より高精度になった機能(音声入力)が回答に挙がっている。 図3-4-7 スマートフォンが従来の携帯電話より便利な点 全盲 n=43 ロービジョン n=38 空間地理情報 全盲9人(20.9%) ロービジョン10人(26.3%) Web閲覧が容易 全盲12人(27.9%) ロービジョン7人(18.4%)  物体・光・色認識 全盲10人(23.3%) ロービジョン2人(5.3%) 音声入力 全盲8人(18.6%) ロービジョン4人(10.5%) アプリによる拡張性 全盲7人(16.3%) ロービジョン3人(7.9%) 画面の見やすさ 全盲1人(2.3%) ロービジョン9人(23.7%) 音楽・ラジオ 全盲4人(9.3%) ロービジョン5人(13.2%) 無料通話アプリ 全盲6人(14.0%) ロービジョン2人(5.3%) 動画再生 全盲5人(11.6%) ロービジョン2人(5.3%) メール 全盲6人(14.0%) ロービジョン1人(2.6%) データ交換 全盲3人(7.0%) ロービジョン2人(5.3%) スマートフォンの便利な点を具体的に述べた回答者の言葉を機能別に紹介する。 ・空間地理情報 GPSとコンパスの精度が上がり,空間地理情報を大きな画面の地図に表せるようになった。視覚障害者の大きな不便の一つである単独移動を支援する機能が実用的になった。 「地図が直感的に自由に動かせるので見やすく,コンパス機能と併用すると初めて行った場所でも目的地を見つけやすい」(2級,ロービジョン) 「迷子になった時,電子コンパスの精度が高いので助かる」(1級,全盲) 「GPSアプリを使うことで普段通る道にどんな店があるかや,道路の名前が分かった」(1級,全盲) 「地図アプリなどを利用すると,旅行先などで現在の場所や周囲のお店などを調べることができる」(1級,全盲) ・Web閲覧が容易 「PCをわざわざ立ち上げずともインターネットにすぐに繋がる」(2級,ロービジョン) 「携帯電話では見ることができなかったページに,場所にとらわれずにアクセスすることができる」(1級,全盲) 「Webのレイアウトが理解できるようになった」(1級,全盲) 「Web閲覧時,見出し・フォーム,リンクのジャンプができる。Web閲覧時,文字読み,段落読みができる」(1級,全盲) 「タッチやフリックを組み合わせることで素早く閲覧することができる」(1級,全盲) ・物体・光・色の認識 「TapTapSeeを使って物体がなんであるかと色を認識」(1級,全盲) 「紙幣がいくらであるかVOICEEYEを使って認識させる」(1級,全盲) 「LightDetectorをインストールし, 職場でも自宅でも明るさの判断に使っています。パソコンがフリーズしてシャットダウンが正常にできていないときに,画面にカメラを向けますと, 光を拾って音で教えてくれますのでとても便利です」(2級,ロービジョン) 「TapTapSeeは,服の色などもある程度教えてくれるので重宝している」(1級,全盲) ・音声入力 「知りたいことがある場合に,Siriによる音声コマンドが便利」(1級,全盲) 「Siriを104の電話案内代わりに使えた」(1級,全盲) 「音声入力が無料でできる(ドコモらくらくホンでは有料)」(1級,全盲) ・アプリによる拡張性 「アプリケーションをインストールするだけで自分がほしい機能を増やすことができる」(1級,全盲) 「アプリが豊富でここに書ききれないほどのアプリを使用する」(1級,全盲) ・画面の見やすさ 「画面が大きい」(5級,ロービジョン) 「自分の見やすい大きさに,文字や画像を調節できる」(2級,ロービジョン) 「電子書籍を自由に拡大して読める」(2級,ロービジョン) 「撮影した画面で文字がかなり大きく見えるので活用している」(5級,ロービジョン) 「以前使用していた携帯電話に比べ,白黒反転できる範囲が広い」(2級,ロービジョン) 「カーソルの位置を把握するのが容易」(1級,全盲) ・音楽・ラジオ 「通勤時にインターネットラジオを聴くことができる」(2級,ロービジョン) 「MP3プレーヤーをもつ必要がなくなったこと,ラジオをきけることなども魅力のひとつだと思います」(2級,ロービジョン) ・無料通話アプリ 「LINEで無料通話ができる」(1級,全盲) 「海外との無料通話」(2級,ロービジョン) ・動画再生 「動画の再生が早く,音質もきれい」(1級,全盲) 「ビデオを再生できるので,外出時に視聴できる」(1級,全盲) ・メール 「Gmailの新着をチェックできる」(1級,全盲) 「メール,受信メール本文の文字読み,段落読みができること」(1級,全盲) 「PCを起動しなくても,手軽にPCのメールを確認できる」(1級,全盲) ・データ交換 「音楽をPCと同期できる」(1級,全盲) 「バックアップがとれる」(5級,ロービジョン) ・その他 天気:天気を手軽に調べられる,降雨を知らせるアプリ(3人)。 テザリング:テザリングにより「点字PDAやパソコンをWi-Fi経由でネット接続できる」(3人)。 無料のアプリ:「便利な無料アプリが豊富にある」(2級,全盲)(2人)。 SNS:SNSが使いやすい(2人)。 折り畳み式でない:「二つ折りじゃなくなったので便利」(2人)。 正眼者と同じ機器:正眼者と同じ機器なので,サポートを受けやすい,情報を共有できる(2人)。 補助機器との接続:iPhoneは点字ディスプレイと接続できる(1人)。 ほかに,音質の良さ,拡大画面の画質の良さ,通信速度の速さ,赤外線通信,操作が簡単,など。 6.2. 従来の携帯電話より使いにくい点 従来の携帯電話よりスマートフォンが使いにくいと感じる点について,全盲者19人とロービジョン者17人から回答を得た。全盲者とロービジョン者の両方から文字入力(全盲:17人,ロービジョン:10人)と操作のしづらさ(全盲:13人,ロービジョン:8人)が挙げられた(図3-4-8)。全盲者9人からは,読み上げ機能の問題も挙げられた。 図3-4-8 スマートフォンが従来の携帯電話より使いにくい点 全盲 n=43 ロービジョン n=38 文字入力がしづらい 全盲17人(39.5%) ロービジョン10人(26.3%) 操作できない・しづらい 全盲13人(30.2%) ロービジョン8人(21.1%) 読み上げの不具合 全盲9人(20.9%) ロービジョン2人(5.3%) 通話しづらい 全盲3人(7.0%) ロービジョン2人(5.3%) スマートフォンの使いにくい点を具体的に述べた回答者の言葉を問題別に紹介する。 ・文字入力がしづらい ハードウェアキーボードであれば触覚で精確にキーを選択できたが,ソフトウェアキーボードの場合,触れているキーや入力した文字を画面や音声で確認しなければならず,精確さと入力速度が低下していることが利用者の不満となっている。 「ソフトウェアキーボードでの入力では誤入力が多く,打ち込み速度も遅くなる」(1級,全盲) 「文字入力がハードウェアキーのほうがはるかに快適にできる」(2級,全盲) 「カーソルの位置がわかりにくいので,長文を打つのが難しい」(1級,全盲) 「画面入力をいちいち目で確認しなければならない。従来なら手の感覚でキーボード入力ができた」(1級,ロービジョン) 「文字入力時,音声を聞かないと正しく文字が入力できたか分からない(ボタン式の携帯電話の時は音声を聞かずに素早く入力することができた)」(1級,全盲) ・操作ができない・しづらい 文字入力時と同様に,物理的なキーがないことの不便さが挙げられている。意図せずして画面に触れてしまい,誤操作につながるというタッチインタフェース独特の問題は,画面が見えづらい視覚にとってはより深刻である。 「(物理的な)キーがないため一つ一つの操作に集中しなければならない」(1級,全盲) 「どんなアプリについても,タッチUIでは高速・確実な操作ができない」(1級,全盲) 「画面操作中に予定外の場所をタップしてしまい,どこに飛んだか分からなくなってしまう」(4級,ロービジョン) 「誤操作がかなり多くなった。買い物や,その他重要な内容を扱う操作はできないと思う」(1級,ロービジョン) 「ズームが機能しないアプリがたくさんある」(2級,ロービジョン) 「転送や,連絡先の引用が面倒」(1級,全盲) ・読み上げの不具合 「日本語版VoiceOverの音声が非常に聞き取りづらかったり,正しく読み上げを行わないことがある」(1級,全盲) 「音声読み上げ全般について,パソコンのスクリーンリーダよりもはるかに読み上げ精度や使い勝手が低いことをストレスに感じる」(1級,全盲) 「音声とテンキー入力を混合させて入力したり,長文を入力したり,受信した長文を読み上げさせると,ところどころ読み上げない箇所が出てきて確認できず困る」(1級,全盲) 「母音と子音が前後で混ざったような状況に陥り,何を言っているのか分からないところがところどころあります」(1級,全盲) ・通話しづらい スマートフォンの主たる用途である通話においても,ソフトウェアキーボードの使い勝手の悪さが指摘されている。 「電話番号を押して通話するときハードウェアキーの方が快適だった」(2級,全盲) 「携帯電話より電話を掛けたり着信を取ったりするのが難しい」(2級,全盲) 「電話でメーカーなどにかけた際に,「次に1#や2#を押して下さい」というアナウンスに対応できない」(1級,全盲) ・その他 反転表示をすると写真まで反転されてしまう,赤外線通信ができない,BlindSquare(周囲情報提供アプリ)の精度が低い,パスワードの入力が面倒,本体が重い,持ちにくい,電池が長持ちしない,という意見が1人ずつから挙げられた。 7. 学習方法 スマートフォンの学習方法を選択肢で尋ねたところ,全盲者とロービジョン者の両方において,友人・知人,インターネットから教わったとする回答が多く,全盲者では55.8%〜58.1%,ロービジョン者では34.2%〜39.5%の回答率となった(図3-4-9)。全盲者ではメーリングリスト(21人,48.8%),家族に教わった(11人,25.6%),障害者支援団体が主催する講習会(9人,20.9%)という回答が多かったが,ロービジョン者ではこれらへの回答は少なかった(1〜7人,2.6%〜18.4%)。 図3-4-9 スマートフォンの学習方法 全盲 n=43 ロービジョン n=38 友人・知人 全盲24人(55.8%) ロービジョン15人(39.5%) インターネット 全盲25人(58.1%) ロービジョン13人(34.2%) メーリングリスト 全盲21人(48.8%) ロービジョン1人(2.6%) 家族 全盲11人(25.6%) ロービジョン7人(18.4%) 講習会(支援団体主催) 全盲9人(20.9%) ロービジョン2人(5.3%) ボランティア 全盲3人(7.0%) ロービジョン2人(5.3%) 職場の同僚 全盲4人(9.3%) ロービジョン1人(2.6%) 講習会(販売店等主催) 全盲1人(2.3%) ロービジョン3人(7.9%) その他 全盲6人(14.0%) ロービジョン11人(28.9%) 各選択肢に対して具体的に回答された学習方法を紹介する。回答者数を示していないものは1人からの回答である。 インターネットの利用:2ch,キャリアのホームページ。 メーリングリスト:Androidメーリングリスト,Apple Accessibilityメーリングリスト。 販売店等主催の講習会:ドコモショップ。 視覚障害者支援団体等主催の講習会:「全盲者向けiPhone講座」(NPO法人視覚障害者パソコンアシストネットワーク)(3人),「視覚障害者のためのiPhone講座」(NPO法人ネットワークアシストたかおか),「iPhone 5体験会」(千葉県視覚障害者福祉協会)。 その他:国立障害者リハビリテーションセンターの自立訓練(2人),アプリ「iPhoneの使い方」,ドコモサービスセンターに電話で質問。これ以外のほとんどの回答は「独学」であった。 8. 視覚障害が理由で使いづらい点 視覚障害のためにスマートフォンを使いづらい点について,全盲者18人とロービジョン者24人から回答を得た。類似した問題を全盲者とロービジョン者各群で計数し,グラフに表したのが図3-4-10である。 文字入力のしづらさ(全盲:14人,ロービジョン:5人),画面の見づらさ(全盲:3人,ロービジョン:13人),タッチ操作のしづらさ(全盲:9人,ロービジョン:6人),読み上げの不具合(全盲:9人,ロービジョン:6人),操作できない項目(全盲:6人,ロービジョン:0人)が挙げられた(図3-4-10)。これらは,従来の携帯電話と比較して使いにくいとされた内容と同じであった(図3-4-8)。全盲者では文字入力のしづらさが,ロービジョン者では画面の見づらさが最も多く,いずれも3割強の回答者から寄せられた。 図3-4-10 視覚障害が理由でスマートフォンを使いづらい点 全盲 n=43 ロービジョン n=38 文字入力がしづらい 全盲14人(32.6%) ロービジョン5人(13.2%) 画面・文字が見づらい 全盲3人(7.0%) ロービジョン13人(34.2%) タッチ操作がしづらい 全盲9人(20.9%) ロービジョン6人(15.8%) 読み上げの不具合 全盲9人(20.9%) ロービジョン6人(15.8%) 操作できない 全盲8人(18.6%) ロービジョン0人 スマートフォンの使いづらい点を具体的に述べた回答者の言葉を問題別に紹介する。 ・文字入力がしづらい 「メールなどの文字入力のときに,ちょっと触れただけでカーソルが動いてしまい,自分が望む場所に,きちんと入力できていないことがあります。また,文章の途中の修正も,1文字ずつの確認が難しくて,まだできません」(1級,全盲) 「ほんの少しの手元の狂いで誤った文字が入力されてしまうことがあり,長文を打つためにはやはり外付けのキーボードを入手する必要があると思います」(1級,全盲) 「文字入力の際,指の感覚が活かせない」(1級,全盲) ・画面が見づらい 「画面の文字等,全てが拡大できない」(4級,ロービジョン) 「白黒反転させる機能がないものが多い」(5級,ロービジョン) 「光の加減で画面が見づらい」(2級,ロービジョン) ・タッチ操作がしづらい 「必ず音声を聞き取らないと操作ができないこと(ボタン式の場合,定型的な操作であれば音声を聞かずにボタンで確実に操作できた)」(1級,全盲) 「ホームボタンだけでなく,あと二つ三つ分かりやすいキーがあると便利だと思います」(2級,ロービジョン) 「操作中に急に画面が変わって何が起こったのか分からないことがある」(4級,ロービジョン) ・読み上げの不具合 「読み上げに対応していないアプリがある」(1級,ロービジョン) 「パソコンのスクリーンリーダよりもはるかに読み上げ精度や使い勝手が低い」(1級,全盲) 「漢字の読み方がメーカーによって違うことが多い」(2級,ロービジョン) 「VoiceOverを立ち上げると動きが悪くなる」(1級,全盲) ・操作できない 「Androidにおいて初期設定が自力でできない」(1級,全盲) 「パスワードの入力が難しい(大文字と小文字の英数字が混在しているので入力が難しい)」(2級,全盲) 9. 望まれる機能 視覚障害を補償するためにスマートフォンに望まれる機能について,全盲者16人とロービジョン者18人から回答を得た。類似した要望を全盲者とロービジョン者各群ごとに計数し,グラフに表したのが図3-4-11である。 全盲者からは,歩行支援アプリ(10人),各種読み上げ機能(9人),操作性の改善(8人)の希望が比較的多く寄せられた。 ロービジョン者からは,視覚補助機能(10人),読み上げ機能の向上(8人),歩行支援アプリ(4人)が挙げられた。 図3-4-11 スマートフォンに望まれる機能 全盲 n=43 ロービジョン n=38 歩行支援アプリ 全盲10人(23.3%) ロービジョン4人(10.5%) 読み上げ機能の向上 全盲5人(11.6%) ロービジョン8人(22.6%) 視覚補助機能の向上 全盲2人(4.7%) ロービジョン10人(26.3%) 各種読み上げ機能 全盲9人(20.9%) ロービジョン0人 操作性の改善 全盲8人(18.6%) ロービジョン0人 文字入力方法の改善 全盲3人(7.0%) ロービジョン1人(2.6%) サピエとの連携 全盲1人(2.3%) ロービジョン1人(2.6%) スマートフォンに望まれる機能を具体的に述べた回答者の言葉を機能別に紹介する。 ・視覚補助機能の向上 「どのアプリ,サイトなどを開いても拡大できる機能が欲しい」(2級,ロービジョン) 「完全な白黒ハイコントラスト画面」(1級,全盲) 「3本指で画面を叩いて,瞬時に拡大する機能」(2級,ロービジョン) 「ページを任意の単位でブロック分割・拡大表示できるアプリ」(2級,ロービジョン) ・読み上げ機能の向上 「画面操作項目を全て音声で読み上げてほしい」(1級,全盲) 「VoiceOverの日本語読み上げの品質,とりわけ音声が崩れる問題は可及的速やかになんとかしてください」「マナーモードでも外部スピーカーから音声を出力して操作しなくてはならないというのは困る」(1級,全盲) 「アクセシビリティ機能の併用,オンオフが,どんな状態でも確認でき,音声や画像でフィードバックがあること」(1級,全盲) 「「改行」の読みをしてもらいたい。