[表紙] 厚生労働科学研究費補助金(障害者政策総合研究事業(身体・知的等障害分野))平成28年度~平成29年度 課題名:意思疎通が困難な人に対する人的及びICT技術による効果的な情報保障手法に関する研究 視覚障害者の人的支援サービス利用状況調査 平成30年3月 研究代表者:渡辺 哲也(新潟大学 工学部) 分担研究者:小林 真(筑波技術大学 保健科学部),南谷 和範(大学入試センター) [中表紙] 厚生労働科学研究費補助金(障害者政策総合研究事業(身体・知的等障害分野))平成28年度~平成29年度 課題名:意思疎通が困難な人に対する人的及びICT技術による効果的な情報保障手法に関する研究 視覚障害者の人的支援サービス利用状況調査 平成30年3月 研究代表者:渡辺 哲也(新潟大学 工学部) 分担研究者:小林 真(筑波技術大学 保健科学部),南谷 和範(大学入試センター) [目次] 第1章  背景と目的...1ページ 第2章  調査方法...3ページ 第3章  回答者...4ページ 第4章  代読・代筆サービスの利用状況...7ページ 第5章  プライベート点訳サービスの利用状況...16ページ 第6章  プライベート音訳サービスの利用状況...20ページ 第7章  プライベート触図訳サービスの利用状況...25ページ 第8章  当事者からの意見...30ページ 参考文献...32ページ 研究成果発表...35ページ 付録 アンケート調査票...37ページ [1ページ] 第1章 背景と目的 1. 視覚障害者の情報入手 視覚障害者にとって二つの大きな不自由とされるのは,移動の不自由と情報の入手・発信の不自由である。このうち情報の入手を支援する人的な制度・サービスとして,代読・代筆,点訳,音訳,対面朗読,テキスト訳などがある。そのうち今回は,代読・代筆,プライベート点訳,プライベート音訳サービスを調査対象に選んだ。あわせて,現在日本では単独のサービスとして取り扱われていない触図訳についても調べることとした。これらのサービスについて,その内容と成立の経緯について,以下でサービスごとに分けて述べる。 2. 代読・代筆 人々の日常生活では,郵便物や広告などの紙媒体,所持品の製品表示や取扱説明書などを読む必要がある。屋外では店頭の商品の製品表示や料理店のメニュー,駅や停留所の案内や時刻表を読まなければならない。更に,様々な書類に手書きで記入する機会も多い。これらの不便に対応するのが人による読み書きの支援,すなわち代読・代筆である。京都ライトハウスで1990年に始められた「読み書きサービス」が最初の公的な代読・代筆サービスとされる[1]。 福祉制度による代読・代筆サービスは,障害福祉サービスの居宅介護と同行援護の中で[2],そして地域生活支援事業の中の意思疎通支援事業として提供される[3]。居宅介護サービスは,障害者の居宅における生活全般にわたる援助であり,視覚障害者を対象とした場合,このサービスの中でコミュニケーション介助として代読・代筆が可能とされている。同行援護サービスは,視覚障害者を対象として外出に必要な援助を行うもので,移動に必要な情報の提供として代読・代筆が行われる。意思疎通支援事業としては,手話通訳者,要約筆記者を派遣する事業のほかに,点訳・代筆・代読・音声訳等による支援事業も明記されており,実際,視覚障害者向けの代読・代筆者を意思疎通支援者として派遣する市区もある[1]。福祉制度による代読・代筆サービスのほかに,点字図書館・公共図書館における持込み資料への対応,役所・銀行・病院など公的機関における職員等による代読・代筆を視覚障害者は利用できる[1]。以上の公的なサービスのほかに,家族・職場の同僚・友人などから代読・代筆の支援を受けている人もいる。これらの支援も本調査では「サービス」という名称で一括的に取り扱うこととする。 3. 点訳・音訳 活字を利用できない全盲の視覚障害者が読書をするには,従来より点字図書と録音図書が用いられてきた。活字の印刷物を点字図書や録音図書に変換する作業をそれぞれ点訳,音訳と呼び,点字図書館(視覚障害者情報提供施設)や点訳・音訳サークル等において,専門の職員のほか点訳・音訳(または朗読)ボランティア等によって訳が行われている[4],[5],[6]。 全国の点字図書館にある点字・録音図書の書誌情報は全国規模の情報提供ネットワーク「サピエ図書館」にまとめられている[7]。視覚障害者は,サピエ図書館の会員になることによって,ここから点字データやデイジーデータ(録音図書の形態の一つ)をダウンロードして利用することができる。もし自分が読みたい書籍が蔵書になかった場合は,その書籍の点訳・音訳を依頼することができる。任意の図書の点訳・音訳を依頼することをプライベートサービスと呼ぶ。プライベート点訳・音訳は基本的には無料だが,点字本や録音媒体の製作にかかる実費は請求される。 4. 触図訳 触図とは,全盲の視覚障害者が触って分かるように,図の線を特殊な方法で盛り上がらせ,かつ文字を点字で表した図である。一般の図をもとにその触覚版である触図を作る作業を触図訳と呼ぶ。これを,視覚障害者個人からの依頼に応じて行うのがプライベート触図訳サービスである。長い歴史や多数のサークルのある点訳・音訳[4]と違って,触図訳はそれ自体が独立したサービスのカテゴリーとはなっていない[8]。翻って海外では,視覚障害者からの要望に応じて触図を作るサービスがあり[9],今後日本でも同様なサービスが広まるべきと考えている。 5. 情報提供サービスの課題と調査の目的 以上に紹介した人的な支援サービスについては,支援者ごとの支援の質の不均一性や,地域間におけるサービス提供体制の不均一性などの問題があるとされる。これらサービスの利用状況と利用者・未利用者の要望を把握し,今後求められるサービス提供体制を検討する際の客観的データとするため,視覚障害者を対象とするアンケート調査を実施することとした。全国規模の調査とすることで,各サービスの利用率が地域により異なるかどうかも調べることができるだろう。 [3ページ] 第2章 調査方法 1. 手順 調査の実施は,社会福祉法人日本盲人会連合に委託した。日本盲人会連合は,視覚障害者を主体とする団体(県や政令指定都市単位の視覚障害者福祉協会等)61団体により構成され,視覚障害者福祉の向上を目指し,組織的な活動を展開している社会福祉法人である(同法人のホームページ(http://nichimou.org)より)。日本盲人会連合は,同連合傘下の61団体及び,同連合の5協議会(青年,女性,音楽家,スポーツ,あはき)へアンケート調査協力依頼と調査票を送付し,各5名ずつ回答を依頼した。調査票はメール(テキストファイル)で送り,回答もメールで受け付けた。点字版の調査票を希望する人には点字版の調査票を送り,点字による回答も受け付けた。調査期間は2017年2月10日から同年3月17日までとした。 2. 調査事項 調査では次の5種類の内容について尋ねた。調査票は付録の2に示す。 (1) 回答者のプロフィール (2) 代読・代筆サービスの利用状況 (3) プライベート点訳サービスの利用状況 (4) プライベート音訳サービスの利用状況 (5) プライベート触図訳サービスの利用状況 いずれのサービスについてもまず利用の有無を全員に尋ね,以後,サービスを受けている人を対象に依頼先,サービス対象となる文書,利用頻度,利用上の問題点を尋ねた。サービスを受けていない人にはその理由を尋ねた。いずれの質問項目においても,想定される回答を選択肢として提示し,これ以外の回答を自由記述してもらった。サービス利用の有無と利用頻度,サービスを受けていない理由は単一選択とし,他は複数選択可能とした。 3. 倫理審査 本調査は新潟大学の「人を対象とする研究等倫理審査委員会」の審査を受け,新潟大学長の許可のもとで実施した(承認番号:2016-0027)。 [4ページ] 第3章 回答者 1. 回答者 回答者数は202人であった。すべての回答依頼者330人(=団体ごとの依頼人数5人×66団体・協議会)に対する回収率は61.2%となる。このうち,個人から日本盲人会連合へのメールによる回答が116件(57.4%),個人から同連合への点字による回答が13件(6.4%),個人から各視覚障害者福祉協会に回答があったものを各協会が同連合に転送した回答が55件(27.2%),各視覚障害者福祉協会が個人から聞き取って手書き/電子ファイルへ記入したものを同連合へ郵便,FAX,またはメールで送った回答が18件(8.9%)であった。各協会が同連合に転送した回答の大部分は,回答者がメールで回答したものと思われる。このうち5件は5人分を合算して同連合に送付されているため,以後の分析において単純集計には用いるが,クロス集計の対象からは除く。 回答者の性別は,男性141人(69.8%),女性61人(30.2%)であった(図3-1)。 年齢分布は60歳代が最も多く107人(53.0%)と半数を占め,これに50歳代40人(19.8%)と70歳代31人(15.3%)が続いた(図3-2。回答不明1人)。 障害者手帳の等級は,1級の人が168人(83.2%),2級の人が32人(15.8%)で,両級で回答者のほとんどを占めた。他の2人のうち1人が5級,1人が手帳を持っていなかった(図3-3)。 視覚を使った文字の読み書きができますかという質問に対しては,30人(14.9%)ができると答え,172人(85.1%)ができないと答えた(図3-4)。以後,この報告では,できると答えた人をロービジョン,できないと答えた人を全盲と表現する。障害等級別に全盲の人とロービジョンの人の割合を見ると,1級の回答者165人のうちでは全盲の人が156人(94.5%)と割合が高く,2級の回答者30人のうちではロービジョンの人18人の方が半数を上回った(60.0%)(図3-5)。 点字の読み書きができますかという質問に対しては,163人(80.7%)ができると答え,37人(18.3%)ができないと答えた(回答不明2人)(図3-6)。障害等級別に点字の読み書きの可否の割合を見ると,1級165人のうちでは点字の読み書きができると答えた人が141人(85.4%)と割合が高く,2級の回答者30人のうちでは19人(63.3%)とその割合は下がった(図3-7)。 回答者の居住地を地方ごとにまとめ,全体に対する割合を示したのが図3-8である。各県の各地方への割り当て方は,総務省統計局の地域区分に従った[10]。人口の多い南関東からの回答者数が多く,その内訳は神奈川県24人(12.3%),東京都14人(7.2%),埼玉県11人(5.6%),千葉9人(4.6%)であった。図3-8を見る限り,全国からまんべんなく回答が寄せられている。 図3-1 回答者の性別(円グラフ) 男性:141人(69.8%) 女性:61人(30.2%) n=202人 図3-2 回答者の年代分布(縦棒グラフ) 20歳代:1人 30歳代:7人 40歳代:14人 50歳代:40人 60歳代:107人 70歳代:31人 80歳代:1人 1人不明 n=202人 図3-3 回答者の障害等級(円グラフ) 1級:168人(83.2%) 2級:32人(15.8%) 5級:1人 手帳なし:1人 n=202人 図3-4 視覚的な文字の読み書きの可否(円グラフ) できない:172人(85.1%) できる:30(14.9%) n=202人 図3-5 障害等級別に見た全盲/ロービジョンの割合 1級(165人):全盲:156人(94.5%),ロービジョン:9人(5.5%) 2級(30人):全盲:12人(40.0%),ロービジョン:18人(60.0%) 図3-6 点字の読みの可否(円グラフ) できる:163人(81.0%) できない:37人(18.3%) 不明:2人 n=202人 図3-7 障害等級別に見た点字の読みの可否の割合 1級(165人):点字できる:141人(85.5%),点字できない:22人(13.3%),不明:2人 2級(30人):点字できる:19人(63.3%),点字できない:11人(36.7%) 図3-8 回答者の居住地(円グラフ) 北海道:10人(5.1%) 東北:17人(8.7%) 南関東:58人(29.7%) 北関東・甲信:12人(6.2%) 北陸:12人(6.2%) 東海:13人(6.7%) 近畿:22人(11.3%) 中国:21人(10.8%) 四国:15人(7.7%) 九州:15人(7.7%) n=195人 2. 厚生労働省調査との比較 本調査の回答者の属性を,厚生労働省による平成18年身体障害児・者等実態調査結果[11],及び平成23年生活のしづらさなどに関する調査(全国在宅障害児・者等実態調査)[12] と比較することで,今回のサンプル(回答者)が代表する集団を推察してみる。 本調査と厚生労働省調査(平成23年)の回答者の年齢構成を比較したのが図3-9の(a)と(b)である。本調査回答者は60歳代が最も多く,その割合は厚生労働省調査の約2.5倍である。50歳代の割合も,厚生労働省調査の約2倍と多い。その分,70歳代は約4分の1程度まで低い。以上より,本調査の回答者は現役世代(15歳~65歳)の割合が高いことが分かる。 障害等級の構成を比べると(図3-10の(a)と(b)),本調査回答者では1級の人の割合が厚生労働省調査の2倍以上と多いことが分かる。この1級の人たちの9割超が全盲である。2級の人たちの割合は厚生労働省調査の半分強であり,3級から6級の人は1人に過ぎない。 本調査の回答者で点字の読み書きができる人の割合は80.7%であった。厚生労働省調査(平成18年)において全視覚障害者のうち点字ができる人の割合は12.7%であり,これの6.4倍にも上る。