句読点を打たないと文字を続けて読んでしまって聞きにくいと友人に言われる」(2級,ロービジョン) ・歩行支援アプリ 「視覚障害者が単独で,初めての場所でも安全に移動ができるぐらい精度の高い周囲の情報提供とナビゲーション」(1級,全盲) 「音響信号機がない交差点,歩車分離式の音声ガイドなしの信号の色をその場でリアルタイムで手元の携帯電話が電波を受信するなどをして音声で教えてくれたら,周囲の方への騒音の問題も解決できますし,視覚障害者にとっても本当に助かると思います」(1級,全盲) 歩行支援アプリへの期待は,携帯電話に望まれる機能と同じであった。 ・各種読み上げ機能 「回転ずしや金融機関などのタッチ画面に繋げ,スマフォの画面で他のタッチ画面の操作ができるといい」(1級,全盲) 「食品などの賞味期限や,原材料,使い方などを読み上げてくれるアプリがあると助かる。体温計,体重計,血圧計などの目盛を読み上げてくれるアプリがあるといい。カラオケなどで歌詞を読み上げてくれるアプリがあるといい」(1級,全盲) 「理科の実験で使う感光器のようなアプリ」(1級,全盲) 「補助器具を使用せずに利用できるOCRアプリ」(1級,全盲) ・操作性の改善 「「キャンセル」「戻る」「進む」などのボタンの配置を機能別に統一して欲しい」(1級,全盲) 「キーを「押す」感覚や,キーを「触った」感覚を疑似的に感じられるような,誤入力の少ないソフトウェアキーボード」(1級,全盲) 「簡単に装着できるキーボードがほしい。スライド式のものがあってもいいと思う」(1級,全盲) 「従来の携帯電話と同様の物理テンキーをスマホ本体に搭載してもらいたい」(1級,全盲) ・文字入力方法の改善 「外付けのキーボードが必要ないぐらいに正しい入力が手軽にできるシステム」(1級,全盲) 「声で文字入力する機能がもっと速く動くと助かる」(5級,ロービジョン) ・サピエとの連携 「サピエと連携した点字やDAISYの検索や再生アプリ」(1級,全盲) 第5節 タブレットの利用状況 この節では「タブレットの利用状況について」の質問に対する回答者43人の回答を紹介する 。43人のうち全盲者は17人,ロービジョン者は26人であった。 1. タブレットの機種 回答者43人全員が,利用しているタブレットの機種を答えた。43人のうち39人はタブレットを1台のみ使用していたが,2人が2台,2人が3台を使用していたので,合計49台の機種が挙げられた。機種ごとの利用者数を図3-5-1に示す。 最も多く挙げられた機種はアップル社の製品であった。iPadを全盲者10人(タブレットについて回答した全盲者17人の58.8%),ロービジョン者13人(タブレットについて回答したロービジョン者26人の50.0%),iPad miniを全盲者2人(11.8%),ロービジョン者5人(19.2%),iPodを全盲者3人(17.6%),ロービジョン者4人(15.4%)が利用していた。 Android OSを搭載したタブレットを全盲者4人(23.5%),ロービジョン者6人(23.1%)が利用していた。ロービジョン者の1人はAndroid端末を2台利用していた。計10台のAndroid端末はすべて機種が異なっていた。それらを列挙する:Amazon Kindle Paperwhite,Asus MeMo Pad HD 7,Asus Eee Pad TF201,Asus Nexus 7, iriver ITQ701 WOW,Lenovo IdeaPad Tablet A1,NEC MEDIAS TAB N-06D,SAMSUNG GALAXY Tab 7.7 Plus SC-01E,SAMSUNG Nexus 10,SAMSUNG SMT-i9100,SONY製のタブレット(機種は不明)。 全盲者とロービジョン者の間で利用機種の割合に大きな違いは見られなかった。 図3-5-1 タブレットの機種ごとの利用者数 全盲 n=17 ロービジョン n=26 iPad 全盲10人(58.8%) ロービジョン13人(50.0%) iPad mini 全盲2人(11.8%) ロービジョン5人(19.2%) iPod 全盲3人(17.6%) ロービジョン4人(15.4%) Android 全盲4人(23.5%) ロービジョン6人(23.1%) 2. 補助機能 タブレットの利用を補助する機能の利用率は,全盲者とロービジョン者の間で大きな違いが見られた(図3-5-2)。全盲者では,17人全員が音声読み上げを利用し,これ以外の補助機能の利用者数は2〜3人と少なかった。これに対してロービジョン者では,画面拡大と文字サイズの拡大の利用率が高く(それぞれ19人,73.1%,15人,57.7%),音声読み上げの利用率は相対的に低くなった(10人,38.5%)。 音声読み上げ機能を利用している27人(全盲:17人,ロービジョン:10人)のうち,音声読み上げのみを利用している人は15人(全盲:13人,ロービジョン:2人)であった。視覚的な補助機能(画面拡大,文字サイズの拡大,色設定の変更/反転表示のいずれか,あるいは2種類以上)を利用している人25人(全盲:4人,ロービジョン:21人)のうち,視覚的な補助機能のみを利用している人は13人(全盲:0人,ロービジョン:13人)であった。そして,音声読み上げと視覚的な補助機能を重複して利用している人は12人(全盲:4人,ロービジョン:8人)であった。このように,視覚的な補助機能を利用している25人の中でも音声読み上げ機能の利用率が48.0%と高いことが分かった。なお,この計数において「その他」の回答者は除いた。 全盲者,ロービジョン者ごとのタブレットにおける補助機能の利用状況は,スマートフォンにおける補助機能の利用状況(図3-4-2)と酷似した。 図3-5-2 タブレットで利用している補助機能 全盲 n=17 ロービジョン n=26 音声読み上げ 全盲17人(100%) ロービジョン10人(38.5%) 画面拡大 全盲1人(5.9%) ロービジョン15人(57.7%) 文字サイズの拡大 全盲2人(11.8%) ロービジョン19人(73.1%) 色設定の変更/反転表示 全盲3人(17.6%) ロービジョン8人(30.8%) その他 全盲2人(11.8%) ロービジョン1人(3.8%) 3. 文字入力 タブレットにおける文字の入力方法を尋ねたところ,全盲者とロービジョン者の両方において,ローマ字漢字入力の利用率が最も高かった(全盲:13人,76.5%,ロービジョン:17人,65.4%,図3-5-3)。しかし,これ以外の入力方法の利用状況については両群の間で違いが見られた。 全盲者で利用率が2番目に高かったのは外付けキーボードで8人(47.1 %),以下,50音表(6人(35.3 %)),音声入力とフリック入力(5人,29.4%),テンキー方式(4人,23.5%)が続いた。 ロービジョン者では,利用率が2番目に高かったのは音声入力,外付けキーボード,50音表の3種類で8人(30.8%),以下,フリック入力5人(19.2%),テンキー方式(4人(15.4 %))が続いた。タブレットで手書き入力を利用している人はいなかった。 図3-5-3 タブレットにおける文字入力方法 全盲 n=17 ロービジョン n=26 音声入力 全盲5人(29.4%) ロービジョン8人(30.8%) ローマ字漢字入力 全盲13人(79.5%) ロービジョン17人(65.4%) フリック入力 全盲5人(29.4%) ロービジョン5人(19.2%) テンキー方式 全盲4人(23.5%) ロービジョン4人(15.4%) 外付けキーボード 全盲8人(47.1%) ロービジョン8人(30.8%) 50音表 全盲6人(35.3%) ロービジョン8人(30.8%) スマートフォンの利用においては,全盲者では音声入力が,ロービジョン者ではフリック入力が最も利用率が高かったが(図3-4-3),タブレットではこれらの利用率は低い数値となり,代わりにローマ字漢字入力の利用率が最も高くなった。その理由は,タブレットのタッチ画面はスマートフォンよりも広く,ソフトキーボードのキーも大きいため,実用的な正確さでキーを押下できるためと考えられる。 図3-5-4 タブレットの用途 全盲 n=17 ロービジョン n=26 ブラウザ 全盲16人(94.1%) ロービジョン21人(80.8%) メール 全盲8人(47.1%) ロービジョン17人(65.4%) 写真撮影・閲覧 全盲7人(41.2%) ロービジョン17人(65.4%) 音楽を聴く 全盲12人(70.6%) ロービジョン11人(42.3%) 天気 全盲10人(58.8%) ロービジョン13人(50.0%) 動画撮影・視聴 全盲10人(58.8%) ロービジョン12人(46.2%) ラジオを聴く 全盲10人(58.8%) ロービジョン11人(42.3%) 電子書籍 全盲9人(52.9%) ロービジョン10人(38.5%) GPS/地図 全盲5人(29.4%) ロービジョン14人(53.8%) 時計 全盲9人(52.9%) ロービジョン9人(19.2%) 路線/乗り換え 全盲5人(29.4%) ロービジョン12人(46.2%) SNS 全盲10人(58.8%) ロービジョン7人(26.9%) スケジュール 全盲4人(23.5%) ロービジョン13人(50.0%) アドレス帳 全盲5人(29.4%) ロービジョン9人(19.2%) メモ 全盲3人(17.6%) ロービジョン11人(42.3%) Bluetooth通信 全盲8人(47.1%) ロービジョン5人(19.2%) 通話 全盲4人(23.5%) ロービジョン5人(19.2%) 電卓 全盲0人 ロービジョン8人(30.8%) ゲーム 全盲1人(5.9%) ロービジョン5人(19.2%) 銀行/証券 全盲0人 ロービジョン2人(7.7%) QRコードの読み取り 全盲0人 ロービジョン2人(7.7%) ワンセグ 全盲1人(5.9%) ロービジョン0人 赤外線通信 全盲1人(5.9%) ロービジョン0人 歩数計 全盲0人 ロービジョン0人 おサイフケータイ 全盲0人 ロービジョン0人 その他 全盲5人(29.4%) ロービジョン4人(15.4%) 4. 利用している機能・用途・アプリ タブレットの用途を選択式で選んでもらった。利用者が多い順に10種類を挙げる(上位5位までは数値も示す):ブラウザ(全盲:16人,タブレットについて回答した全盲者17人の94.1%,ロービジョン:21人,タブレットについて回答したロービジョン者26人の80.8%),メール(全盲:8人,47.1%,ロービジョン:17人,65.4%),写真撮影・閲覧(全盲:7人,41.2%,ロービジョン:17人,65.4%),音楽を聴く(全盲:12人,70.6%,ロービジョン:11人,42.3%),天気(全盲:10人,58.8%,ロービジョン:13人,50.0%),動画撮影・視聴,ラジオを聴く,電子書籍,GPS/地図,時計(図3-5-4)。 全盲者とロービジョン者の間で利用率に差がある用途が多かった。利用率が上位の用途の中では,ブラウザ,音楽を聴く,動画撮影・視聴,ラジオを聴く,電子書籍,時計については全盲者の方がロービジョン者よりいずれも10%以上利用率が高い。一方,メール,写真撮影・閲覧,GPS/地図はロービジョン者の方が10%以上利用率が高い。 スマートフォンの用途と比べると,ブラウザ,写真撮影・閲覧,動画撮影・視聴など,大きめの画面を活用した用途が上位に上がっている。ただし,これらの利用率の数値自体はスマートフォンの方が高い。タブレットにおける通話の利用率はスマートフォンと比べて格段に低い。 5. 閲覧しているWebサイト タブレットから閲覧しているWebサイトを答えてもらった。回答されたサイトをWebで調べ,同じカテゴリーと思われた回答をまとめ,全盲者とロービジョン者各群で計数し,総計2人以上から回答のあったカテゴリーをグラフに表したのが図3-5-5である。全般的に,ロービジョン者の方が閲覧サイトへの回答が多かった(全盲:15件,ロービジョン:36件)。 回答者数が多かったサイトは買い物(全盲:2人,ロービジョン:11人),検索(全盲:1人,ロービジョン:7人),乗り換え・地図(全盲:1人,ロービジョン:4人)であった。以下は,ニュース,動画(全盲とロービジョンの合算で4人),視覚障害者向けのサイト,SNS(3人),天気,電子書籍(2人),図3-5-5にはないが趣味(野鳥),時報,Wiki,ラジオ,テレビ,料理,銀行・証券(各1人)であった。 図3-5-5 タブレットから閲覧しているWebサイト 全盲 n=17 ロービジョン n=26 買い物 全盲2人(11.8%) ロービジョン11人(42.3%) 検索 全盲1人(5.9%) ロービジョン7人(26.9%) 乗り換え・地図 全盲1人(5.9%) ロービジョン4人(15.4%) ニュース 全盲3人(17.6%) ロービジョン1人(3.8%) 動画 全盲3人(17.6%) ロービジョン1人(3.8%) 視覚障害者向け 全盲0人 ロービジョン3人(11.5%) SNS 全盲0人 ロービジョン3人(11.5%) 天気 全盲1人(5.9%) ロービジョン1人(3.8%) 電子書籍 全盲1人(5.9%) ロービジョン1人(3.8%) 6. タブレットではじめてできるようになったこと タブレットを用いてはじめてできるようになったこととして,全盲者9人とロービジョン者18人から40件の具体的な回答を得た。その内容を整理したのが図3-5-6である。 全盲者では,物体認識への回答が多く(6人),ほかに地理情報,動画・音楽再生,無料通話がいずれも2人から挙げられた。一方,ロービジョン者では,視覚補助という回答が最も多く(6人),ほかに空間地理情報,外出先での情報検索・記録(3人),起動の速さ,動画・音楽再生,電子書籍(2人)などが挙げられた。 空間地理情報と物体認識という用途はスマートフォンと同様である。一方で,視覚補助という用途と起動の速さという特徴はタブレット特有の利点である。画面が大きいタブレットは,拡大読書器の役割を担うと同時に,パソコンと同様な機能をパソコンより速い起動時間で実現している。 図3-5-6 タブレットではじめてできるようになったこと 全盲 n=17 ロービジョン n=26 視覚補助 全盲0人 ロービジョン6人(23.1%) 物体認識 全盲6人(35.3%) ロービジョン0人 空間地理情報 全盲2人(11.8%) ロービジョン3人(11.5%) 起動の早さ 全盲1人(5.9%) ロービジョン2人(7.7%) 外出先での情報検索・記録 全盲0人 ロービジョン3人(11.5%) 動画音楽再生 全盲2人(11.8%) ロービジョン2人(7.7%) 無料通話 全盲2人(11.8%) ロービジョン1人(3.8%) 電子書籍 全盲0人 ロービジョン2人(7.7%) 音声操作 全盲1人(5.9%) ロービジョン1人(3.8%) ゲーム 全盲1人(5.9%) ロービジョン1人(3.8%) 回答者の具体的な記述を機能別に紹介する。 ・視覚補助 「レストランでメニューの写真を撮り拡大して,自分で選ぶことができるようになりました。動画モードを利用して,文字が書ける,爪を自分で切ることができるようになりました」(4級,ロービジョン) 「時刻表などの撮影,拡大表示」(2級,ロービジョン) 「カメラ機能で,書類が見えるようになった」(2級,ロービジョン) ・物体認識 「TapTapSeeで,製品の識別がある程度できるようになった」(1級,全盲) 「TapTapSeeを使って,購入したパンを開封前に撮影し,食べる前にパンの種類を確認できた」(1級,全盲) 「TapTapSeeで,着て行く服を選んだ」(1級,全盲) ・空間地理情報 「Blindsquareで,家の周りで新しくできた施設などが分かった」(1級,全盲) 「大きめの画面なので地図アプリで迷うことなく目的地まで行けた」(5級,ロービジョン) 「現在地が分かるので,道に迷ってもたどりつける。NAVITIMEの利用により,外出が楽になった」(障害者手帳なし,ロービジョン) ・起動の速さ 「PCを起動しなくても,手軽にPCのメールを確認できる」(1級,全盲) ・外出先で情報検索・記録 「図書室で勉強ができた(メモ機能を出先で使い,帰宅後パソコンに送信)」(2級,ロービジョン) 「野鳥の鳴き声をその場で検索できるようになった」(3級,ロービジョン) ・動画・音楽再生 「ミュージックプレイヤーとして使えるので,外出時に音楽を聴くことができる」(1級,全盲) 「ビデオを再生することができるので外出時に視聴できる」(1級,全盲) 「ワンセグチューナーによるTV録画視聴」(2級,ロービジョン) ・無料通話 「LINEで無料通話が使えるので,パケット通信量固定の料金プランであれば,通話料を気にする必要がない」(1級,全盲) ・電子書籍 「電子書籍を利用して本が読めるようになりました」(4級,ロービジョン) ・音声操作 「声で曲タイトルを読み上げると再生してくれる。声で検索できる」(2級,ロービジョン) ・ゲーム 「全盲でもある程度のゲームができるようになった」(1級,全盲) 7. タブレットに期待したができなかった/使いづらいこと タブレットに期待したができなかったことや使いづらいこととして,全盲者9人から20件,ロービジョン者13人から7件の具体的な回答を得た。ロービジョン者はタブレット利用者が多い割には意見が少なく,タブレットの利用に比較的満足していると考えられる(図3-5-7)。 全盲者からの意見を整理すると,読み上げの不具合,アプリ・機能が使えない,文字入力の問題(以上,いずれも4人),タッチ操作・ファイル管理(3人),画面・文字が見づらい(2人),画面が大きくて使いづらい(1人)に分類された。 ロービジョン者は,いずれの問題に対しても1人または2人が指摘するに留まった。 図3-5-7 タブレットに期待したができなかった/使いづらい点 全盲 n=17 ロービジョン n=26 読み上げの不具合 全盲4人(23.5%) ロービジョン1人(3.8%) アプリ・機能が使えない 全盲4人(23.5%) ロービジョン1人(3.8%) 文字入力の問題 全盲4人(23.5%) ロービジョン0人 画面・文字が見づらい 全盲2人(11.8%) ロービジョン1人(3.8%) タッチ操作・ファイル管理 全盲3人(17.6%) ロービジョン0人 画面が大きくて使いづらい 全盲1人(5.9%) ロービジョン1人(3.8%) Wi-Fiスポットが少ない 全盲0人 ロービジョン2人(7.7%) レスポンスが遅い 全盲0人 ロービジョン1人(3.8%) 回答者の具体的な記述を問題別に紹介する。 ・読み上げの不具合 「ゲームのアプリを購入したが,読み上げなかった」(1級,全盲) 「LINEにて,絵文字(ブラウン(クマの顔の絵)の表情数種類)がすべて番号で読み上げられ,らくらくホンのように「嬉しい顔マーク」と読んではくれないため,自力で選んでLINE本文に挿入できない」(1級,全盲) 「LINEの電話番号登録をしようとしたときにVoiceOverを利用していたので,OKボタンが押せなかった」(2級,ロービジョン) ・アプリ・機能が使えない 「OCR機能やバーコード読み取り機能について,うまく文字認識できなかった」(1級,全盲) 「ナビが使えなかった」(2級,全盲) ほかに,Microsoft Officeが使えない,メールが文字化けする,動画をうまく再生できないことが挙げられた。 ・文字入力の問題 「入力に時間がかかる」(1級,全盲) 「iOS7になってから不便になったのが,メールでの音声入力。これまでうまく行っていたのに,文章を書いているのに勝手に単語の移動が起きたり,返信するつもりが,相手から来たメールの間に自分の返信本文が入ってしまったりして,とても苦労している」(1級,全盲) ・画面・文字が見づらい 「ホームページを見る場合に白黒反転が思うようにできない」(1級,全盲) ・タッチ操作・ファイル管理 「キーの押し間違えが多くなる」(1級,全盲) 「ファイルの管理(方法)が分からない」(1級,全盲) ・画面が大きくて使いづらい 「普段はiPhoneを使用しているため,画面が大きくなると操作に時間がかかってしまうので使いにくい」(1級,ロービジョン) ・その他 「Wi-Fiスポットが海外より少ない」(2級,ロービジョン) 「操作レスポンスの格段的な向上(が望まれる)」(2級,ロービジョン) 8. 学習方法 タブレットの学習方法を選択肢で尋ねたところ,全盲者とロービジョン者の両方において,友人・知人から,またはインターネットで教わったとする回答が多かった(図3-5-8)。ただし,タブレット利用者に対する回答率は両群で異なっており,全盲者で友人・知人が58.8%(10人),インターネットで52.9%(9人)と半分を超えるのに対して,ロービジョン者ではそれぞれ34.6%(9人),30.8%(8人)と約3分の1に留まった。メーリングリストの利用がロービジョン者で多く(7人,26.9%),全盲者で0人であった状況は,スマートフォンの学習方法と逆転している。講習会(支援者団体主催,販売店等主催とも),家族への回答数は全盲者の方が多い(全盲者はいずれも4人(23.5%),ロービジョン者は1人〜2人)。 各選択肢に対して具体的に回答された内容を紹介する。いずれも回答者数は1人である。 メーリングリスト:Androidメーリングリスト。 販売店等主催の講習会:Apple,株式会社 Studio Gift Hands。 視覚障害者支援団体等主催の講習会:「アイフェスタ」(JRPS神奈川支部)。 その他:AppleCare,ソフトバンクサービスセンター,販売店の人に電話等で質問。 ほかに,iPhoneと同じ操作体系なので学習が不要,見えているので何とかなった,など。 図3-5-8 タブレットの学習方法 全盲 n=17 ロービジョン n=26 友人・知人 全盲10人(58.8%) ロービジョン9人(34.6%) インターネット 全盲9人(52.9%) ロービジョン8人(30.8%) メーリングリスト 全盲0人 ロービジョン7人(26.9%) 家族 全盲4人(23.5%) ロービジョン2人(7.7%) 講習会(支援団体主催) 全盲4人(23.5%) ロービジョン2人(7.7%) 職場の同僚 全盲2人(11.8%) ロービジョン4人(15.4%) 講習会(販売店主催) 全盲4人(23.5%) ロービジョン1人(3.8%) ボランティア 全盲1人(5.9%) ロービジョン1人(3.8%) その他 全盲8人(47.1%) ロービジョン6人(23.1%) 9. 視覚障害が理由で使いづらい点 視覚障害が理由でタブレットを使いづらいことについて尋ねたところ,全盲者13人とロービジョン者15人が合計35件の具体的な回答を記述した。類似した問題を全盲者とロービジョン者各群で計数し,グラフに表したのが図3-5-9である。両者の間で使いにくいと感じる点に違いが見られた。 全盲者からは,読み上げの不具合について7人(タブレットについて回答した全盲者17人の41.2%)から意見があった。その内容は,読み上げられない画像やボタンの問題,読み間違いの問題などであった。その次に多かったのは画面構成の理解が難しいという問題で,6人(35.3%)から挙げられた。具体的には「画面が大きすぎて」,「目的の場所を探しにくい」という意見などである。 ロービジョン者では,文字入力の難しさと画面の見づらさについての意見が最も多く,6人(タブレットについて回答したロービジョン者26人の23.1%)から挙げられた。画面の見づらさの具体的な内容は,反転表示や文字の拡大ができない画面や,明るい場所で見づらいことなどで,これらはスマートフォンの使いづらい点と同様である。 スマートフォンの使いにくい点と比較すると,タブレットについては文字入力とタッチ操作の難しさに関する全盲者からの意見が少なかった。この変化の理由は,タッチ画面が大きくなって,キーやボタンを正確に操作しやすくなったことにあるのかもしれない。 図3-5-9 視覚障害が理由でタブレットを使いづらい点 全盲 n=17 ロービジョン n=26 文字入力がしづらい 全盲2人(11.8%) ロービジョン6人(23.1%) 画面・文字が見づらい 全盲2人(11.8%) ロービジョン6人(23.1%) 画面構成が理解しづらい 全盲6人(35.3%) ロービジョン2人(7.7%) 読み上げの不具合 全盲7人(41.2%) ロービジョン0人 タッチ操作がしづらい(支援団体主催) 全盲1人(5.9%) ロービジョン1人(3.8%) その他 全盲0人 ロービジョン2人(7.7%) 回答者の具体的な記述を問題別に紹介する。 ・文字入力がしづらい 「キーボード入力を目に頼る必要があること」(2級,ロービジョン) 「物理的なキーボードがついていないため, 文字が打ちづらい」(1級,ロービジョン) ・画面・文字が見づらい 「スムーズな白黒反転ができない」(3級,ロービジョン) 「全ての画面で文字が大きくなるわけではないので, ルーペの固定ができるように」(5級,ロービジョン) 「明るいところでは, 画面が見えない」(障害者手帳なし,ロービジョン) ・画面構成が理解しづらい 「全盲には画面が大きすぎでした」(1級,全盲) 「フリックを使わないとフィールドで目的のボタンを見つけるのが大変だ」(1級,全盲) 「画面構成の把握に時間がかかること」(1級,全盲) 「アプリごとに画面遷移, 内容を把握しなくてはいけない」(1級,全盲) ・読み上げの不具合 Androidでは初期設定を自力ですることができない」(1級,全盲) 「音声読み上げに対応していないボタンやコントロールがたくさんある」(1級,全盲) 「画像認証がある」(1級,全盲) 「VoiceOverの誤読が多い」(1級,全盲) ・タッチ操作がしづらい 「タブレットは平面であるため, 触覚が使用できず音声だけでは使いづらい」(2級,ロービジョン) 「フォーカスが勝手に移動すること」(1級,全盲) ・その他 「編集メニューなどの選択項目を流し読みしてくれる機能がほしい」(2級,ロービジョン) 「便利だが,機能がいっぱいで説明書を読むのが辛かった」(5級,ロービジョン) 10. 望まれる機能 視覚障害を補償するためにタブレットに望まれる機能を尋ねたところ,全盲者9人とロービジョン者11人が合計31件の具体的な回答を記述した。類似した要望を全盲者とロービジョン者各群ごとに計数し,グラフに表したのが図3-5-10である。全盲者とロービジョン者の間で要望に違いが見られた。 (その他を除くと)ロービジョン者では,視覚補助機能の向上への要望が最も多く6人(タブレットについて回答したロービジョン者26人の23.1%)から挙げられた。具体的には,単なる「色反転」ではなく「完全な」「ハイコントラスト白黒」機能が求められていた。 読み上げ機能の向上は,全盲者3人とロービジョン者2人から要望を得た。具体的な要望として「正確な日本語の読み上げ」が求められた。 キーボードへの要望は,全盲者2人とロービジョン者2人から回答を得た。その内容は様々で,「本体と一体化した」キーボードや物理的なボタン,テンキー,見やすいスクリーンキーボード,そして「位置に依存しないジェスチャー」のみで入力できる方法が挙げられた。これらの要望は,視覚障害が理由でタブレットを使いづらいと感じている内容(文字入力の難しさ,画面の見づらさ)に対応している。 OCRとナビゲーション機能への要望が,全盲者とロービジョン者どちらも2人から寄せられた。 これら以外に要望された機能は次の通りで,いずれも1人からの回答である:「アクセシビリティ機能のオンオフが,どんな状態でも音声や画像で確認できること」,商品バーコードの読み取り機能,サピエと連携した点字・DAISYの検索・再生アプリ,使い方のチュートリアル,強力光の懐中電灯機能,時報機能。 追加機能以外に,いずれも1人から次のような要望が挙がった:(視覚障害の)補助アプリに助成金を補助,デザインを簡素化,機器の軽量化,ネット接続速度の向上。 図3-5-10 タブレットに望まれる機能 全盲 n=17 ロービジョン n=26 視覚補助機能の向上 全盲1人(5.9%) ロービジョン6人(23.1%) 読み上げ機能の向上 全盲3人(17.6%) ロービジョン2人(7.7%) キーボード 全盲2人(11.8%) ロービジョン2人(7.7%) OCR 全盲2人(11.8%) ロービジョン0人 ナビゲーション 全盲1人(5.9%) ロービジョン1人(3.8%) その他機能 全盲3人(17.6%) ロービジョン3人(11.5%) 機能以外の要望 全盲1人(5.9%) ロービジョン3人(11.5%) 第6節 パソコンの利用状況 この節では「パソコンの利用状況について」の質問に対する回答者292人の回答を紹介する 。292人のうち全盲者は184人,ロービジョン者は108人であった。 1. 基本ソフト 利用しているパソコンの基本ソフトを答えてもらった。複数台のパソコンを利用している場合は,利用時間が長い順にすべて答えてもらった。その結果,基本ソフトについて287人から有効な回答を得た。287人のうち195人(67.9%)が1種類,78人(27.2%)が2種類,13人(4.5%)が3種類,1人(0.3%)が4種類の基本ソフトを回答した。 最も利用時間が長いパソコン(1機種目と呼ぶ)と利用時間が2番目以降のパソコン(2機種目以降と呼ぶ)に分けて集計し,両者を合わせて10人以上から回答のあった4種類の基本ソフトの利用者数を示したのが図3-6-1である。棒グラフの左側の白い部分は1機種目,右側の灰色の部分は2機種目以降の基本ソフトとしての利用者数である。 利用者数が最も多かった基本ソフトはWindows 7で,2機種目以降の回答も含めて211人(基本ソフトへの有効回答者287人の73.5%)が利用していた。次いでWindows XPを113人(39.4%)が利用していた。2012年の後半に発売された新しい基本ソフトWindows 8は32人(11.1%)と利用者数はまだ少なく,更に1機種目としての利用は16人に留まった。Windows Vistaを21人(7.3%)が利用していた。 10人未満の回答数であった基本ソフトは次の通りである。Mac OS X:5人,MS-DOS:3人,Windows 98:2人,Windows 2003(回答のまま),Windows CE,Windows 2000,Debian 7.0がいずれも1人。Windowsとのみ記した回答が3人。 図3-6-1 パソコンの基本ソフトの利用者数 n=287 Windows 7 1機種目171人 2機種目以降40人 (計73.5%) Windows XP 1機種目80人 2機種目以降33人 (計39.4%) Windows 8 1機種目16人 2機種目以降16人 (計11.1%) Windows Vista 1機種目12人 2機種目以降9人 (計7.3%) 2. 支援ソフト・補助機能 スクリーンリーダ,画面拡大ソフト,基本ソフトに標準装備のユーザー補助等のソフトや設定変更の利用者数を図3-6-2に示す。スクリーンリーダと音声読み上げの違いは,音声読み上げは基本ソフトに標準で装備されている機能,あるいはソフト(WindowsのナレーターやMac OSのVoiceOver)を指すのに対して,スクリーンリーダはあとからインストールしたソフトである。同様に,画面拡大ソフトと画面拡大の違いは,画面拡大は基本ソフトに標準で装備されている機能,あるいはソフト(拡大鏡など)を指すのに対して,画面拡大ソフトはあとからインストールしたソフトである。 全般の傾向を見ると,全盲者ではスクリーンリーダの利用率が高く(174人,全盲のパソコン利用者184人の94.6%),画面表示を変更する機能・ソフトの利用率は低い(10%程度以下)。同じ音声出力であっても,基本ソフトに標準装備された音声読み上げソフトの利用率は低い(20人,10.9%)。これは,Windowsのナレーターの機能が十分でないことと,Mac OSの利用者数が少ない(全盲の利用者は4人)ことが原因であろう。 ロービジョン者では画面表示を変更する機能・ソフトの利用率が高い。文字サイズの変更は52人(ロービジョンのパソコン利用者108人の48.1%),色設定の変更/反転表示は49人(45.4%),マウスポインタの設定は47人(43.5%),画面拡大は44人(40.7%)が利用していた。しかしこれらの1.5倍程度利用者が多いのがスクリーンリーダであり,78人(72.2%)が利用していた。画面拡大ソフトの利用者は20人(18.5%)であり,画面拡大機能の利用者の半分以下であった。 スクリーンリーダまたは音声読み上げ機能と,画面拡大ソフトウェアまたは画面拡大ほかの視覚的補助機能を併用する人は,全盲者で31人,ロービジョン者で57人いた。 その他として,フリーソフトのあんだーまうす君,32インチの大画面ディスプレイが各1人から挙げられた。 基本ソフトについて回答したが,支援ソフト・補助機能のいずれにも回答がない人が13人いた。このうち6人が全盲,7人がロービジョンであった。全盲者が支援ソフトや補助機能なしでパソコンを使うのは難しいので,回答不足が推察される。 図3-6-2 パソコンで利用している支援ソフト・補助機能 全盲 n=184 ロービジョン n=108 スクリーンリーダ(製品) 全盲174人(94.6%) ロービジョン78人(72.2%) 音声読み上げ 全盲20人(10.9%) ロービジョン8人(7.4%) 画面拡大ソフト(製品) 全盲12人(6.5%) ロービジョン20人(18.5%) 画面拡大 全盲12人(6.5%) ロービジョン44人(40.7%) 文字サイズの拡大 全盲20人(10.9%) ロービジョン52人(48.1%) 色設定の変更/反転表示 全盲22人(12.0%) ロービジョン49人(45.4%) マウスポインタの設定 全盲14人(7.6%) ロービジョン47人(43.5%) カーソルの設定 全盲16人(8.7%) ロービジョン21人(19.4%) アイコンサイズの設定 全盲6人(3.3%) ロービジョン28人(25.9%) 画面解像度の設定 全盲7人(3.8%) ロービジョン21人(19.4%) 2.1. スクリーンリーダ 利用しているスクリーンリーダを答えてもらった。複数台のスクリーンリーダを利用している場合は,利用時間が長い順にすべて答えてもらった。その結果,利用しているスクリーンリーダについて252人から有効な回答を得た。252人のうち177人(70.2%)が1種類,48人(19.0%)が2種類,19人(7.5%)が3種類,5人(2.0%)が4種類,2人(0.8%)が5種類,1人(0.4%)が6種類のスクリーンリーダを回答した。 最も利用時間が長いスクリーンリーダと利用時間が2番目以降のものに分けて集計し,両者を合わせて10人以上から回答のあった6種類のスクリーンリーダの利用者数を示したのが図3-6-3である。