同調査の1級の人だけに限っても,点字ができる人の割合は25.2%であり,依然として本調査回答者において点字ができる人の割合は高い。 以上をまとめると,厚生労働省調査と比べると本調査の回答者は,(1) 現役世代の割合が高く,(2) 障害等級1級や全盲の人の割合が高く,(3) 点字ができる人の割合が高い。 図3-9 回答者の年代構成 (a) 本調査(円グラフ) 20歳代:0.5% 30歳代:3.5% 40歳代:6.9% 50歳代:19.8% 60歳代:53.0% 70歳代:15.3% 80歳代:0.5% 不明:0.5% n=202人 (b) 厚労省調査(平成23年度)(円グラフ) 9歳以下:0.5% 10歳代:1.4% 20歳代:1.2% 30歳代:3.1% 40歳代:5.8% 50歳代:8.9% 60歳代:20.4% 70歳以上:58.3% 不詳:0.5% 図3-10 回答者の障害等級構成 (a) 本調査(円グラフ) 1級:83.2% 2級:15.8% 5級:0.5% 手帳なし:0.5% n=202人 (b) 厚労省調査(平成23年度)(円グラフ) 1級:36.2% 2級:28.5% 3級:9.3% 4級:9.3% 5級:9.7% 6級:7.0% [7ページ] 第4章 代読・代筆サービスの利用状況 1. 利用率 回答者202人のうち,代読と代筆の両方のサービスを受けていると回答した人は146人で全回答者の72.3%,代読サービスのみを受けていると回答した人は1人であった(図4-1)。これ以後,両者を併せた147(72.8%)人を代読・代筆サービスを受けている人とする。いずれのサービスも受けていないと回答した人は54人(26.7%)であった(回答不明1人)。 全盲の169人の中で代読・代筆サービスを受けている人の割合は78.1%,ロービジョンの28人の中では35.7%であり,文字の読み書きの可否により代読・代筆サービスを受ける割合に2倍以上の差が現れた(図4-2)。カイ2乗検定を行ったところ,全盲者とロービジョン者の間でサービスの利用率に有意な差が見られた (χ2 (1) = 22.1。危険率5%で検定。以後も同じ) 代読・代筆サービスの利用率に地域間差が見られるかどうかを調べるため,回答者の居住地区を東京23区,政令指定都市,中核市,その他の市,町村に分けた。それぞれの区分からの回答者数は,12人,49人,44人,71人,11人となった。区分ごとにサービスの利用率を求めたのが図4-3である。この図を見る限りでは東京23区と町村,中核市における利用率が高いが,カイ2乗検定を行ったところ,自治体の区分による有意な差は見られなかった(χ2 (4) = 3.72)。 図4-1 代読・代筆サービスの利用率(円グラフ) 代読・代筆利用:146人(72.3%) 代読のみ利用:1人 サービス不利用:54人(26.7%) 不明:1人 n=202人 図4-2 全盲/ロービジョン別に見た代読・代筆サービスの利用率(横棒グラフ) 全盲(169人):78.1% ロービジョン(28人):35.7% n=197人 図4-3 地方自治体区分別に見た代読・代筆サービスの利用率(横棒グラフ) 東京23区(12人):66.7% 政令指定都市(49人):55.1% 中核市(44人):52.3% その他の市(71人):53.5% 町村(11人):72.7% n=187人 2. 提供者 代読・代筆のサービス提供者の利用率を図4-4に示す。同行援護者の利用者が108人とサービス利用者147人の73.5%に上った。ヘルパーはその約半数の53人(36.1%)であった。家族・同居人と友人・知人は(基本的に)無償のサービスである。家族・同居人に代読・代筆してもらっている人は94人(63.9%),友人・知人に代読・代筆してもらっている人は69人(46.9%)であった。 その他として具体的に書かれた内容(43人分)を,調査者が以下のように分類した(選択肢にあったものは除く):障害者施設の職員(9人),ボランティア(8人),点字図書館(4人),役所・銀行・郵便局・病院の職員(15人),店舗店員や配達業者など(9人),職場の同僚や従業員(6人)。iPhoneの読み上げ機能を挙げた人が1人いたのは興味深い。 図4-4 代読・代筆サービスの提供者(複数回答)(横棒グラフ) 同行援護者:108人 居宅介護ヘルパー:53人 家族・同居人:94人 友人・知人:69人 その他:43人 n=147人 3. 代読文書 代読文書のうち,調査者が選択肢として提示した文書への回答率を図4-5に示す。代読サービス利用者147人のうち143人(97.3%)が郵便物を,131人(89.1%)が各種説明書を選択しており,利用者のほとんどがこれらを読んでもらっている実態が分かる。 その他として具体的に書かれた内容を,調査者が以下のように分類した:公的な書類(12人),仕事の書類(10人),専門書(9人),買い物・領収書(9人),通帳(5人),回覧板(3人),アンケート(3人),趣味(3人),画面(2人),その他の書類・資料(9人)。 サービス提供者による代読文書の違いの有無を見るため,サービス提供者として同行援護者またはヘルパーのみを回答した人(福祉制度のみ利用)25人と,家族,同居者,友人,知人,及びその他の回答のうち無償提供と判断できる人のみを回答した人(家族・知人等のみ)17人,そして福祉制度と家族・知人等による支援の両方を回答した99人の3群に代読・代筆サービス利用者を分け(6人は提供者に関する回答不明のため分析から除く),それらの人々の代読文書(その他を除く)の回答率を求めたのが図4-6である。説明書と新聞・雑誌・チラシにおいて,福祉制度のみ,家族・知人等のみ,両方の順序で利用率が高くなっている。Fisherの直接確率検定を行ったところ,新聞・雑誌・チラシの利用率においてサービス提供者による有意な差が見られた(p = 0.018)。Bonferroni法により多重比較をしたところ,福祉制度のみと両方を利用する群の間で有意差が見られた(p = 0.0073)。郵便物と各種説明書においては,Fisherの直接確率検定では有意な差は見られなかった(郵便物:p = 0.392,各種説明書:p = 0.138)。 図4-5 代読文書(複数回答)(横棒グラフ) 郵便物:143人 説明書:131人 新聞,雑誌,チラシ:69人 その他:54人 n=147人 図4-6 サービス提供者別に見た代読文書(横棒グラフ) 郵便物:福祉制度のみ:100%,家族・知人等のみ:94.1%,両方:98.0% 説明書:福祉制度のみ:80.0%,家族・知人等のみ:82.4%,両方:91.9% 新聞,雑誌,チラシ:福祉制度のみ:24.0%,家族・知人等のみ:41.2%,両方:54.5% n=141人(福祉制度のみ:25人,家族・知人等のみ:17人,両方:99人) 4. 