棒グラフの左側の白い部分は,最も利用時間が長いスクリーンリーダの利用者数,右側の灰色の部分は利用時間が2番目以降のスクリーンリーダの利用者数である。利用者の計数の際には,バージョンに関係なく各シリーズごとに合算した。同じ製品の異なるバージョンを利用している人は1人として数えた。 利用者数が最も多かったスクリーンリーダはPC-Talkerで,利用時間2番目以降の利用者も合算すると215人(スクリーンリーダへの有効回答者252人の85.3%)が利用していた。次いでJAWSを46人(18.3%)が利用していた。これ以降は,95Reader:24人(9.5%),FocusTalk:22人(8.7%),NVDAが15人(6.0%),VDM:11人(4.4%)となった。 利用者数が10人未満であったスクリーンリーダは次の通りである。VoiceOver:3人, CatWalk,ナレーター:2人, MMトーカー,xpNavo,WorldVoice,ALTAIR,grassroots:1人。 2007年の調査結果と比べると,PC-Talkerの利用率が68.2%から85.3%まで上がって独占状態となった。他方で,95ReaderとVDMの利用率が下がった。JAWSの利用率は変化しなかった。これは,あらゆる画面を読み上げるJAWSを,一般就労の場で必要とする人が一定数いるためと考えられる。フリーのスクリーンリーダNVDAが日本語化され,使われるようになった。 図3-6-3 スクリーンリーダソフトの利用者数 n=252 PC-Talker 1位189人 2位以降26人 (計85.3%) JAWS 1位19人 2位以降27人 (計18.3%) 95Reader 1位14人 2位以降10人 (計9.5%) FocusTalk 1位8人 2位以降14人 (計8.7%) NVDA 1位7人 2位以降8人 (計6.0%) VDM 1位10人 2位以降1人 (計4.4%) 2.2. 画面拡大ソフト 画面拡大ソフト利用者27人のうち26人がZoomTextを利用していた。残る1人はQZoomを利用していた。2002年の調査でも,挙げられた画面拡大ソフトの大部分はZoomTextであった。 3. パソコン周辺装置 視覚障害者用のパソコン周辺装置のうち,点字プリンタ,点字ディスプレイ/点字電子手帳,点図ディスプレイの利用状況を回答してもらった(図3-6-4)。3種の機器の中では,点字ディスプレイ/点字電子手帳の利用者が最も多く60人(パソコンについての回答者292人の20.5%),点字プリンタの利用者はその4分の1程度と少なく17人(5.8%),点図ディスプレイの利用者は更に少なく2人(0.7%)だけであった。 3種の機器はいずれも触覚で読み取る機器であり,ロービジョン者より全盲者の方が利用率は高い。点字ディスプレイは,全盲者56人が利用しており,全盲のパソコン利用者における利用率は30.4%であった。点字プリンタは,全盲者16人(8.7%)が利用していた。他方で,ロービジョン者によるこれらの機器の利用者数は0〜4人と少ないものだった。 その他として挙げられた機器は次の通りである。プレクストークポケットPTP1,拡大読書器:2人,ブックセンス,ボイスセンス,点字ラベラーBL1000,電子ルーペ(コンパクトミニ):1人。 その他の装置としてスピーカ,ヘッドホン,キーボード,墨字プリンタがいずれも数人から挙げられた。これらは視覚障害を補う目的で使われていることもあろうが,一般的な利用と区別を付けられない。また,使用していても回答していない人も多数いると思われることから,計数はしないこととする。同様に,12人がスキャナを挙げたが,OCR利用者は108人だったので,その他の装置の欄でスキャナを記入しなかった人は相当数いたと考えられる。 図3-6-4 視覚障害者用パソコン周辺装置の利用者数 全盲 n=184 ロービジョン n=108 点字ディスプレイ/点字電子手帳 全盲56人(30.4%) ロービジョン4人(3.7%) 点字プリンタ 全盲16人(8.7%) ロービジョン1人(0.9%) 点図ディスプレイ 全盲2人(1.1%) ロービジョン0人 3.1. 点字ディスプレイ/点字電子手帳 点字ディスプレイ/点字電子手帳の利用者60人のうち35人が1種類,18人が2種類,6人が3種類,1人が5種類の製品を回答し,合計94台が挙げられた。そのうち,シリーズ全体で10台以上挙げられた機種を図3-6-5に示す。 94台の中ではケージーエス社のブレイルメモシリーズの利用数が最も多く55台を占めた。ブレイルメモシリーズの中で多かったのはブレイルメモポケット:21台,ブレイルメモBM-32:16台であった。ブレイルメモシリーズの次に多かったのは,同じくケージーエス社のブレイルノートシリーズで全14台,その中ではブレイルテンダーBT46が5台と最も多かった。3番目に多かった製品シリーズはブレイルセンス(韓国HIMS社&エクストラ)で,全12台が挙げられた。その中ではオンハンドが5台と最も多かった。 利用台数が3台以下だった製品は以下の通りである。BAUM Vario:3台,清華:3台,ALVA:2台,PowerBraille 40:1台,Navigator:1台。 2007年の調査時点では,ブレイルノートとブレイルメモが同数で最も多かったが(49人),今回の調査結果ではブレイルメモがブレイルノートの3倍程度まで利用台数が延びた(あるいはブレイルノートの利用率が下がった)。2007年にはALVA製品とPowerBrailleの利用者が10人以上いたが,今回の調査結果ではいずれも減少した。他方で今回の調査ではブレイルセンスの利用者が増えた。このように,点字ディスプレイ/点字電子手帳(あるいは携帯情報端末)の各機種の利用率には大きな変化が見られた。 n=94 ブレイルメモ ポケット 21台 BM32 16台 BM16 5台 BM24 5台 BM46 5台 その他 3台 計55台 ブレイルノート BT46 5台 BT40 4台 BT46x 4台 その他1台 計14台 ブレイルセンス OnHand 5台 U2 3台 + 1台 その他3台 計12台 3.2. 点字プリンタ 点字プリンタの利用者17人のうち13人が1種類,3人が2種類,1人が3種類の製品を回答し,合計22台が挙げられた。そのうち,2台以上挙げられた機種を図3-6-6に示す。 最も利用者が多かった点字プリンタはジェイ・ティー・アール社のESA721で(Ver.95を含む),8人から回答があった。2番目はEnabling Technologies社のETで4人,以下,Index Braille社のEverestが3人,Enabling Technologies社のJulietと日本テレソフト社のDOG-Multiが2人であった。ほかに,日本テレソフト社TP32とBPW,BASIC(詳細不明)をいずれも1人が挙げた。 2007年の調査結果と比較すると,ESA721の利用者数が最も多く,2位,3位にEnabling Technology社と日本テレソフト社の製品が入る点は同じであった。 図3-6-6 点字プリンタ機種の利用台数 n=22 ESA721 8台(47.1%) ET 4台(23.5%) Everest 3台(17.6%) Juliet 2台(11.8%) DOG-Multi 2台(11.8%) 3.3. 点図ディスプレイ 2人が点図ディスプレイを各1台使っていた。機種はKGS社のDV-1とDV-2であった。 4. アプリケーションソフトの利用 8種類のアプリケーションソフトの利用状況を答えてもらった。ソフト名の回答があった人と,ソフト名は記入していないが回答欄にチェックをした人を各ソフトの利用者と見なした。調査者が意図した回答欄とは異なる欄に回答されたソフトは,その名称から判断をして,回答欄間でデータを移動させて集計した。集計データを全盲者とロービジョン者に分けたのが図3-6-7である。利用率(括弧の中の数字)は,パソコンの利用状況についての回答者(全盲者184人,ロービジョン者108人)を分母として求めた。Webブラウザと電子メールソフトを一番上に配置した。ワープロ・エディタより下には,総利用者の高い順にソフトを並べた。 表計算ソフトを除くすべてのアプリケーションにおいて,全盲者の方がアプリケーションソフトの利用率が高かった。 パソコンの一般的な用途がインターネットとメールであることから,全盲者によるWebブラウザ,電子メールソフトの利用率が8割台である点は妥当である。ところが,ロービジョン者においてはこれらのソフトの利用率が50%台〜60%台と低い。この理由として,全盲者は音声化のため視覚障害者向けのソフトを利用しなくてはならず,その利用が意識的なのに対して,ロービジョン者は一般向けのソフトを利用でき,メールソフトではなくWebメールを利用できること,その上,パソコンではなく,スマートフォンやタブレットからインターネットへアクセスする人が多いことなどが考えられるが,いずれも推測に留まる。 ワープロ・エディタと表計算ソフトは,パソコンの主たる用途として,全盲者,ロービジョン者ともに70%台〜80%台と高い利用率であった。 OCRソフト,点字編集ソフト,自動点訳ソフトは視覚障害を補償するソフトであり,全盲者の方がロービジョン者より利用率が高い。特に点字を取り扱う点字編集ソフト,自動点訳ソフトは全盲者による利用がほとんどである。 全盲者の方がデータベースの利用率が高いのは,あん摩マッサージ指圧・はり・きゅう・の三療の仕事に就いている人が顧客管理に利用しているためと考えられる。 図3-6-7 アプリケーションソフトの利用者数 全盲 n=184 ロービジョン n=108 Webブラウザ 全盲156人(84.8%) ロービジョン62人(57.4%) 電子メールソフト 全盲163人(88.6%) ロービジョン73人(67.6%) ワープロ・エディタ 全盲156人(84.8%) ロービジョン84人(77.8%) 表計算ソフト 全盲134人(72.8%) ロービジョン83人(76.9%) OCRソフト 全盲91人(49.5%) ロービジョン19人(17.6%) データベースソフト 全盲73人(39.7%) ロービジョン28人(25.9%) 点字編集ソフト 全盲47人(25.5%) ロービジョン2人(1.9%) 自動点訳ソフト 全盲41人(22.3%) ロービジョン3人(2.8%) 4.1. Webブラウザ Webブラウザの利用者218人(全盲:156人,ロービジョン:62人)から,具体的なWebブラウザの名称が11種類,合計293件挙げられた。このうち利用者数が5人以上であったソフトを図3-6-8に示した。 利用者が圧倒的に多かったのはInternet ExplorerとNetReaderである。Internet Explorer の利用者は全盲者86人(Webブラウザを利用する全盲者の55.1%),ロービジョン者39人(Webブラウザを利用するロービジョン者の62.9%),NetReaderの利用者は全盲者92人(59.0%),ロービジョン者23人(37.1%)であった。NetReader はスクリーンリーダPC-Talkerと連動して動作する音声Webブラウザである。PC-Talkerの利用率の増加に応じて,このNetReaderの利用者も増加した。 これら以外の利用人数は格段に少なくなり,SearchAidの利用者は17人(全盲:15人,ロービジョン:2人),Firefoxは12人(全盲:8人,ロービジョン:4人)であった。2007年調査で利用者が最も多かったホームページ・リーダーは,利用者数が9人(全盲:8人,ロービジョン:1人)と極端に減少した。 利用者数が5人未満であったWebブラウザは次の通りである。Safari:4人,Chrome:3人,ALTAIR,Voice Popper:2人,Lunascape,スマートブラウザリーダー:1人。ほかに,スクリーンリーダが4件挙げられたが,Web画面の読み上げにスクリーンリーダを利用している人は実際にはもっと多いはずである。 図3-6-8 利用者の多かったWebブラウザ 全盲 n=156 ロービジョン n=62 Internet Explorer 全盲86人(55.1%) ロービジョン39人(62.9%) NetReader 全盲92人(59.0%) ロービジョン23人(37.1%) SearchAid 全盲15人(9.6%) ロービジョン2人(3.2%) FireFox 全盲8人(5.1%) ロービジョン4人(6.5%) ホームページリーダー 全盲8人(5.1%) ロービジョン1人(1.6%) 4.2. 電子メール 電子メールソフトの利用者236人(全盲:163人,ロービジョン:73人)から,具体的な電子メールソフトの名称が18種類,合計274件挙げられた。このうち利用者数が5人以上であったソフトを図3-6-9に示した。 利用者が抜きん出て多かったのはMyMailで,全盲者96人(電子メールソフトを利用する全盲者の58.9%),ロービジョン者27人(電子メールソフトを利用するロービジョン者の37.0%)が利用していた。利用者が2番目に多かったソフトはMMメールで,全盲者37人(22.7%),ロービジョン者14人(19.2%)が利用していた。利用者が3番目に多かったOutlookはロービジョン者の方が利用率が高かった(全盲:14人(8.0%),ロービジョン:14人(19.2%))。利用者数4番目のWinbiffは,全盲者のみ13人が利用していた。利用者数5番目のVoice Popperは全盲者10人とロービジョン者3人が利用していた。これ以下は,全盲者とロービジョン者を合わせた利用人数を示す。Mozilla Thunderbird,Windows Live Mail:8人,Outlook Express:6人,Gmail,ALTAIR:5人。 以上の電子メールソフト9種類のうち,視覚障害者用に開発,あるいは改良されたソフトはMyMail,MMメール,Winbiff,Voice Popper,ALTAIRの5種類で計205件を占め,274件に対する割合は74.8%に上った。 回答数が5人未満であった電子メールソフトは次の通りである。秀丸メール:3人,ロータスノーツ,Becky,電信八号,DOX:1人。Webメールでは,Yahoo!メール:2人,Hotmail,OCN:1人,Webメールとのみ記述:3人。 2007年の調査結果と比べると, MyMailの利用率が伸びた一方でMMメールの利用率が下がり,その結果,利用率上位2製品の順序が逆転した。利用率上位に上がっているソフトの種類は2007年から変化はなかった。 図3-6-9 利用者の多かった電子メールソフト 全盲 n=163 ロービジョン n=73 MyMail 全盲96人(58.9%) ロービジョン27人(37.0%) MMメール 全盲37人(22.7%) ロービジョン14人(19.2%) Outlook 全盲13人(8.0%) ロービジョン14人(19.2%) Winbiff 全盲13人(8.0%) ロービジョン0人 Voice Popper 全盲10人(6.1%) ロービジョン3人(4.1%) Mozilla Thunderbird 全盲4人(2.5%) ロービジョン4人(5.5%) Windows Live Mail 全盲3人(1.8%) ロービジョン5人(6.8%) Outlook Express 全盲3人(1.8%) ロービジョン3人(4.1%) Gmail 全盲1人(0.6%) ロービジョン4人(5.5%) ALTAIR 全盲4人(2.5%) ロービジョン1人(1.4%) 4.3. ワープロ・エディタ ワープロ・エディタの利用者240人(全盲:156人,ロービジョン:84人)から,具体的なワープロ・エディタの名称が13種類,合計353件挙げられた。このうち利用者数が5人以上であったソフトを図3-6-10に示した。 Microsoft Wordの利用者が196人(全盲:119人,ロービジョン:77人)と群を抜いて多い。バージョンの異なる複数のWord製品を挙げた回答者が22人いたが,利用人数の重複計数はしなかった。利用者数2番目以下のソフトと利用者数は,MyEdit:47人(全盲:42人,ロービジョン:5人),MyWord:36人(全盲:32人,ロービジョン:4人),メモ帳:21人(全盲:17人,ロービジョン:4人),ALTAIR:7人,MMエディタ:6人,一太郎:5人。図示していないがWZ Editor:3人,秀丸エディタ:3人。利用者数1人のソフト:VEGA,Kingsoft Office,メモメモ4,DM.EXE(製造元等不明)。 以上のワープロ・エディタのうち,視覚障害者用に開発または改良されたものはMyEdit,MyWord,ALTAIR,MMエディタ,VEGAの5種類である。これらのソフトは,ロービジョン者より全盲者の利用率が高い。 上位4番目までのソフトの種類と順位は2007年の調査結果と変わらなかった。順位がこれ以下のソフトの種類も2007年の調査結果から変化はない。 