代筆文書 代筆文書のうち,調査者が選択肢として提示した文書への回答率を図4-7に示す。代筆サービス利用者146人のうち141人(96.6%)が役所(市役所,年金事務所など)の書類を,125人(85.6%)が公共機関(郵便局,銀行,NTT,電力・ガス会社,水道局,病院,学校など)の書類を,101人(69.2%)が福祉施設の書類を選択しており,これらの文書を読むニーズが高いことが分かる。 その他として具体的に書かれた内容を,調査者が以下のように分類した:手紙・宛名(14人),仕事の書類(7人),買い物(5人),アンケート(5人),原稿(4人),その他の書類・資料(8人),その他の場面(移動先での受付など)(5人)。 サービス提供者によって代筆文書に違いがあるかどうかを見たのが図4-8である。回答者の分類は代読文書のときと同じである。公共機関書類と福祉書類において福祉制度のみの群の利用率が低くなっているが,Fisherの直接確率検定を行ったところ,サービス提供者による有意な差は見られなかった(公共機関書類:p = 0.078,福祉書類:p = 0.313)。役所の書類においても,同検定では有意な差は見られなかった(p = 0.164)。 図4-7 代筆文書(複数回答)(横棒グラフ) 役所書類:141人 公共機関書類:125人 福祉書類:101人 その他:46人 n=146人 図4-8 サービス提供者別に見た代筆文書(横棒グラフ) 役所書類:福祉制度のみ:100%,家族・知人等のみ:88.2%,両方:96.0% 公共機関書類:福祉制度のみ:72.0%,家族・知人等のみ:94.1%,両方:88.9% 福祉書類:福祉制度のみ:60.0%,家族・知人等のみ:82.4%,両方:69.7% n=141人(福祉制度のみ:25人,家族・知人等のみ:17人,両方:99人) 5. 利用頻度 代読・代筆サービスの利用頻度の分布を図4-9に示す。ここでは,代読と代筆を分けて尋ねていない。複数の選択肢を選んだ回答8人分は除外した。週に2-3回という回答が最も多く,代読・代筆サービス利用者147人のうち46人(31.3%),以下,ほぼ毎日が35人(23.8%),週に1回が29人(19.7%)と続く。このデータから,代読・代筆の利用頻度(必要性)は高いと言える。 サービス提供者によって利用頻度に違いがあるかどうかを見たのが図4-10である。回答者の分類は代読文書のときと同じである。数ヶ月に1回程度という回答者はなく,その他1人は図では省略した。福祉制度によるサービスの利用は週に2~3回という回答者が最も多く,それに週1回が続く。他方で家族・知人等にはほぼ毎日代読・代筆してもらっている人が多いことが分かる。両方利用する人たちもこれと同様な傾向を示した。Fisherの直接確率検定を行ったところ,サービス提供者による有意な差が見られた(p = 0.0014)。Bonferroni法により多重比較をしたところ,福祉制度のみと家族・知人等のみを利用する群の間(p = 0.00040),及び福祉制度のみと両方を利用する群の間で有意差が見られた(p = 0.0018)。 図4-9 サービスの利用頻度(横棒グラフ) ほぼ毎日:35人(23.8%) 週に2~3回:46人(31.3%) 週に1回:29人(19.7%) 月に2~3回:15人(10.2%) 月に1回:8人(5.4%) 数ヶ月に1回:2人(1.4%) その他:4人(2.7%) n=147人 図4-10 サービス提供者別に見たサービスの利用頻度(折れ線グラフ) ほぼ毎日,週に2~3回,週に1回,月に2~3回,月に1回の順の割合 福祉制度のみ:0%,56.5%,34.8%,8.7%,0% 家族・知人等のみ:41.2%,29.4%,11.8%,0%,11.8% 両方:31.5%,29.2%,21.3%,11.2%,6.7% 6. 断られた経験 代読や代筆を断られた経験の有無について尋ねたところ,代読を断られたことがある人は代読・代筆サービス利用者147人のうち16人(10.9%)に留まったが,代筆を断られた人は36人(24.5%)に上った(図4-11)。断られた経験がないとした人は96人(65.3%)だった。 代読や代筆を断られた経験を持つ割合をサービス提供者間で比較したのが図4-12である。回答者の分類は代読文書のときと同じである。家族・知人等のみの人が代読を断られた割合と,両方利用する人が代筆を断られた割合が高い。代読を断られた割合についてFisherの直接確率検定を行ったところ,サービス提供者による有意な差が見られた(p = 0.018)。Bonferroni法により多重比較をしたところ,家族・知人等のみと両方利用の群の間に有意な差が見られた(p = 0.0091)。代筆を断られた割合についても同検定を行ったところ,サービス提供者による有意な差が見られた(p = 0.0033)。多重比較をしたところ,両方利用と家族・知人等のみの群の間に有意な差が見られた(p = 0.0057)。 代読については,家族に依頼したときに忙しかったり,面倒がられたりして断られたという人が8人いた。家族・知人等に代読・代筆を依頼する頻度が高いことから,断られる事例も増えたものと思われる。 代筆を断られた機会は,銀行,郵便局,証券会社,生命保険会社,不動産会社等の金融取引をする場面が最も多く,21人が具体的な記述をした。代筆を頼んだ相手として「行員」と書いてある人は8人に留まったが,記述からは,同行した援護者ではなく行員等の取引相手に依頼していることが多いと考えられる。 図4-11 断られた経験(円グラフ) 代読のみを断られた:8人(5.4%) 両方断られた:8人(5.4%) 代筆のみを断られた:28人(19.0%) 断られたことはない:96人(65.3%) 不明:7人(4.8%) n=147人 図4-12 サービス提供者別に見た断られた経験(横棒グラフ) 代読:福祉制度のみ:8%,家族・知人等のみ:35.3%,両方:8.1% 代筆:福祉制度のみ:12.0%,家族・知人等のみ:0%,両方:32.3% n=141人(福祉制度のみ:25人,家族・知人等のみ:17人,両方:99人) 7. 利用上の問題 代読・代筆利用上の問題としては,選択肢のうち,写真,図,イラスト,グラフ,表の説明が分からなかったを選んだ人が代読・代筆サービス利用者147人のうち72人(49.0%)と最も多かった(図4-13)。次いで,個人情報やプライバシーが守られるか不安を選んだ人が52人(35.4%),読まれた文章の意味が分からなかったを選んだ人が46人(31.3%)であった。困ったことは特にないと回答した人は34人(23.1%)に留まった(図4-13に図示せず)。 