図3-6-10 利用者の多かったワープロ・エディタ 全盲 n=156 ロービジョン n=84 Microsoft Word 全盲119人(76.3%) ロービジョン77人(91.7%) MyEdit 全盲42人(26.9%) ロービジョン5人(6.0%) MyWord 全盲32人(20.5%) ロービジョン4人(4.8%) メモ帳 全盲17人(10.9%) ロービジョン4人(4.8%) ALTAIR 全盲6人(3.8%) ロービジョン1人(1.2%) MMエディタ 全盲5人(3.2%) ロービジョン1人(1.2%) 一太郎 全盲2人(1.3%) ロービジョン3人(3.6%) 4.4. 表計算ソフト 表計算ソフトの利用者217人(全盲:134人,ロービジョン:83人)から,具体的なワープロ・エディタの名称が合計235件挙げられた。そのほとんどはMicrosoft Excelであり,利用人数は215人(全盲:134人,ロービジョン:81人)であった。バージョンの異なる複数のExcel製品を挙げた回答者が18人いたが,利用人数の重複計数はしなかった。Excel以外のソフトはKingsoft Office(1人)だけであった。Excelの独占状態は2007年の調査結果と同じである。 4.5. OCRソフト OCRソフトの利用者110人(全盲:91人,ロービジョン:19人)から,具体的なOCRソフト(ハードウェア一体型も含む)の名称が17種類,合計128件挙げられた。このうち利用者数が5人以上であったソフトを図3-6-11に示した。ロービジョンのOCRソフト利用者が19人と少なく,全盲者とロービジョン者の間で利用ソフトの違いを見ることが難しいため,図3-6-11では,全盲者とロービジョン者でグラフを分けることはせず,両群の利用者数を足し合わせたグラフとした。 利用者数が最も多かったのはMyReadで53人(全盲:45人,ロービジョン:8人)が利用していた。2番目はe.Typistで27人(全盲:25人,ロービジョン:2人),3番目はらくらくリーダーで18人(全盲:15人,ロービジョン:3人)が利用していた。これ以外のソフトの利用者数は10人に満たない。利用の参考のため,図示されていないものも併せて全件紹介する。読取革命:6人,よみとも:5人,読んde!!ココ:4人,WinReader Pro:3人,とうくん,Adobe Acrobat:2人,MP Navigator,本格読取,スキャンスナップ,よみあげ名人,ABBYY FineReader,名刺の助っ人,やさしくPDF OCR,ヨメール:1人。 17種類のうち,視覚障害者向けに開発された製品は,MyRead,らくらくリーダー,よみとも,とうくん(よみともの後継版),よみあげ名人である。このうち2種類が,利用率上位3位までに入っている。 2007年の調査結果と比べると,MyReadの利用率が上がり,e.Typistと順位が入れ替わった。挙げられた製品の種類は2007年時とほぼ変わりはなかった。 図3-6-11 利用者の多かったOCRソフト n=110 MyRead 53人(48.2%) e.Typist 27人(24.5%) らくらくリーダー 18人(16.4%) 読取革命 6人(5.5%) よみとも 5人(4.5%) 4.6. データベースソフト データベースソフトの利用者101人(全盲:73人,ロービジョン:28人)から,具体的なデータベースソフトの名称が13種類,合計109件挙げられた。このうち利用者数が5人以上であったソフトを図3-6-12に示した。 図3-6-12 利用者の多かったデータベースソフト 全盲 n=73 ロービジョン n=28 アドボイス 全盲39人(53.4%) ロービジョン10人(35.7%) 宛名職人 全盲18人(24.7%) ロービジョン4人(14.3%) Microsoft Access 全盲6人(8.2%) ロービジョン7人(25.0%) 筆ぐるめ 全盲3人(4.1%) ロービジョン4人(14.3%) 利用者数が最も多かったのはアドボイスで49人(全盲:39人,ロービジョン:10人)が利用していた。2番目は宛名職人で22人(全盲:18人,ロービジョン:4人),3番目はMicrosoft Accessで13人(全盲:6人,ロービジョン:7人)が利用していた。利用者数4番目以下のソフトとその利用者数は次の通りである。筆ぐるめ:7人,VDJW:4人,筆王,Microsoft Excel:3人,筆まめ,はがきスタジオ,MMデータベース,Aprint,Kingsoft Office for eo,Macアプリケーション(詳細は不明):1人。 アドボイスと宛名職人は全盲者の方が利用率が高いが,Accessと筆ぐるめはロービジョン者の方が利用率が高い。 2007年の調査結果では,アドボイスと宛名職人の利用者数が拮抗していたが,今回の調査ではアドボイスの利用者数が宛名職人の倍以上となった。 4.7. 点字編集ソフト 点字編集ソフトの利用者49人(全盲:47人,ロービジョン:2人)から,具体的な点字編集ソフトの名称が7種類,合計52件挙げられた。このうち利用者数が5人以上であったソフトを図3-6-13に示した。ロービジョンの点字編集ソフト利用者が2人と少なく,全盲者とロービジョン者の間で利用ソフトの違いを見ることが難しいため,図3-6-13では,全盲者とロービジョン者でグラフを分けることはせず,両群の利用者数を足し合わせたグラフとした。 利用者が最も多かったのはWin-BESで24人が利用していた。2番目はブレイルスターで12人,3番目は点字編集システムで11人が利用していた。これらのソフトの種類と順位は2007年の調査結果と同じであった。利用者2人以下のソフトとその利用者数は次の通りである。T・エディタ:2人,OpwBE(漢点字編集ソフト),B’Score(点字楽譜学習・作成ソフト),BrlPad (ブレイルメモ付属のユーティリティソフト):1人。 図3-6-13 利用者の多かった点字編集ソフト n=49 Win-BES 24人(49.0%) ブレイルスター 12人(24.5%) 点字編集システム 11人(22.4%) 4.8. 自動点訳ソフト 自動点訳ソフトの利用者44人(全盲:41人,ロービジョン:3人)から,具体的な自動点訳ソフトの名称が5種類,合計48件挙げられた。このうち利用者数が5人以上であったソフトを図3-6-14に示した。ロービジョンの自動点訳ソフト利用者が3人と少なく,全盲者とロービジョン者の間で利用ソフトの違いを見ることが難しいため,図3-6-14では,全盲者とロービジョン者でグラフを分けることはせず,両群の利用者数を足し合わせたグラフとした。 利用者が最も多かったのはEXTRAで,25人が利用していた。2番目はibukiTenで12人,3番目はお点ちゃんで8人が利用していた。利用者数1番と2番のソフトの種類と順位は2007年の調査結果と同じであった。これ以外に挙げられたソフトは,ブレイルブリッジ(2人),Suzu(1人)である。 図3-6-14 利用者の多かった自動点訳ソフト n=44 EXTARA 25人(56.8%) ibukiTen 12人(27.3%) お点ちゃん 8人(18.2%) 4.9. その他のソフト その他のソフトとして77人(全盲:61人,ロービジョン:16人)から,具体的なソフトの名称が66種類挙げられた。このうち5人以上が利用していた製品7種類を図3-6-15に示した。 上位7種類のうち5種類を高知システム開発の製品が占めた:MyBook(全盲:19人,ロービジョン:4人),MyNews(全盲:18人,ロービジョン:3人),MyRoute(全盲:13人,ロービジョン:3人),MyDic(全盲:12人,ロービジョン:3人),MyDoctor(全盲:5人,ロービジョン:2人)。他の2製品は,Skype(全盲:5人,ロービジョン:2人)とPRS(DAISY録音・編集ソフト)(全盲:5人)であった。 図3-6-15 利用者の多かったその他のソフト 全盲 n=184 ロービジョン n=108 MyBook 全盲19人(10.3%) ロービジョン4人(3.7%) MyNews 全盲18人(9.8%) ロービジョン3人(2.8%) MyRoute 全盲13人(7.1%) ロービジョン3人(2.8%) MyDic 全盲12人(6.5%) ロービジョン3人(2.8%) Skype 全盲5人(2.7%) ロービジョン2人(1.9%) MyDoctor 全盲5人(2.7%) ロービジョン2人(1.9%) PRS 全盲5人(2.7%) ロービジョン0人 利用者が4人以下のソフトウェアをカテゴリー分けした。そのカテゴリーごとに製品名を記す。利用人数は省略した。 DAISY図書関連:NetPlexTalk ,サピエ図書,BookTerm。 音声・動画プレーヤー:iTunes,GOM Player,Windows Media Player,RealPlayer。 CD-DVD操作アプリ,VLC media player,Nero,Craving Explorer。 ファイラー:FFFTP,MyFile,As/R.BunBackup。 データ管理:ばっくんちょ,HD革命BackUp,Finaldata8.0,WinFM2008,検索ソフト。 リッピング・ツール:CDex,DVDFab 8,Area61 ダウンローダー,B's Recorder。 上のカテゴリー以外のソフトウェア。これらの中にはほかのソフトウェアの種類に分類されるべきものもあるかもしれないが,何らかの意図をもってこの欄に書かれたものと見なして本項に記す:PowerPoint,AOK,KTOS,Tween,Adobe Reader,Altair,さくさくビルダー3,Dwin,ESET Smart Security,サシステムソフト(辞書),漢字変換時に使う「声の国語辞典」,ペースター,マイサポート,らくらくボイス,らくらく予定帳,聞き書き君,Headline-Reader(RSSリーダー),ブレイルワークス,ミルタイプビューア(IPtalkの要約筆記閲覧ソフト),Jw_cad,Qt,ノーツシステム(Lotus Notes?),会社の専用ソフト,リコ・トーキング・クロック,色々の色,AiB Tools,Office 2007,ホームぺージ作成ソフト。 5. 閲覧しているWebサイト パソコンから閲覧しているWebサイトについて尋ねたところ,全盲者134人とロービジョン者51人から具体的な回答を得た。回答されたサイトをWebで調べ,同じカテゴリーと思われた回答をまとめ,全盲者とロービジョン者各群で計数し,合計10人以上から回答があったサイトをグラフに表したのが図3-6-16である。同じ人が同種の複数のサイトを挙げた場合は閲覧者数を重複して計数した。全般に,全盲者の方がロービジョン者より閲覧件数,閲覧率ともに高いことが分かる。 図3-6-16 パソコンから閲覧しているWebサイト 全盲 n=184 ロービジョン n=108 買い物 全盲94人(51.1%) ロービジョン30人(27.8%) 医療福祉 全盲79人(42.9%) ロービジョン9人(8.3%) 検索 全盲43人(23.4%) ロービジョン27人(25.0%) 図書館 全盲52人(28.3%) ロービジョン6人(5.6%) 旅行・交通 全盲39人(21.2%) ロービジョン16人(14.8%) SNS 全盲30人(16.3%) ロービジョン12人(11.1%) 新聞・ニュース 全盲24人(13.0%) ロービジョン10人(9.3%) 動画 全盲23人(12.5%) ロービジョン6人(5.6%) テレビ・ラジオ 全盲20人(10.9%) ロービジョン3人(2.8%) 銀行・証券・投資 全盲18人(9.8%) ロービジョン5人(4.6%) 国・地方自治体 全盲16人(8.7%) ロービジョン6人(5.6%) ブログ・個人サイト 全盲13人(7.1%) ロービジョン4人(3.7%) 博物館・劇場 全盲12人(6.5%) ロービジョン0人 Wiki・辞書・調べもの 全盲12人(6.5%) ロービジョン0人 スポーツ 全盲8人(4.3%) ロービジョン3人(2.8%) 料理 全盲8人4.3(%) ロービジョン2人(1.9%) Webサービス 全盲9人(4.9%) ロービジョン1人(0.9%) 全盲者,ロービジョン者ともに最も閲覧者が多かったのが買い物に関するサイトである(全盲:94人,ロービジョン:30人)。その中でも閲覧者数が多かったサイトを順に挙げる:楽天(全盲:19人,ロービジョン:8人),Amazon(全盲:16人,ロービジョン:7人),各地の生協(全盲:11人,ロービジョン:0人),ネットスーパー各社(大部分はイオン。生協を除く)(全盲:10人,ロービジョン:3人)。 医療・福祉関係のサイトは圧倒的に全盲者の閲覧者が多かった(全盲:79人,ロービジョン:9人)。ここには,障害者団体(全盲:57人,ロービジョン:7人),支援機器メーカー・販売店(全盲:8,ロービジョン:3人),個人のサイト(全盲:6人),その他情報(全盲:9人)が含まれる。 検索サイトの閲覧率は全盲者とロービジョン者でほぼ同率である(全盲:43人,23.4%,ロービジョン:27人,25.0%)。利用しているサイトはGoogleとYahoo!にほぼ2分された。Google(全盲:22人,ロービジョン:11人),Yahoo!(全盲:17人,ロービジョン:14人)。 図書館サイトについては,全盲者52人が閲覧していたのに対して,ロービジョン者の閲覧者は6人に留まるという顕著な違いが見られた。全盲者ではサピエ(全国視覚障害者情報提供施設協会が運営する総合情報提供ネットワーク)の閲覧者が39人に上ったが(「日本点字図書館」という記述も6人あったため,39人より多い可能性もある),ロービジョン者では2人に留まった。サピエ以外には公共図書館サイトが挙げられた。 旅行・交通に関するサイトは,全盲者39人とロービジョン者16人が閲覧していた。このカテゴリーには,鉄道・バス・船舶の各会社,乗り換え案内,宿泊等総合予約を集約した。 SNSの閲覧者(全盲:30人,ロービジョン:12人)は,Facebook(全盲:14人,ロービジョン:6人),mixi(全盲:9人,ロービジョン:4人),Twitter(全盲:5人,ロービジョン:2人)にほぼ3分された。 これ以降はカテゴリー名と総閲覧数を紹介する:新聞・ニュース(34人),動画(ほとんどがYouTube)(29人),テレビ・ラジオ(radikoとNHKで3分の2)(24人),銀行・証券・投資(23人),国・地方自治体(22人),ブログ・個人サイト(17人),博物館・劇場(12人),Wiki・辞書・調べもの(12人),スポーツ(11人),料理(10人),Webサービス(10人)。 総閲覧数が10人未満のカテゴリーは,カテゴリー名のみを紹介する:天気,パソコン関連情報,企業,音楽関連,団体・機関,語学,携帯電話会社,メールサービス,映画・アニメ,ゲーム,掲示板。 6. 視覚障害が理由で使いにくい点 視覚障害が理由でパソコンやインターネットを使いづらいことについて尋ねたところ,全盲者163人とロービジョン者84人が具体的な回答を記述した。類似した問題を全盲者とロービジョン者各群で計数し,グラフに表したのが図3-6-17である。全盲者はロービジョン者より多くの問題点を指摘した(全盲:214件(パソコン利用者1人当たりの件数1.16件),ロービジョン:81件(同0.75件))。 図3-6-17から,Web検索・閲覧時の問題数が最も多いこと分かる。全盲者151人とロービジョン者45人が問題を指摘しており,全問題件数に占める割合は66.4%に上る。そこで,Web検索・閲覧時の問題を更に分類したのが図3-6-18である。 指摘者数が多かった順に問題点を並べると,ページ・画像・フラッシュ等を読み上げない(全盲:48人,ロービジョン:14人),検索・閲覧しづらい(全盲:30人,ロービジョン:6人),画像認証ができない(全盲:25人,ロービジョン:3人),操作できない・しづらい(全盲:22人,ロービジョン:5人),PDFを読み上げない(全盲:18人,ロービジョン:4人),画面・文字が見づらい(全盲:4人,ロービジョン:11人),画面構成が理解しづらい(全盲:2人,ロービジョン:1人),アクセシビリティ全般(全盲:2人,ロービジョン:1人)となった。 図3-6-17 視覚障害が理由でパソコンやインターネットを使いづらい点 全盲 n=184 ロービジョン n=108 Web検索・閲覧時の問題 全盲151人(82.1 %) ロービジョン45人(41.7 %) 読み上げの不具合(Web以外) 全盲31人(16.8 %) ロービジョン12人(11.1 %) 画面・文字が見づらい 全盲4人(2.2 %) ロービジョン12人(11.1 %) 操作できない 全盲11人(6.0 %) ロービジョン4人(3.7 %) OSやアプリケーションごとの指摘 全盲10人(5.4 %) ロービジョン4人(3.7 %) その他の問題 全盲7人(3.8 %) ロービジョン4人(3.7 %) 図3-6-18 Web閲覧・検索時の問題点 全盲 n=151 ロービジョン n=45 ページ、画像、フラッシュ等を読み上げない 全盲48人(31.8 %) ロービジョン14人(31.1 %) 検索・閲覧しづらい 全盲30人(19.9 %) ロービジョン6人(13.3 %) 画像認証ができない 全盲25人(16.6 %) ロービジョン3人(6.7 %) 操作できない・しづらい 全盲22人(14.6 %) ロービジョン5人(11.1 %) PDFを読み上げない 全盲18人(11.9 %) ロービジョン4人(8.9 %) 画面・文字が見づらい 全盲4人(2.6 %) ロービジョン11人(24.4 %) 画面構成が理解しづらい 全盲2人(1.3 %) ロービジョン1人(2.2 %) アクセシビリティ全般 全盲2人(1.3 %) ロービジョン1人(2.2 %) Web閲覧・検索時の問題点を具体的に述べた回答者の言葉を問題別に紹介する。 ・ページ・画像・フラッシュ等を読み上げない 「楽天やアマゾンなどのショッピングサイトで,表示が音声対応していない」(1級,全盲) 「興味のあるサイトにアクセスしても,読み上げない場合が10回に3回程度は生じる」(1級,全盲) 「画像で表示されていたり,ボタンがフラッシュやJavaアプレットなど特殊な作りになっていて押せなかったりすることがある」(1級,全盲) ・検索・閲覧しづらい 検索サイトの上部にボタンや広告が数多くあり,検索語を入力するテキストボックスや検索結果までたどり着くのに手間と時間がかかる問題が多くの人から指摘されている。 「Yahoo,Googleで,「検索文字」ボックスにすぐに入れなかったり,検索後に「戻る」操作後が Yahoo,Googleのトップだったり」(1級,全盲) 「ホームページを検索する際,次のリンクに飛んでも同じ内容が繰り返され,所望の項目にたどり着けず,あきらめてしまう」(1級,全盲) 「広告が多すぎて,同じ音声を何度も聞かなければならない」(1級,全盲) 「ホームページ閲覧で「本文へ」という項目がない場合,本文まで矢印キーを移動させるとなると,その間に多くの項目があり,煩わしい」(1級,全盲) ・画像認証ができない 「画像認証ができない。プレゼント応募に参加できなくて寂しい」(1級,全盲) 「パスワード認証などで画像認証があるとお手上げなので,それを何とかしてほしい」(2級,全盲) ・操作できない・しづらい 「マウスを当てないとリンクにならないリンク」(1級,全盲) 「キー操作を受け付けないリンクやボタン類」(1級,全盲) 「スカイプを頻繁に利用しますが,ID・パスワードのエディットボックスがずれてしまうようで,うまくログインできません」(1級,全盲) 「ネットショッピングに手間がかかる」(1級,全盲) ・PDFを読み上げない PDFファイルについては,画像のみでテキストが埋め込まれておらず読み上げないという問題と,読み上げ順序が文脈通りになっておらず,内容を理解しづらいという問題の指摘が多い。 「画像で表示されたPDFの内容が読めない」(2級,ロービジョン)」 PDFファイルを読み上げるとき,ランダムに読み上げるため,文章のつながりが分からない」(1級,全盲) 「PDFを開くとスクリーンリーダの調子がおかしくなってしまう」(1級,全盲) ・画面・文字が見づらい 「サイトによって文字が大きくならない」(3級,ロービジョン) 「画面が明るくて文字が読みづらい。拡大すると行間が狭くなったり,文字が重なって読めなくなる。淡い色使いをしているサイトでは,どこに何があるのか見つけにくい。特にクリックする箇所が分かりづらいとストレスがたまる」(2級,ロービジョン) 「Google,Yahoo等の閲覧ソフトは見にくいので,マイブック,MyNews,サーチエイドのような,視覚障害者に使いやすい,橋渡し的なソフト開発の拡充に期待する」(1級,ロービジョン) 「Internet Explorerが白黒反転してしまうとホームページ上の画像が表示されないこと。またボタンが表示されないこと」(2級,ロービジョン) 「ハイコントラスト時にブラウザで黒色に潰れてしまうボタンや文字がある」(2級,ロービジョン) ・画面構成が理解しづらい 「音声読みあげソフトを使っても,ほとんどのホームページが理解しにくい。効率的に読み上げてくれるソフトの開発と,読み上げやすい画面にするために,ある程度統一するような規則でもできれば良いと思う」(1級,全盲) Web閲覧・検索時以外の問題点は,読み上げの不具合(全盲:31人,ロービジョン:12人),画面が見づらい(全盲:4人,ロービジョン:12人),操作できない(全盲:11人,ロービジョン:4人),OSやアプリケーションごとの問題(全盲:10人,ロービジョン:4人),その他の問題(全盲:7人,ロービジョン:4人)である(図3-6-17)。以下で,問題の内容と回答者からの言葉を見てみよう。 ・読み上げの不具合 読み上げの不具合の中で最も多かったのは,Web同様に,音声化されないアプリケーション・画像・設定項目の存在であった(全盲:13人,ロービジョン:6人)。フリーズ時に音声が出ない問題も深刻である(全盲:9人,ロービジョン:3人)。 「ソフトウェアによっては音声読み上げソフトに対応しておらず,使えないものがある」(1級,全盲) 「音声で読まないダイアログボックス,画像,Wordの中の表が読みにくい」(1級,全盲) 「トラブルが起きたときに,PCの問題か視覚障害者特有の問題かが読み上げが止まった瞬間から判別できず,ヘルプデスクに問い合わせるにしてもどのソフトのヘルプに頼って良いか分からない」(1級,ロービジョン) 「プログラムが正常に動作していなかったり,フリーズをしていたりする,いわゆる不具合が起きているときほど読み上げをしてくれなくなるので,何が起きているのかを知ることができず,したがって何をすればいいのかの判断に困ります。結局そのようなときは故障をさせるのを覚悟で強制終了をしたり,電源ボタンを長押しして電源そのものを落としたりということを実行するか,晴眼者の援助を待つことになります」(1級,全盲) 音声そのものについては「音声が違ったところを読んでいる」,「正しい読み方をしない」,「タイムラグが長い」,「音声は遅い」などの問題が指摘された。 ・画面・文字が見づらい 「拡大しても見えないくらい小さい字や,淡い色の字は使ってほしくない」(2級,ロービジョン) 「Windows 7はアイコンを拡大しますが,文字を大きくしてほしい。アイコンを大きくするとせっかく白黒反転しても眩しく感じます」(1級,ロービジョン) 「邪魔なポップアップが多く拡大部分が隠れてしまう」(2級,ロービジョン) 「マウスポインターが見にくい」(2級,ロービジョン) ・操作できない 「キーボードから操作できないアプリケーションがある」(1級,全盲) 「キーボードの入力が大変」(1級,全盲) 「漢字の読み方が違った時に文章の意味を間違えてとらえてしまう」(4級,ロービジョン) 「OSや各種ソフトのバージョンアップで,基本的な設計からコロッと変わることがあり,その都度に操作の仕方を習得するのに苦労している」(1級,全盲) ・OSやアプリケーションごとの問題 「Office 2010以降,マウス操作のみのコマンドが増えて,使い難くなった」(1級,全盲) 「Adobe Readerのupdateが音声対応していないので実行できない」(1級,全盲) 「スクリーンリーダとキーボードで操作できるセキュリティソフトがない」(1級,全盲) ・その他 「有料サイトを自動的に表示しない設定がほしい」(1級,全盲) 2007年の調査においても,読み上げないWebコンテンツやアプリケーション,操作できない項目,フリーズ時に音声が出なくて困ることなど,パソコン利用上の問題については変化がない。つまり,アクセシビリティが向上しているとは言いがたい。ここに新たな問題として,画像認証が浮上している。 7. 望まれる機能 視覚障害を補償するためにパソコンに望まれる機能やソフトウェアとして,全盲者から128件,ロービジョン者から59件の具体的な回答を得た。全盲のパソコン利用者1人当たりの回答件数は0.70件となり,ロービジョン者の0.55件と比べて高く,全盲者はロービジョン者より多くの要望を挙げたと言える。類似した要望を全盲者とロービジョン者各群で計数し,回答者数5人以上の要望をグラフに表したのが図3-6-19である。 図3-6-19 パソコンに望まれる機能 全盲 n=184 ロービジョン n=108 読み上げ機能の向上 全盲37人(20.1 %) ロービジョン9人(8.3 %) Web検索・閲覧を可能・簡単に 全盲26人(14.1 %) ロービジョン11人(10.2 %) 文字認識 全盲16人(8.7 %) ロービジョン2人(1.9 %) スクリーンリーダの標準装備 全盲11人(6.0 %) ロービジョン4人(3.7 %) 音声入力 全盲8人(4.3 %) ロービジョン6人(5.6 %) 視覚補助機能の向上 全盲2人(1.1 %) ロービジョン11人(10.2 %) キーボード操作の保障 全盲6人(3.3 %) ロービジョン1人(0.9 %) 入力用ハードウェアへの要望 全盲3人(1.6 %) ロービジョン3人(2.8 %) 様々な新機能 全盲5人(2.7 %) ロービジョン5人(4.6 %) 図3-6-20 Web閲覧・検索に対する要望 全盲 n=26 ロービジョン n=11 検索・閲覧を容易に 全盲11人(42.3 %) ロービジョン3人(27.3 %) すべての画像の読み上げ 全盲6人(23.1 %) ロービジョン2人(18.2 %) キーボード操作の保障 全盲3人(11.5 %) ロービジョン1人(9.1 %) 反転表示の改善 全盲0人 ロービジョン4人(36.4 %) 画像認証への対応 全盲4人(15.4 %) ロービジョン0人 アクセシビリティ全般の改善 全盲2人(7.7 %) ロービジョン1人(9.1 %) 読み上げ機能の向上に対する要望が最も多かった(全盲:37人,ロービジョン:9人)。その内容は,スクリーンリーダがすべての項目を読み上げること(できない14人,できる5人),PDFを読み上げられること(できない8人,できる1人),個別アプリケーションへの読み上げ対応(できない15人,できる3人)に分類された。 ・スクリーンリーダによるすべての項目の読み上げ 「細部まで全ての操作項目を音声で読み上げてほしい」(1級,全盲) 「どんなサイトやアプリケーションでも読み上げが可能なスクリーンリーダの開発」(1級,全盲) 「もう少し高機能な日本語ナレーターを付けてほしい。音声読み上げソフトがイマイチ使いづらい。ある程度マウスが使える弱視者についても考えてほしい」(1級,ロービジョン) ・個別アプリケーションへの読み上げ要望 Microsoft Office,特にExcelの読み上げへの要望が多かった。そのほかに個別に挙げられたソフトウェアは,一般用経理事務ソフト,旧漢字・中国語漢字・経文漢字,梵字,お経音符,楽譜,外字記入,専門的な辞書(仏教辞書,密教辞典,梵字,真言辞典),確定申告に使える音声対応の会計ソフト,グラフ作成,統計,論文検索,電子ブック読み上げ,電子書籍,容易に使える音声/画像/動画編集(サウンドフォージなど),英語の翻訳ソフト,セキュリティーソフト(概ね回答のまま)。 Web検索・閲覧を可能・簡単にしてほしい(全盲:26人,ロービジョン:11人)という要望の内容を更に分類したのが図3-6-20である。指摘者数が多かった順に問題点を並べると,検索・閲覧を容易にしてほしい(全盲:11人,ロービジョン:3人),すべての画像の読み上げ(全盲:6人,ロービジョン:2人),キーボード操作の保障(全盲:3人,ロービジョン:1人),反転表示の改善(全盲:0人,ロービジョン:4人),画像認証への対応(全盲:4人,ロービジョン:0人),アクセシビリティ全般の改善(全盲:2人,ロービジョン:1人)となる。いずれも,Web閲覧・検索時の問題点(図3-6-18)に対応している。 ・文字認識 手書き文字の認識,画像や写真中の自動認識など,現在の印刷文書のOCRよりも高度な機能が求められていた。 「手書き文字が読める時が早く来るといいですね(古い戸籍謄本読めないものね,達筆で!)」(2級,全盲) 「画像の中にあるテキスト部分を取り出して読めるとうれしい」(1級,全盲) ・スクリーンリーダの標準装備 iPhone,iPadにVoiceOverが標準装備されていることに触発され,Windowsにもスクリーンリーダの標準装備が求められた。実際にはWindowsにはナレーターというスクリーンリーダが標準装備されているが,まだ実用的に使用している人は少ない模様である。 「OS標準のナレーター機能が向上し,スクリーンリーダが不要になればありがたい。AppleのVoiceOverはフリーズがほとんどないことを考えると,パソコンにおいてもMicrosoftのスクリーンリーダであればフリーズすることはないと思う」(1級,全盲) 「iPhoneやiPadのようにWindows本体に音声読み上げソフトを組み込んでもらえるとパソコンを買い換える度にスクリーンリーダの買い替えやバージョンアップをする必要がなくなり,安心してパソコンを買い換えることができると思う」(1級,全盲) 「Windows標準でOfficeなどが操作できるスクリーンリーダを装備してほしい」(1級,全盲) ・音声入力 これも,iPhone,iPadのSiriに触発された要望と思われる。 「iPhoneのSiriのような音声機能があるといいです」(2級,全盲) 「音声入力による全般的操作ソフト」(1級,全盲) 「音声を確実に文字化できるソフト」(2級,全盲) ・視覚補助機能の向上 OSに標準搭載の拡大,反転表示機能の向上が望まれている。 「Windows 7付属の拡大鏡はハイコントラストなどWindowsクラッシックのテーマで使用するとピンボケ状態になります。きれいに拡大表示する拡大鏡ソフトを付属して欲しい」(2級,ロービジョン) 「字の大きさだけでなく太さを変更できたら,もっと見やすくなる」(2級,ロービジョン) ・キーボード操作の保障 「Windows 8などは,ますますタッチ画面操作らしいのですが,キー操作で利用しなければいけない人がいることを忘れないでほしいです」(2級,全盲) 「マウス操作しかできないソフトウエアの廃止,必ずキーボード操作でも操作可能にしていただきたい(法律の制定)」(1級,全盲) ・入力用ハードウェアへの要望 技術的に興味深い提案と,切実な思いを紹介する。 「弱視の場合,大きな画面を例えばシート状にして折りたたんで携帯できたら便利だと思う」(2級,ロービジョン) 「私たち視覚障がい者も,マウスを使えるようになりたいです。あるいは,マウスを使うのと同程度の快適さでパソコンが使えたら良いな!と思います」(1級,全盲) ・様々な新機能 スマートフォンやタブレットと同様な機能(ナビゲーション,ラジオ,テレビ,電子書籍など)への要望が見られた。パソコンでの作業特有としては,文書の書式・レイアウトを自動で整える機能への要望が見られた。 「自動で書式を整えてくれる機能があれば良い」(2級,ロービジョン) 「レイアウトを綺麗にしたり,見やすい文章を作成するためのサポート機能を,もっと充実させてほしいです」(1級,全盲) 図3-6-19に表示していない5人未満からの要望を紹介する。 ・タッチ操作 「画面のタッチで読み上げ部分が選択できるアプリがあれば利用したい」(3級,ロービジョン) 「タッチ操作の音声ガイドソフトが開発されたら良いと思う」(2級,ロービジョン) ・視覚障害者支援体制 「視覚障碍者向け遠隔サポート」(1級,全盲) 「視覚障碍者が購入する場合の不要なソフト(音声対応してないソフト)をメーカーや販売店が処理してくれるようにならないか?」(1級,全盲) 「「視覚障害者の方へ」というアプリがあって それとクリックすると視覚障害者に特化した補助機能が起動するもの」(2級,ロービジョン) ・費用 バージョンアップも日常生活用具給付に含めてほしい。(1級,全盲) ・インタフェース 「選び出す方式ではなくて,尋ねられたら,機械が選んで回答するアシスタント機能」(1級,ロービジョン) 第4章 まとめ 調査結果は多岐にわたり,情報量も多いため短くまとめることは難しい。ここでは,今回の調査の主眼であったスマートフォンとタブレットの利点と問題点について,まず取りまとめる。次に,従来から利用されてきた携帯電話とパソコンについて,利用上の問題点と要望をまとめる。最後に,視覚障害者のICT利用環境について今後の課題を示す。 1. スマートフォンとタブレットの利点 スマートフォンとタブレットの利用により視覚障害者の生活が便利になった点は,地図・ナビゲーション・乗り換えなどの空間地理情報を得やすくなったこと,Webを閲覧しやすくなったこと,物体認識,音声入力,拡大表示が実用的に使えるようになったことである。 逆に両機器の問題点は,文字入力のしづらさ,タッチ操作のしづらさ,画面の見づらさ,読み上げの不具合である。 利点,問題点ともに,全盲者とロービジョン者の間で大きな差異がある点に注意が必要である。 スマートフォンとタブレットで新しい機能が実現されたために,携帯電話とパソコンに新たな要望が喚起されたことは興味深い。同じモバイル機器である携帯電話に対しては,ナビゲーション機能,物体認識,音声入力への要望が高まった。パソコンに対しては音声入力とスクリーンリーダの標準装備への要望が新たに寄せられた。 2. Webアクセシビリティ,読み上げ機能の向上 従来から利用されてきた携帯電話とパソコンいずれの機器においても,その最大の問題はWebアクセシビリティの不足と音声読み上げ(パソコンにおいてはスクリーンリーダ)の不具合である。この二つの問題は2007年調査のときから変わっていないばかりか,ICT機器の利用目的がWeb閲覧に集中していく中でますます大きくなったという印象を,調査結果を集計している中で感じた。