その他として具体的に書かれた内容を,調査者が以下のように分類した:読み手の能力(9人:漢字を読めない・読み間違えるなど),依頼者の意図に反した情報・資料の取捨選択(8人),依頼の心理的負担(6人:家族に対する遠慮等),正確さへの不安(3人:正確に読み・書きできているか不安),時間の不足(3人),断られた(2人),知人とのスケジュール調整が困難(2人),図や表を説明してくれない(2人)。 サービス提供者によって問題点に違いがあるかどうかを見たのが図4-14である。家族・知人等のみに依頼している人の中で,写真,図,イラスト,グラフ,表の説明が分からなかったという選択肢を選んだ人の割合が高かったが,Fisherの直接確率検定を行ったところ,サービス提供者による有意な差は見られなかった(p = 0.175)。個人情報やプライバシーが守られるか不安,読まれた文章の意味が分からないという問題点についても,サービス提供者間で有意な差は見られなかった(それぞれ,p = 0.360, p = 0.921)。 図4-13 サービス利用上の問題(複数回答)(横棒グラフ) 図等意味不明:72人 個人情報心配:52人 文章意味不明:46人 その他:41人 n=147人 図4-14 サービス提供者別に見た問題点(横棒グラフ) 図等意味不明:福祉制度のみ:36.0%,家族・知人等のみ:64.7%,両方:51.5% 個人情報心配:福祉制度のみ:24.0%,家族・知人等のみ:35.3%,両方:39.4% 文章意味不明:福祉制度のみ:36.0%,家族・知人等のみ:29.4%,両方:32.3% n=141人(福祉制度のみ:25人,家族・知人等のみ:17人,両方:99人) 8. サービスを受けていない理由 サービスを受けていない人54人にその理由を尋ねた。現在は家族・同居者に依頼しており,事業者によるサービスを使っていないと答えた人が1人あり,回答者数は55人となった。理由は単一選択としたが,二つの理由を答えた人がいた。最も回答が多かった理由はサービスを受ける必要がないで, 回答者55人のうちの30人(54.5%),サービスの受け方が分からない人とサービスを知らなかった人がともに5人(9.1%),その他の理由を答えた人が15人(27.2%)であった(図4-15)。 その他として具体的に書かれた内容を,調査者が以下のように分類した:家族・友人・知人に依頼できる(10人),その他の人に依頼できる(3人。ボランティア,ヘルパー等),プライバシー保守の不安(2人),支援機器(ルーペ,拡大読書器,パソコン)で解決(2人),場所や時間の制約(1人)。 図4-15 代読・代筆サービスを受けていない理由(円グラフ) 必要ない:30人(54.5%) 受け方分からない:5人(9.1%) サービス知らない:5人(9.1%) その他:15人(27.2%) n=55人 9. 代読・代筆してほしい文書 サービスを受けていない人に,代読サービスで読んでもらいたいものを尋ねたところ,回答者の約半数が説明書,郵便物を挙げた(図4-16)。 サービスを受けていない人に,代筆サービスで書いてもらいたいものを尋ねたところ,回答者の半数以上が役所書類,公共機関書類を挙げた(図4-17)。 これら代読・代筆を希望する文書,現在代読・代筆してもらっている文書(図4-5,4-7)とほぼ一致する。 図4-16 代読して欲しい文書(複数回答) 説明書:28人 郵便物:26人 新聞,雑誌,チラシ:9人 その他:7人 n=55人 図4-17代筆して欲しい文書(複数回答) 役所書類:38人 公共機関書類:33人 福祉書類:24人 その他:7人 n=55人 10. 考察 調査開始時点で問題と捉えていた2点,すなわちサービス提供体制の地域間の不均一性とサービスの質の提供者間の不均一性について考察する。 10.1 自治体の区分によるサービス提供体制の差 調査開始当初,首都圏はサービスを提供する自治体が多く,サービスの利用率が高いと想定した。実際,代読・代筆に関する書籍では,三鷹市,千代田区,豊島区といった首都圏において代読・代筆サービス提供者を派遣する事業が紹介されている[1]。公共図書館で代読・代筆を行っている例も,墨田区立あずま図書館と函館視覚障害者図書館であり,それぞれ東京23区と中核市にある。 一方で今回の調査結果では,代読・代筆サービスの利用率に自治体の区分間の有意な差は見られなかった。これは,福祉制度としての代読・代筆サービスを同行援護者から受ける人が多かったためだと考えられる(図4-4)。同行援護事業の利用実態に関する日本盲人会連合による2014年の調査報告によると,東京23区,政令指定都市,中核市,(その他の)市では同行援護利用率が100%ないし97.1%と高かった[13]。町における利用率は若干下がるものの80.6%であった。同行援護は国の制度として全国一律のシステムであり,かつこの事業内容として代読・代筆が含まれることから,自治体の区分による代読・代筆サービス利用の不均一性は有意な差としては現れなかったのであろう。 10.2 提供者間のサービスの質の差 調査結果の統計的分析からは,代読文書,利用頻度,断られた経験について,サービス提供者間で有意な差が見られた。このうちサービス受給にかかわる利用頻度と断られた経験について,状況と解決策を考察する。 代読・代筆サービスの利用頻度について,福祉制度のみ利用している人は週に2~3回という回答が多かった。これは,サービスが同行援護,または居宅介護の中で行われており,これら障害福祉サービスには標準的な支給量が定まっているためである[14]。国・地方自治体ともに財政的課題を抱える昨今に支給量の増加は期待しづらい。そこで家族・知人等からの支援を得たりするのだが(図4-4),家族・知人等に代読を断られることがしばしば起こっている(図4-12)。代読文書として利用率が高い郵便物については,ICT機器の利用が比較的現実的な解決策ではないかと思われる。スマートフォンによる文字認識アプリは既に販売されており(例えば,iよむべえ, アメディア),視覚障害者による対象物の撮影がより容易になれば,このような機器が郵便物の差出人といった簡単な文書(印刷物に限る)を独力で読み取るのに役立つと期待できる。一方で説明書については,分量が長いため文字認識は適さず,また内容を検索する必要性からその電子ファイルの提供が製造/販売元に求められる。今回の調査への回答者の半分以上がメールを使うことができる事から,Webから説明書を入手して読むことに問題は少ないと思われる。課題としては,一般に取扱い説明書はPDF形式で提供されており,その多くはアクセシビリティが確保されていないことである[15]。製造/販売元にはPDFと併せてテキスト文書も提供することが期待される。 代筆を断られた経験を有する割合が高かったのは,福祉制度とそれ以外のサービスの両方を利用している人たちの群だった。その理由は,断られた相手の多くが,役所・銀行・郵便局・病院の職員,店舗店員(図4-12のその他の項目)だからである。