スクリーンリーダの読み上げ機能向上で解決できる部分もあろうが,この方法は必ず問題の後追いとなってしまう。何人かの回答者が記述しているとおり,法律によるWebアクセシビリティの保障が必要と思われる。 3. 今後の課題 視覚障害者の情報アクセス環境改善のために行うべき今後の課題は,ここまでに挙げられた問題すべてである。そのうち,本報告書の著者は文字入力インタフェースの改善に貢献をしたいと考えている。また,従来の携帯電話・パソコンの利用からスマートフォン・タブレットの利用へと現在は過渡期にあると言える。その変化は激しいため,正確な状況把握のために,利用状況調査を1年から2年ごとに実施する必要があると考えている。 謝辞 この調査研究は,平成24年度電気通信普及財団研究調査助成の支援により実施しました。その資金援助なしには全く実施し得ませんでした。助成に対して深く感謝の意を表します。 調査を実施して下さったNPO法人タートル,調査へご回答頂いた皆様,調査成果報告会で特別講演を引き受けて頂いた井上浩一様と南谷和範様,データ集計と報告書の作成を手伝って頂いた加賀大嗣様と肥田野裕子様,特に加賀様には数ヶ月にわたるデータ集計作業にに根気強く,緻密さを持って携わって戴きました。ここにお名前を挙げた皆様方に深く感謝いたします。 この報告書がきっかけで視覚障害者のICT利用環境が少しでも(できるだけ多く)改善されることを願って止みません。 <扉紙> 付録 Appendices 付録には,次の四つの資料を掲載した。 1.成果報告会 2.調査票配布先一覧 3.調査票 4.スマートフォン・タブレットのアクセシビリティ 1.成果報告会 視覚障害のある当事者,その支援者(施設職員,ボランティア等),アクセシビリティに関心のある研究者などに調査結果を広く伝えるため,公開講座形式の成果報告会を開催した。報告会は,本調査と同じく電気通信普及財団から助成を受けた南谷和範氏の研究と合同で開催した。 報告会では,調査結果のほかに,視覚障害者によるスマートフォンの利用の様子を井上浩一氏と南谷和範氏の2人に実演してもらった。スマートフォンの特徴(カメラ,通信機能,GPSなど)を活かして視覚障害者の生活に役立っている機能のうち,光検出,物体認識,位置情報表示などが実演され,聴講者の関心を惹いた。更に,実演者による文字入力の速さに驚嘆の声が上がった。他方で,音声が聞き取りづらいなどのスマートフォンの問題点についても話題は及んだ。 南谷氏と秡川氏は,新たに開発した腕時計型点字ディスプレイを紹介し,どんな場面でこれが便利であるかをビデオクリップを用いて説明した。ほかに,視覚障害者の情報アクセスに関する研究を行っている渡辺研究室の研究成果を,各研究を推進している学生たちが紹介した。 報告会には,視覚障害者を含む39人の一般参加者を得た。開催者(講演者等)10人を加えると総参加者数は49人となった。 図5-1-1 講演と聴講の様子 図5-1-2 光検出機能を実演する井上氏 図5-1-3 物体認識を実演する南谷氏(右手には腕時計型点字ディスプレイを装着している) 図5-1-4 学生による研究成果紹介 <電気通信普及財団調査研究助成開催要項> 「視覚障害者の携帯電話・スマートフォン・タブレット・パソコン利用状況調査2013」並びに「視覚障害者のセーフ・モバイル・アクセスを実現する腕時計型点字ディスプレイの開発」 成果報告会 日時: 平成26年3月15日(土)10:00〜16:30 会場: キャンパスイノベーションセンター東京 2階 多目的室2・3 参加費: 無料 プログラム ◆視覚障害者のICT利用状況結果の報告 10:00-10:30 スマホの利用状況(渡辺 哲也) 10:30-11:00 タブレットの利用状況(渡辺 哲也) 11:00-11:30 スマホでこんなことしています(iPhone編)(井上 浩一) 11:30-12:00 スマホでこんなことしています(Android編)(南谷 和範) 12:00-12:30 携帯電話の利用状況(渡辺 哲也) 12:30-13:00 パソコンの利用状況(渡辺 哲也) ◆腕時計型点字ディスプレイの開発ほかの報告 14:00-15:00 腕時計型点字ディスプレイの開発(南谷 和範・秡川 友宏) 15:00-15:30 渡辺研究室の研究成果報告(荒木 康輔,矢島 正志,相澤 文仁,橋本 孝博) 15:30-16:30 総合討論(渡辺 哲也) 2.調査票配布先一覧 NPO法人タートルから調査票を配布したメーリングリスト・団体等の一覧を下に示す。 1. NPO法人 タートル 2. 社会福祉法人 日本盲人職能開発センター 3. 筑波技術大学 4. 社会福祉法人 日本ライトハウス 5. NPO法人 視覚障害者パソコンアシストネットワーク(SPAN) 6. 弱視問題研究会 7. ITネットワークアシストたかおか 8. ビューネット神奈川 9. RPひろば(JRPS関係ML) 10. ゆいまーる(視覚障害を持つ医療従事者の会ML) 11. タートル関西 12. 中部盲導犬協会 13. 名古屋市視覚障害者協会 14. 名古屋盲人情報文化センター 15. 名古屋市総合リハビリテーションセンター 視覚支援課 16. 日本福祉大学 障害学生支援センター 17. 認定NPO法人 日本視覚障害者セーリング協会・JRPS東京支部ML 18. 東京都視覚障害者生活支援センター 19. アット・イーズの会員ML 20. ラビットクラブのML 21. 埼玉県障害者ITサポートセンター 22. 筑波大学付属盲学校同窓会 23. JRPS 神奈川ML 24. JRPS 東京ML 25. JRPS 千葉ML 26. JRPS 埼玉ML 27. アイネットML 28. いどばたML 29. 声なびシネマわかばML 30. 特定非営利活動法人 北九州市視覚障害者自立推進協会あいず 31. 北九州視覚障害者就労支援センターあいず 32. 特定非営利活動法人 Wellの会 33. 特定非営利活動法人 ふくおか視覚障害者雇用開発推進センター 34. ロービジョン研究会 アナミ 35. 中途失明者の会 36. パソボラさーくる虹 37. 福岡県視覚障害者友好協会 福岡支部 38. JRPS 福岡支部(部会: チーム ハピネスML) 39. ガイドボランティア 風車 広報部 40. 北九州市立 介護実習・普及センター 41. 国立県営福岡障害者職業能力開発校 42. 福岡県立北九州視覚特別支援学校 43. 福岡市障害者就労支援センター 44. パソコンボランティアプラザ登別 45. 特定非営利活動法人 札幌チャレンジド 46. 苫小牧パソコンサポート 47. 鶴見区視覚障害者協会 3.調査票 ■調査票の構成と回答方法  質問は大きく七つのパートに分かれています。その内容は以下の通りです。 パート0.住所、氏名、アドレス パート1.回答者のプロフィール パート2.携帯電話、スマートフォン、タブレット、パソコンの利用状況(全般) パート3.携帯電話の利用状況について パート4.スマートフォンの利用状況について パート5.タブレットの利用状況について パート6.パソコンの利用状況について パート0からパート2はすべての方にお答えいただきます。パート3からパート6の質問項目は、それぞれの機器をお使いの方だけにお答えいただきます。 回答方法には選択方式と記入方式があります。選択方式には、選択肢を一つだけ選ぶ単一選択の場合と、二つ以上選んでもよい複数選択可の場合があります。いずれの場合も、あてはまる選択肢の前に@(アットマーク。キーボード上ではローマ字のPあるいは仮名の「せ」の右にあります)を記入して下さい。記入方式の質問では、質問の次の行に回答をご記入下さい。選択肢を選んだ上で記入する方式の質問もありますので、忘れずにご記入下さい。各質問のうしろに、回答方法を記しています。 ■質問項目 パート0.住所、氏名、アドレス パート0の回答は、謝品の送付と報告書の案内のみに用います。その情報はNPO法人タートルが保管します。調査依頼者である新潟大学には送られません。この情報は、調査期間が終了した時点(平成26年3月末)で破棄します。 0-1. 郵便番号と住所をお書き下さい。住所は、謝品の送付にのみ用います。(記入方式) 回答欄: 0-2. お名前(氏名)をお書き下さい。お名前の情報は、謝品の送付にのみ用います。(記入方式) 回答欄: 0-3. メールアドレスをお書き下さい。アドレスは、回答について問い合わせをする場合と、報告書の案内を送る場合などに使います。(記入方式) 回答欄: 以上でパート0を終わります。次はパート1です。 パート1.プロフィール あなたご自身について伺います。 1-1. 性別.(単一選択) ア.男 イ.女 1-2. 年齢.(記入方式) 歳 1-3. 障害等級をお答え下さい。身体障害者手帳をおもちでないかたは、なし、とお答え下さい。(記入方式) 級 1-4. 視覚を使って文字の読み書きができますか?(単一選択) ア.できる イ.できない 以上でパート1を終わります。次はパート2です。 パート2.携帯電話、スマートフォン、タブレット、パソコンの利用状況 2-1. 携帯電話、スマートフォン、タブレット、パソコンのうち、ご自宅や職場、学校などでお使いになっているものに印をお付け下さい。(複数選択可) 皆様がお持ちの機器が、携帯電話、スマートフォン、タブレット、パソコンのどれに当たるかについて、この調査における分類方法を説明します。 この調査において「携帯電話」とは、物理的なテンキーパッドを標準で備えた(たいていは二つ折りの)従来型の携帯電話を指します。「ガラケー(ガラパゴスケータイの略)」などとも呼ばれます。例えば、らくらくホン7は「携帯電話」となります。 「スマートフォン」は、タッチスクリーンを備えた片手サイズの機器で、通話ができるものとします。アップル社のiPhoneが代表的です。そのほかに基本ソフトがAndroidの製品(HTC J、GALAXY)が数社から販売されています。タッチスクリーンとテンキーパッドの両方を備えた機種もあります(IS15SH)。この機種はスマートフォンに分類して下さい。 「タブレット」は、スマートフォンを大きくした形をしており、スマートフォンと同様にタッチスクリーン上で操作します。基本的には、携帯電話回線を使った通話は行いません。タブレット分野でもアップル社のiPadやiPad miniが代表的です。そのほかに基本ソフトがAndroidのものとしてdtab、Nexusなどがあります。更に、電子書籍リーダーとしての機能が主目的のタブレット(アマゾン社のキンドル, ソニー・リーダー)もあります。 キーボードとマウス(タッチパッド)による操作が主体の機器を「パソコン」とします。ノートパソコンの中には、画面部分を切り離してタブレットとして使えるものもありますが、これは「パソコン」に分類して下さい。 2-1. 以上の分類にもとづいて、現在お使いになっている機器に印をお付け下さい。(複数選択可) ア.携帯電話 イ.スマートフォン ウ.タブレット エ.パソコン 2-2-1. 上の質問でスマートフォンまたはタブレットを使っていると答えた方に伺います。スマートフォンまたはタブレットを使い始めた理由をお書き下さい。複数の理由をお書き下さっても結構です。特に理由がない場合は「なし」とお書き下さい。(記入方式) 回答欄: 2-2-1の質問への回答後は、2-2-2の質問を飛ばして、2-3の質問へお進み下さい。 2-2-2. 上の質問でスマートフォンとタブレットのどちらも使っていないと答えた方に伺います。スマートフォンとタブレットのどちらも使っていない理由をお書き下さい。複数の理由をお書き下さっても結構です。特に理由がない場合は「なし」とお書き下さい。(記入方式) 回答欄: 2-3. スマートフォンまたはタブレットのご使用の有無にかかわらず、全員に伺います。携帯電話の新機種のほとんどがスマートフォンである状況について望ましいと思うかどうかの意見を下の選択肢からお選び下さい。また、その理由があれば記述して下さい。(単一選択。記述あり) ア.望ましい イ.どちらかというと望ましい ウ.どちらとも言えない エ.どちらかというと望ましくない オ.望ましくない 上のように感じる理由がありましたらお書き下さい。 回答欄: 以上でパート2を終わります。次はパート3です。 パート3.携帯電話の利用状況について 3の質問項目は、携帯電話をご利用の方に伺います。 3-1. 利用している携帯電話の製品名をお答え下さい。複数の携帯電話をお使いになっている場合は、利用している時間が長い順に製品名をすべてお書き下さい。(記入方式).(例. らくらくホン7) 回答欄: 3-2.  携帯電話の利用を補助する機能のうち、お使いになっているものを選択肢から選び、該当する項目に印をつけるか、あるいは具体的にご記入下さい。お使いになっている機能が複数ある場合は、複数の項目に印をお付け下さい。(複数選択可。記入あり) ア.音声読み上げ イ.文字サイズの拡大 ウ.色設定の変更 エ.その他.(具体的にご記入下さい) 回答欄: 3-3.  携帯電話の機能や用途のうち、お使いのものを選択肢から選び、該当する項目に印をつけて下さい。もし機能やアプリの名前がお分かりでしたら、各機能/用途のうしろの括弧の中にお書き下さい。(複数選択可。記入あり) 通話 メール ブラウザ/インターネット閲覧/検索(   ) 写真撮影・閲覧(   ) 動画撮影・視聴(   ) ワンセグ.(テレビを見る)(   ) ラジオを聴く(   ) 音楽を聴く(   ) 電子書籍(   ) GPS/地図(   ) 路線/乗換(   ) 銀行/証券(   ) SNS.(ミクシィ、フェイスブック、ツイッター、ラインなど)(   ) ゲーム(   ) 時計.(アラーム、タイマーを含む)(   ) スケジュール.(カレンダー、予定表を含む)(   ) アドレス帳(   ) 天気(   ) 電卓(   ) 歩数計(   ) メモ(   ) QRコードの読み取り(   ) おサイフケータイ Bluetooth通信 赤外線通信 その他.(具体的にご記入下さい) 回答欄: 3-4. 携帯電話からしばしばご覧になるWebサイト/ホームページがあれば、サイト/ページ名、会社/団体名、キーワードなどを、お分かりの範囲で教えて下さい。複数のWebサイト/ホームページをお書き下さっても結構です。特にない場合は、「なし」とお書き下さい。(記入方式) 回答欄: 3-5. 視覚障害が理由で携帯電話を使いづらいことがありましたら、その問題の内容を具体的にお書き下さい。複数の問題をお書き下さっても結構です。特にない場合は、「なし」とお書き下さい。(記入方式) 回答欄: 3-6. 視覚障害を補償するために携帯電話に望まれる機能がありましたらお書き下さい。複数の機能をお書き下さっても結構です。特にない場合は、「なし」とお書き下さい。(記入方式) 回答欄: 以上でパート3を終わります。次はパート4です。 パート4.スマートフォンの利用状況について 4の質問項目は、スマートフォンをご利用の方に伺います。 4-1. お使いになっているスマートフォンの製品名をお答え下さい。複数のスマートフォンをお使いになっている場合は、利用している時間が長い順に製品名をすべてお書き下さい。(記入方式).(例. iPhone 5、HTC J、GALAXY). 回答欄: 4-2. スマートフォンの利用を補助する機能のうち、お使いになっているものを選択肢から選び、該当する項目に印をつけるか、あるいは具体的にご記入下さい。お使いになっている機能が複数ある場合は、複数の項目に印をお付け下さい。(複数選択可。記入あり) ア.音声読み上げ.(例. VoiceOver, TalkBackなど) イ.画面拡大.(例. ズーム機能、など) ウ.色設定の変更/反転表示.(例. 黒地に白、など) エ.文字サイズの拡大.(例. テキストを大きな文字で表示、など) オ.その他.(具体的にご記入下さい) 回答欄: 4-3. スマートフォンではどのように文字を入力していますか? お使いになっている入力方法を選択肢から選んで印をつけて下さい。(複数選択可。記入あり) ア.スクリーン上の50音表キーボード イ.スクリーン上のローマ字キーボードによるローマ字漢字入力 ウ.フリック入力.(例えば「あ」のボタンに触れている指を左にフリックさせると「い」、上にフリックさせると「う」が入力されるような方式です) エ.テンキー方式.(例えば「あ」のボタンを2回タップすると「い」、3回タップすると「う」が入力されるような方式です。音声出力をオンにしている場合は、「あ」のボタンを1本の指で触れたまま、別の指で画面を1度タップすると「い」、2度タップすると「う」が入力されるような方式です) オ.外付けキーボードによる入力.(製品名がお分かりでしたら、この行のうしろにご記入下さい) カ.音声入力 キ.手書き入力 4-4. スマートフォンの機能や用途、アプリのうち、お使いになっているものを選択肢から選んで印をつけて下さい。機能やアプリの名前がお分かりでしたら、各機能/用途のうしろの括弧の中にお書き下さい。(複数選択可。記入あり) 通話 メール ブラウザ/インターネット閲覧/検索(   ) 写真撮影・閲覧(   ) 動画撮影・視聴(   ) ワンセグ.(テレビを見る)(   ) ラジオを聴く(   ) 音楽を聴く(   ) 電子書籍(   ) GPS/地図(   ) 路線/乗換(   ) 銀行/証券(   ) SNS.