金融機関で代筆を断られた例が最も多いが,それ以外でも病院で同意書等の代筆を断られた(3人),店舗・役所で署名の代筆を断られた(それぞれ3人と2人)例が挙げられた。最も数が多かった金融機関における代筆拒否の問題に対しては,金融庁が2011年に「主要行等向けの総合的な監督指針」[16]と「中小・地域金融機関向けの総合的な監督指針」[17]を出し,預貯金の取引において代読・代筆が可能となっている。同じく金融庁の「障害者等に配慮した取り組みに関するアンケート調査」[18]では,自筆困難者への代筆に関する内部規定の整備状況は,都市銀行等,信託銀行,地方銀行においてほぼ100%となっている。それにもかかわらず断られた経験が数多く報告されているのは,全職員への規定の周知が不足しているためと考えられる。これが正しいならば,金融機関が自身を変革していくことが社会的に要求されるが,視覚障害者側でできることは,代読・代筆に関する金融庁の監督指針があることを知っておき,断られた場合はこれを根拠に支援を要求することが一つの手段だと言える。 [16ページ] 第5章 プライベート点訳サービスの利用状況 1. 利用率 回答者202人のうち,プライベート点訳サービスを利用していた人は85人,全回答者に対する利用率は42.1%であった(図5-1)。点字を利用できる人161人(クロス集計可能な回答者。以下も同様)のうちで点訳サービスを利用している人は83人(51.6%)と,約半数であった。なお,プライベート点訳サービスを利用していない人も点訳済みの図書を利用していると考えられ,回答者の半数が読書をしていない訳ではないことに留意されたい。次章の音訳の利用率の解釈についても同様である。 全盲者でサービスを受けている人は169人中80人(47.3%),ロービジョン者では28人中4人(14.3%)であった(図5-2)。カイ2乗検定を行ったところ,全盲者とロービジョン者の間で点訳サービスの利用率に有意な差が見られた(χ2 (1) = 11.05)。点訳サービスの利用は点字を読めることが前提であり,全盲者において点字の利用率が84.6%と高いことから当然の結果と言える。 プライベート点訳サービスの利用率に地域間差が見られるかどうかを調べるため,回答者の居住地区を東京23区,政令指定都市,中核市,その他の市,町村に分けた。それぞれの区分からの回答者数は,12人,50人,44人,69人,11人となった。区分ごとにサービスの利用率を求めたのが図5-3である。この図を見る限りでは東京23区と町村における利用率が高いが,カイ2乗検定を行ったところ,自治体の区分による有意な差は見られなかった(χ2 (4) = 3.95)。 図5-1 点訳サービスの利用率(円グラフ) 点訳利用:85人(42.1%) 点訳不利用:115人(56.9%) 不明:2人 n=202人 図5-2 全盲/ロービジョン別に見た点訳サービスの利用率(横棒グラフ) 全盲者(169人):47.3% ロービジョン者(28人):14.3% 図5-3 地方自治体区分別に見た点訳サービスの利用率(横棒グラフ) 東京23区(12人):58.3% 政令指定都市(50人):40.0% 中核市(44人):38.6% その他の市(69人):39.1% 町村(11人):63.6% n=186人 2. 依頼先 プライベート点訳サービス依頼先の回答数を図5-4に示す。点訳サークルの利用者数が最も多く,65人(サービス利用者85人の76.5%)に上った。次いで点字図書館の利用者数が47人(55.3%)であった。点字出版所と意思疎通支援事業者としての点訳者に依頼していたのはいずれも4人だった。 これらの団体に対して,個人ボランティアに依頼している人は20人(23.5%),友人・知人に点訳してもらっている人は10人(11.8%)であった。 その他として具体的に書かれた内容(4人分)は,金融機関による点字通知サービス(2人),視覚障害センター,私費で雇用している補佐員(各1人)であった。 図5-4 点訳の依頼先(複数回答)(横棒グラフ) 点訳サークル:65人 点字図書館:47人 点字出版所:4人 意思疎通支援事業者:4人 個人ボランティア:20人 友人、知人:10人 その他:9人 n=85人 3. 点訳文書 プライベート点訳文書のうち,調査者が選択肢として提示した文書への回答者数を図5-5 (a)に示す。専門書の点訳を依頼している人が最も多く26人であった。これは,点訳サービス利用者85人の30.6%となる。これに対して,雑誌・小説・ノンフィクションといった一般書の点訳を依頼している人数はそれぞれ11人,9人,6人と少ない。 その他を選んだ人の数は68人(80.0%)に上り,専門書の点訳依頼数の2倍以上となった。その具体的な内容を,調査者が以下のように分類した:書類・会議・講演会等資料(31人),製品の説明書(20人),音楽(楽譜・歌詞など)(18人),医療・福祉関係の専門書・実用書(13人),その他の専門書・実用書(13人),時刻表(7人),料理(4人),その他の趣味(4人),名簿(3人),自治体の連絡,医療,行政(いずれも2人),その他(8人)。このうち4件以上の回答を図5-5 (b)に示した。 図5-5点訳文書(複数回答) (a) 選択肢からの回答(横棒グラフ) 専門書:26人 雑誌:11人 小説:9人 ノンフィクション:6人 教科書:4人 その他:68人 n=85人 (b) その他の分類結果(横棒グラフ) 書類・会議・講演会等資料:31人 製品の説明書:20人 音楽(楽譜・歌詞):18人 医療・福祉関係専門書:13人 その他専門書:13人 時刻表:7人 料理:4人 その他の趣味:4人 n=68人 4. 利用頻度 プライベート点訳サービスの利用頻度を選択肢と自由回答で尋ねた。その他の回答を,これに付随する自由記述をもとに分類し,選択肢への回答数と合算した。この結果としての利用頻度の分布を図5-6に示す。数ヶ月に1回という回答が最も多く39人(サービス利用者85人の45.9%),これに月1回が18人(同21.2%)と続いた。月に2~3回より頻度が高い人や年に1回より頻度が低い人はそれぞれ7人と9人であった。その他の回答には,必要に応じて依頼するという記述が多かった(9人)。 図5-6 点訳サービスの利用頻度(横棒グラフ) 週に1回:4人 月に2~3回:3人 月1回:18人 数ヶ月に1回:39人 年に1回以下:9人 必要に応じて:9人 n=82人 5. 利用上の問題 プライベート点訳サービス利用上の問題を選択肢と自由回答で尋ねた。回答者78人のうち半分近くの41人が特に問題はないとした。問題を指摘した37人の回答の一覧を図5-7に示す。点訳サービス利用上の課題としては,一般書,専門書ともに時間がかかることが最も多くの人から挙げられた(一般書20人:問題点指摘者37人の54.1%,専門書17人:同45.9%)。 図5-7 点訳サービス利用上の問題(複数回答)(横棒グラフ) 一般書,時間がかかる:20人 一般書,質が低い:4人 専門書,時間がかかる:17人 専門書,点訳できない:5人 専門書,質が低い:5人 その他:14人 n=37人 6. サービスを受けていない理由 プライベート点訳サービスを受けていない115人のうち110人がその理由を回答した。最も多かった回答はサービスを受ける必要がないとした人で74人(回答者110人の67.3%)だった。これは,一般書であればその多くは点訳/音訳/テキスト化済みの図書がサピエ図書館で見つかるためと思われる。家族/同居人に読んでもらうので必要ないと具体的に記述した人もあった(3人)。ほかに,サービスの受け方が分からないが7人(同6.4%),サービスを知らなかった人が6人(同5.5%),その他の理由が23人(同20.9%)であった(図5-8)。 その他として具体的に書かれた内容は,点字が読めない・読むのが困難・時間がかかる(11人),パソコンの読み上げ・点訳で間に合う(3人),音訳で間に合う(3人),点訳に時間がかかる(2人)などであった。 図5-8 点訳サービスを受けていない理由(円グラフ) 必要がない:74人(67.3%) 受け方分からない:7人(6.4%) サービス知らない:6人(5.5%) その他:23人(20.9%) n=110人 7. 点訳してほしい文書 プライベート点訳サービスを受けていない人に,点訳してもらいたいものを尋ねたところ,回答者71人から専門書,小説,雑誌などが挙げられた(図5-9)。回答数の多い選択肢の順序は,現在点訳してもらっている文書の順序と同じであった(図5-5 (a))。 図5-9 点訳してほしい文書(複数回答)(横棒グラフ) 専門書:20人 小説:17人 雑誌:15人 ノンフィクション:10人 教科書:6人 その他:32人 n=71人 8. 考察 プライベート点訳の利用状況に関する考察はプライベート音訳サービスとともに第6章で論じる。 [20ページ] 第6章 プライベート音訳サービスの利用状況 1. 利用率 回答者202人のうち,プライベート音訳のサービスを受けていると答えた人は89人(44.1%),受けていないと回答した人は110人(54.5%)であった(図6-1)。 全盲者でサービスを受けている人は169人中75人(44.4%),ロービジョン者では28人中11人(39.3%)であった(図6-2)。カイ2乗検定を行ったが,全盲者とロービジョン者の間で音訳サービスの利用率に有意な差は見られなかった(χ2 (1) = 0.34)。 回答者が居住する自治体区分ごとにサービスの利用率を求めたのが図6-3である。この図を見ると東京23区と中核市,町村における利用率が高い。カイ2乗検定を行ったところ,自治体の区分による有意な差が見られた(χ2 (4) = 14.48)。 図6-1 音訳サービスの利用率(円グラフ) 音訳利用:89人(44.1%) 音訳不利用:110人(54.5%) 不明:3人 n=202人 図6-2 全盲/ロービジョン別に見た音訳サービスの利用率(横棒グラフ) 全盲(169人):44.4% ロービジョン者(28人):39.3% 図6-3 地方自治体区分別に見た音訳サービスの利用率(横棒グラフ) 東京23区(12人):83.3% 政令指定都市(50人):32.0% 中核市(43人):53.5% その他の市(70人):35.7% 町村(11人):54.5% n=186人 2. 依頼先 プライベート音訳サービス依頼先の回答数を図6-4に示す。音訳サークルの利用者が60人とサービス利用者89人の67.4%に上った。次いで点字図書館の利用者が52人(58.4%)であった。ボランティアサークルと点字図書館が主たる依頼先となっている点は点訳サービスと同様である。これら団体に対して,個人ボランティアに依頼している人は20人(22.5%),友人・知人に依頼している人は19人(21.3%)であった。その他として具体的に書かれた内容(6人分)は,団体の職員(2人),公共図書館,NPO法人,従業員,家族(各1人)であった。 図6-4 音訳の依頼先(複数回答)(横棒グラフ) 音訳サークル:60人 点字図書館:52人 録音製作所:3人 意思疎通支援事業者:2人 個人ボランティア:20人 友人、知人:19人 その他:9人 n=89人 3. 音訳文書 プライベート音訳文書のうち,調査者が選択肢として提示した文書への回答者数を図6-5 (a)に示す。点訳サービスと同様に,専門書の依頼者数が31人(サービス利用者89人の34.8%)と多い。一方で,小説,専門書,雑誌,ノンフィクションの音訳を依頼している人がそれぞれ33人(37.1%),26人(29.2%),24人(27.0%)となり,点訳文書に比べると一般書の依頼者が多いことが分かる。 点訳サービスと同様に,その他を選んだ人の数が38人と多かった。その具体的な内容を,調査者が以下のように分類した:医療・福祉関係の専門書・実用書(13人),製品の説明書(13人),書類・資料,その他の趣味(7人),所属団体の会報(6人),その他の専門書・実用書(5人),料理,伝記,自治体のお知らせ(4人),音楽(3人),私信(1人)。このうち4件以上の回答を図6-5 (b)に示した。 図6-5音訳文書(複数回答) (a) 選択肢からの回答(横棒グラフ) 小説:33人 専門書:31人 雑誌:26人 ノンフィクション:24人 教科書:4人 その他:38人 n=87人 (b) その他の分類結果(横棒グラフ) 医療・福祉関係専門書:13人 製品の説明書:13人 書類・資料:7人 その他の趣味:7人 所属団体の会報:6人 その他専門書:5人 料理:4人 伝記:4人 自治体のお知らせ:4人 n=38人 4. 利用頻度 プライベート音訳サービスの利用頻度を選択肢と自由回答で尋ねた。その他の回答を,これに付随する自由記述をもとに分類し,選択肢への回答数と合算した。この結果としての音訳サービスの利用頻度の分布を図6-6に示す。数ヶ月に1回という回答が最も多く39人(サービス利用者89人のうち43.8%),これに月に1回が19人(同21.3%)と続いた。週に1回や月に2-3回という回答者はそれぞれ13人(14.6%)と9人(10.1%)で,これらの数値は点訳サービスの3倍程度となった。これより,点訳よりも音訳サービスの利用頻度が高いと言える。 図6-6 音訳サービスの利用頻度(横棒グラフ) 週に1回:13人 月に2-3回:9人 月に1回:19人 数ヶ月に1回:39人 年に1回以下:6人 必要に応じて:1人 n=87人 5. 利用上の問題 プライベート音訳サービス利用上の問題を選択肢と自由回答で尋ねた。回答者86人のうち半分近くの40人が特に問題はないとした。問題を指摘した46人の回答の一覧を図6-7に示す。