(ミクシィ、フェイスブック、ツイッター、ラインなど)(   ) ゲーム(   ) 時計.(アラーム、タイマーを含む)(   ) スケジュール.(カレンダー、予定表を含む)(   ) アドレス帳(   ) 天気(   ) 電卓(   ) 歩数計(   ) メモ(   ) QRコードの読み取り(   ) おサイフケータイ Bluetooth通信 赤外線通信 その他.(具体的にご記入下さい) 回答欄: 4-5. スマートフォンからしばしばご覧になるWebサイト/ホームページがあれば、サイト/ページ名、会社/団体名、キーワードなどを、お分かりの範囲で教えて下さい。複数のWebサイト/ホームページをお書き下さっても結構です。特にない場合は、「なし」とお書き下さい。(記入方式) 回答欄: 4-6-1. 従来の携帯電話と比べたスマートフォンの利便性について伺います。下の選択肢から当てはまるものを選んで印をお付け下さい(アとウの複数選択可)。 ア.従来の携帯電話よりも便利な点がある イ.使い勝手は従来の携帯電話と変わらない ウ.従来の携帯電話よりも使いにくい点がある 4-6-2. 4-6-1で「ア」と答えた方に伺います。従来の携帯電話よりも便利だと感じる点について具体的にお書き下さい。複数の事例をお書き下さっても結構です。 例:どんな場面で、どんなアプリや機能を、どのように使ったら、こんなことができた、など。 回答欄: 4-6-3. 4-6-1で「ウ」と答えた方に伺います。従来の携帯電話よりも使いにくいと感じる点について具体的にお書き下さい。複数の事例をお書き下さっても結構です。 例:どんな場面で、どんなアプリや機能を、どのように使おうとしたら、できなかった、あるいは使いづらかった、など。 回答欄: 4-7. スマートフォンの使い方をどのように学習しましたか? 下の選択肢から当てはまるものを選んで印をお付け下さい。(複数選択可。記入あり) ア.インターネットで情報を集めた.(質問サイトなどを使った場合は、そのサイトを教えて下さい) イ.メーリングリストで情報を集めた.(差し支えなければメーリングリストの名称を教えて下さい) ウ.メーカー/販売店が開催する講習会で学習した.(差し支えなければメーカー/販売店や講習会の名称などを教えて下さい) エ.視覚障害者支援者/団体が開催する講習会/研修コースで学習した.(差し支えなければ講習会/研修コースの名称などを教えて下さい) オ.ボランティアに教わった カ.職場の同僚に教わった キ.友人・知人に教わった ク.家族に教わった ケ.その他.(具体的にご記入下さい) 4-8. 視覚障害が理由でスマートフォンを使いづらいことがありましたら、その問題の内容を具体的にお書き下さい。複数の問題をお書き下さっても結構です。特にない場合は、「なし」とお書き下さい。(記入方式) 回答欄: 4-9. 視覚障害を補償するためにスマートフォンに望まれる機能やアプリがありましたらお書き下さい。複数の機能やアプリをお書き下さっても結構です。特にない場合は、「なし」とお書き下さい。(記入方式) 回答欄: 以上でパート4を終わります。次はパート5です。 パート5.タブレットの利用状況について  5の質問項目は、タブレットをご利用の方に伺います。 5-1. 利用しているタブレットの製品名をお答え下さい。複数のタブレットをお使いになっている場合は、利用している時間が長い順に製品名をすべてお書き下さい。(記入方式).(例. iPad、dtab、Nexus). 回答欄: 5-2. タブレットの利用を補助する機能のうち、お使いになっているものを選択肢から選び、該当する項目に印をつけるか、あるいは具体的にご記入下さい。お使いになっている機能が複数ある場合は、複数の項目に印をお付け下さい。 ア.音声読み上げ.(例. VoiceOver, TalkBackなど) イ.画面拡大.(例. ズーム機能、など) ウ.色設定の変更/反転表示.(例. 黒地に白、など) エ.文字サイズの拡大.(例. テキストを大きな文字で表示、など) オ.その他(その他の場合は具体的にご記入下さい) 5-3. タブレットではどのように文字を入力していますか? お使いになっている入力方法を選択肢から選んで印をつけて下さい。(複数選択可。記入あり) ア.スクリーン上の50音表キーボード イ.スクリーン上のローマ字キーボードによるローマ字漢字入力 ウ.フリック入力.(例えば「あ」のボタンに触れている指を左にフリックさせると「い」、上にフリックさせると「う」が入力されるような方式です) エ.テンキー方式.(例えば「あ」のボタンを2回タップすると「い」、3回タップすると「う」が入力されるような方式です。音声出力をオンにしている場合は、「あ」のボタンを1本の指で触れたまま、別の指で画面を1度タップすると「い」、2度タップすると「う」が入力されるような方式です) オ.外付けキーボードによる入力.(製品名がお分かりでしたら、この行のうしろにご記入下さい) カ.音声入力 キ.手書き入力 5-4. タブレットの機能や用途、アプリのうち、お使いになっているものを選択肢から選んで印をつけて下さい。機能やアプリの名前がお分かりでしたら、各機能/用途のうしろの括弧の中にお書き下さい。(複数選択可。記入あり) 通話 メール ブラウザ/インターネット閲覧/検索(   ) 写真撮影・閲覧(   ) 動画撮影・視聴(   ) ワンセグ.(テレビを見る)(   ) ラジオを聴く(   ) 音楽を聴く(   ) 電子書籍(   ) GPS/地図(   ) 路線/乗換(   ) 銀行/証券(   ) SNS.(ミクシィ、フェイスブック、ツイッター、ラインなど)(   ) ゲーム(   ) 時計.(アラーム、タイマーを含む)(   ) スケジュール.(カレンダー、予定表を含む)(   ) アドレス帳(   ) 天気(   ) 電卓(   ) 歩数計(   ) メモ(   ) QRコードの読み取り(   ) おサイフケータイ Bluetooth通信 赤外線通信 その他.(具体的にご記入下さい) 回答欄: 5-5. タブレットからしばしばご覧になるWebサイト/ホームページがあれば、サイト/ページ名、会社/団体名、キーワードなどを、お分かりの範囲で教えて下さい。複数のWebサイト/ホームページをお書き下さっても結構です。特にない場合は、「なし」とお書き下さい。(記入方式) 回答欄: 5-6. タブレットを用いることで、初めてできるようになったことがありましたら、具体的に教えて下さい。複数の事例をお書き下さっても結構です。特にない場合は、「なし」とお書き下さい。(記入方式) 例:どんな場面で、どんなアプリや機能を、どのように使ったら、こんなことができた、など。 回答欄: 5-7. タブレットに期待したができなかった、あるいは使いづらかったということがありましたら、具体的に教えて下さい。複数の事例をお書き下さっても結構です。特にない場合は、「なし」とお書き下さい(記入方式)。 例:どんな場面で、どんなアプリや機能を、どのように使おうとしたら、できなかった、あるいは使いづらかった、など。 回答欄: 5-8. タブレットの使い方をどのように学習しましたか? 下の選択肢から当てはまるものを選んで印をお付け下さい。(複数選択可。記入あり) ア.インターネットで情報を集めた(質問サイトなどを使った場合は、そのサイトを教えて下さい) イ.メーリングリストで情報を集めた(差し支えなければメーリングリストの名称を教えて下さい) ウ.メーカー/販売店が開催する講習会で学習した.(差し支えなければメーカー/販売店や講習会の名称などを教えて下さい) エ.視覚障害者支援者/団体が開催する講習会/研修コースで学習した.(差し支えなければ講習会/研修コースの名称などを教えて下さい) オ.ボランティアに教わった カ.職場の同僚に教わった キ.友人・知人に教わった ク.家族に教わった ケ.その他.(具体的にご記入下さい) 5-9. 視覚障害が理由でタブレットを使いづらいことがありましたら、その問題の内容を具体的にお書き下さい。複数の問題をお書き下さっても結構です。特にない場合は、「なし」とお書き下さい。(記入方式) 回答欄: 5-10. 視覚障害を補償するためにタブレットに望まれる機能やアプリがありましたらお書き下さい。複数の機能やアプリをお書き下さっても結構です。特にない場合は、「なし」とお書き下さい。(記入方式) 回答欄: 以上でパート5を終わります。次はパート6です。 パート6.パソコンの利用状況について 6の質問項目は、パソコンをご利用の方に伺います。 6-1. 利用しているパソコンのOS(基本ソフト)をお答えください。利用しているパソコンが複数台ある場合は、利用している時間が長い順にその基本ソフトをすべてお書き下さい。お分かりのかたは基本ソフトのバージョンもお答えください。(例:Windows セブン, Mac OS テン)(記入方式) 回答欄: 6-2. スクリーンリーダソフトをお使いの方は、その名称をお答え下さい。複数のスクリーンリーダ/音声出力機能をお使いの方は、使用頻度の高い順にすべてお書き下さい。お使いでない場合は、「なし」とお書き下さい。(例. PC-Talker).(記入方式) 回答欄: 6-3. 画面拡大ソフトをお使いの方は、その名称をお答え下さい。お使いでない場合は、「なし」とお書き下さい。(例. ZoomText).(記入方式) 回答欄: 6-4. 音声を出力したり、画面の見え方を改善したりするため、OS(基本ソフト)に標準搭載のユーティリティ(Windows XPでは「ユーザー補助」、Windows ビスタ, セブン, エイトでは「コンピューターの簡単操作センター」、Mac OSでは「アクセシビリティ」)をお使いの方は、下の選択肢のうち、お使いになっている機能に印をお付け下さい。どれもお使いになっていない場合は、どの項目にも印をお付けにならなくて結構です。(複数選択可) ア.音声出力.(VoiceOver, TalkBackなど) イ.画面拡大.(拡大鏡、ズーム、など) ウ.色設定の変更/反転表示.(ハイコントラスト、黒地に白、カラーを反転、など) エ.文字サイズの設定.(テキストを大きな文字で表示、など) オ.マウスポインタの設定 カ.(文字入力時の)カーソルの設定 キ.アイコンサイズの設定 ク.画面解像度の設定 ケ.その他.(具体的にご記入下さい) 6-5. お使いになっている視覚障害者用パソコン周辺装置などを、種類別にお答え下さい。例を参考に製品名をご記入下さい。複数の機種をお使いの場合はそれらをすべてご記入下さい。使用していない項目には「なし」とお書き下さい。 6-5-1. 点字プリンタ.(例. ESA721) 回答欄: 6-5-2. 点字ディスプレイ/点字電子手帳.(例. ブレイルテンダー、ブレイルメモポケット) 回答欄: 6-5-3. 点図ディスプレイ.(例. ドットビューDV-2) 回答欄: 6-5-4. その他.(具体的にご記入下さい) 回答欄: 6-6. ご利用のアプリケーションソフトを種類別に具体的にご記入下さい。例を参考に製品名をご記入下さい。複数のソフトをお使いの場合はそれらをすべてご記入下さい。使用していない項目には「なし」とお書き下さい。 6-6-1. ウェブブラウザ/インターネットを閲覧するためのインターネット音声化ソフト(音声ブラウザ).(例. インターネットエクスプローラ10, NetReader, Safari) 回答欄: 6-6-2. 電子メールソフ.ト(例. MM-Mail, MyMail) 回答欄: 6-6-3. ワープロおよびエディタ.(例. Microsoft Word 2010) 回答欄: 6-6-4. 表計算ソフト.(例. Microsoft Excel 2010) 回答欄: 6-6-5. データベース・住所管理ソフト.(例. Microsoft Access 2003, 宛名職人) 回答欄: 6-6-6. OCRソフト.(例. e.Typist、MyRead) 回答欄: 6-6-7. 点字編集ソフト.(例. Win-BES) 回答欄: 6-6-8. 自動点訳ソフト.(例. EXTRA for Windows) 回答欄: 6-6-9. その他.(具体的にご記入下さい) 回答欄: 6-7. パソコンからしばしばご覧になるWebサイト/ホームページがあれば、サイト/ページ名、会社/団体名、キーワードなどを、お分かりの範囲で教えて下さい。複数のWebサイト/ホームページをお書き下さっても結構です。特にない場合は、「なし」とお書き下さい。(記入方式) 6-8. 視覚障害が理由でパソコンやインターネットを使いづらいことがありましたら、その問題の内容を具体的にお書き下さい。複数の問題をお書き下さっても結構です。特にない場合は、「なし」とお書き下さい。(記入方式) 回答欄: 6-9. 視覚障害を補償するためにパソコンに望まれる機能やソフトなどがありましたらお書き下さい。複数の機能やソフトなどをお書き下さっても結構です。特にない場合は、「なし」とお書き下さい。(記入方式) 回答欄:  アンケートへご協力下さり、誠にありがとうございました。 4.スマートフォン・タブレットのアクセシビリティ スマートフォン・タブレットの音声出力による操作方法と便利なアプリを紹介する。 1.操作方法 1.1.スクリーンリーダ Apple社のスマートフォンiPhoneやタブレットiPadには,スクリーンリーダVoiceOverが標準装備されている。Apple社以外のスマートフォンやタブレットのほとんどにはGoogle社のAndroid OSが搭載されている。このAndroidにも,スクリーンリーダTalkBackが標準装備されている。ただし,日本語出力のために音声合成ソフトを別途インストールする必要がある。TalkBack用の音声合成ソフトとしては,クリエートシステム開発の「ドキュメントトーカ for Android」がよく使われているようである。 1.2.アイコン等の選択 アイコン等の選択操作には2通りの方式がある。直接指示方式では,触れた位置にあるアイコンなどが選択され,読み上げが行われる。続けてダブルタップすると選択決定となる。一度画面構成を覚えてしまえば操作は容易だが,初めて使う画面ではアイコン等を順番に触って音声を聞いて,画面構成を覚える必要がある。スマートフォンのようにタッチパネルが比較的狭いとアイコン等の選択に支障はないが,タブレット端末のようにタッチパネルが比較的広いとアイコン等の選択が困難になってくる。 順次選択方式では,画面上でスワイプ(フリックともいう)することで,前後のアイコン等へ移動し,これを読み上げる。アイコン等の間を確実に移動できるが,目標とするアイコン等に到達するまで時間がかかることが多い。 1.3.文字入力 テンキー画面によるフリック入力やマルチタップ入力(同じキーを押すたびに,あ,い,う,と変化),50音キーボード画面やQWERTYキーボード画面が音声読み上げされる。漢字の詳細読み機能もある(iPhone, iPadの詳細読みには,渡辺らが開発した「田町読み」が使われている)。 2.便利アプリ 光認識,色認識,紙幣認識,拡大機能,読み上げなど,単体の機械や従来型の携帯電話で実現されてきた機能が,スマートフォンやタブレットへアプリをインストールだけで利用可能になった。インターネットとの常時接続やGPSによる位置の推定など,スマートフォンの特徴的な機能を応用した新しいアプリとしては,物体認識,屋外のナビゲーションなどがある。 ・Fleksy:打ち間違えても,「正しい」候補を賢く表示 ・Light Detector:光量を音の高低で表示 ・LookTel Money Reader:紙幣の額面金額を読み上げ ・言う吉くん:紙幣の額面金額を読み上げアプリ。財務省,日本銀行,国立印刷局が開発し,2013年12月に国立印刷局がiOS用アプリを無償でリリースした。 ・明るく大きく, VividCam:コントラスト改善,拡大 ・TapTapSee, CamFind:視覚障害者向け画像認識 ・Ariadne GPS, ドキュメントトーカボイスナビ:現在地・周囲情報・経路案内 参考資料・文献 <操作方法> iOSのアクセシビリティ: http://website-usability.info/2011/09/entry_110914.html http://www.apple.com/jp/accessibility/ios/voiceover/ Androidのアクセシビリティ: http://website-usability.info/2012/09/entry_120917.html http://www.google.co.jp/accessibility/products/ <便利アプリ・音声合成ソフト> 各アプリ名や会社名で検索するとヒットします(URLは省略します)。 <奥付> 視覚障害者の携帯電話・スマートフォン・タブレット・ パソコン利用状況調査2013 編集・発行 国立大学法人 新潟大学 工学部 福祉人間工学科 渡辺 哲也 〒850-2181 新潟市西区五十嵐2の町8050番地 TEL: 025-262-6133 FAX: 025-262-7198 URL: http://vips.eng.niigata-u.ac.jp/ 発行月 2014年6月 印刷・製本 株式会社新潟印刷 (C)渡辺 哲也 2014