点訳サービスと同様に,一般書,専門書ともに時間がかかることが最も多くの人から挙げられた(一般書30人:問題点の指摘者46人の65.2%,専門書20人:同43.5%)。一般書の音訳時間に関する問題の指摘者数が点訳よりも多いのは,音訳文書の中で専門書以外が多かったことが要因であろう。問題点の自由記述の整理結果は次の通り:音訳の質の問題(3人:固有名詞等の読み間違い,読み方が専門的でない,声が小さい),時間がかかる(3人:数ヶ月かかる,1年以上かかる,ほか),読んでもらえない(2人:内容によっては読んでもらえない,音訳されていない書籍が多い),その他(2人:依頼先が限られている,資料を届けるのに戸惑う)。 図6-7 音訳サービス利用上の問題(複数回答)(横棒グラフ) 一般書,時間かかる:30人 一般書,質が低い:7人 専門書,時間かかる:20人 専門書,音訳できない:6人 専門書,質が低い:4人 その他:14人 n=46人 6. サービスを受けていない理由 プライベート音訳サービスを受けていない110人のうち109人がその理由を回答した。最も多かった回答はサービスを受ける必要がないとした人で75人(回答者109人の68.8%)だった。その中には,家族/同居人に読んでもらうので必要ないと具体的に記述した人もあった(3人)。ほかに,サービスを知らなかった人が7人(同6.4%),サービスの受け方が分からない6人(同5.5%),その他の理由が20人(同18.3%)であった(図6-8)。 その他として具体的に書かれた内容は,音訳に時間がかかる(4人)(依頼してから数ヶ月,1年かかった),点字の方がよい(4人:理解しやすい,頭に入る,検索しやすい),音声への不満(2人:録音が好きでない,語尾が聞き取りづらい),代替手段がある(2人:汎用の音訳ソフトウェア,点字図書館のサービス)であった。 図6-8 音訳サービスを受けていない理由(円グラフ) 必要ない:75人(68.8%) サービス知らない:8人(7.3%) 受け方分からない:6人(5.5%) その他:20人(18.3%) n=109人 7. 音訳してほしい文書 プライベート音訳サービスを受けていない人に,音訳してもらいたいものを尋ねたところ,回答者80人から小説,専門書,雑誌,ノンフィクションなどが挙げられた(図6-9)。回答数の多い選択肢の順序は,現在点訳してもらっている文書の順序と同じであった(図6-5 (a))。 図6-9 音訳してほしい文書(複数回答)(横棒グラフ) 小説:24人 専門書:23人 雑誌:23人 ノンフィクション:16人 教科書:7人 その他:36人 n=80人 8. 考察 8.1 点訳・音訳の問題点 調査開始前に仮定した点訳・音訳サービスの問題点は,専門書の点訳・音訳に時間がかかることと訳の品質が保たれているかということであった。両サービスの利用者が指摘する問題点を見ると,想定通り,訳に時間がかかることが最も多くの人から指摘された(図5-7と図6-7)。点訳・音訳に要する時間は書籍の内容・長さ・訳者や団体によって異なるが,どちらも1冊に数ヶ月かかることが一般的である(点訳に要する時間について例えば[19],[20],音訳に要する時間について例えば[21],[22]を参照)。この問題に対してICTの導入は有効である[20],[22]。点訳では自動点訳ソフトウェア,音訳では音声合成ソフトウェアの利用が可能である。但し,自動点訳のあとには,誤訳の修正と点字図書としてのレイアウトに人手と時間を要する[20]。録音図書の場合,音声データのデイジー編集に人手と時間を要する[22]。もし利用者が品質よりも即時性を優先するなら,人手による修正を行わない点訳や,編集前の合成音声をそのまま使えばよい。実際,アンケート回答者のうち点訳・音訳サービスを受けていない人の自由記述の中に,パソコンによる音声読み上げがあるのでサービスは不要という意見もあった。ソフトウェアによる点訳・音訳の精度が更に高まることによって,利用者にとっては即時性だけでなく高品質も望むことができるようになるので,自動点訳・音声合成ソフトウェアの精度向上が強く期待される。 この一方で,品質の点を問題として指摘した人は多くはなかった。その理由は,専門書の場合,点訳・音訳依頼者と点訳・音訳者が密に連絡を取り合って訳の作業を進めることが多いためと考えられるが,このことは今回の調査結果から確認することはできない。 8.2 点訳と音訳の比較 8.2.1 点字の利用の可否 点訳サービスの利用者が点字使用者であることは当然である。では,音訳利用者は点字を使えないから音訳を利用するのか? あるいは文書の種類や緊急性などの状況に応じて点訳と音訳を使い分けているのか? 点訳サービスと音訳サービスの利用者の重なり具合を調べた結果を図6-10に示す。音訳利用者85人のうち46人(55.3%)が点訳も利用していた。音訳のみ利用している39人について点字の利用の可否を見たところ,28人が点字ができ,点字ができないのは11人だけだった。このデータからは,点字を使えないから音訳を利用するという人が多いとは言えない。 図6-10 点訳・音訳サービスの利用者の重なり(ベン図) 点訳のみ利用:36人 音訳のみ利用:39人 両方利用:46人 どちらも利用なし:72人 一方/両方無回答:4人 n=197人 8.2.2 依頼文書 図5-5と図6-5より,点訳・音訳文書の一部に利用率の違いが見られた。文書の種類ごとに点訳と音訳の間でカイ2乗検定を行ったところ,専門書,製品説明書,医療・福祉専門書では両者の間に利用率の有意な差はなかった(χ2(1) = 0.36, 0.13, 0.02)。一方で,会議資料,音楽,その他専門書では,点訳の利用率が有意に高く(χ2(1) = 20.84, 12.99, 4.39),小説,雑誌,ノンフィクションでは,音訳の利用率が有意に高かった(χ2(1) = 16.67, 6.88, 12.08)。日本点字図書館の調査結果においても,小説・エッセイなどの文学では録音図書を利用するとした人の割合が高く,他方で調べもの・学習のためのもの,情報の正確性を求めるもの,何度も読み返すものでは点字図書を利用するとした人の割合が高かった[23]。会議資料,音楽は後者のカテゴリーに入ると考えられ,先行調査の結果と一致していると言える。 8.2.3 利用頻度 サービス利用頻度の選択肢(週に1回,月に2-3回,月に1回,数ヶ月に1回,年に1回より少ない)を1年あたりの利用回数に換算して(それぞれ,50.85, 30, 12, 4, 1回/年とした)平均値を求めたところ,点訳は9.24回/年に対して,音訳は15.36回/年となり,音訳の方が利用頻度が高いと言える。これは,一般書,特に雑誌のような定期刊行物の音訳利用者数が高いことが理由の一つと考えられる。 [25ページ] 第7章 プライベート触図訳サービスの利用状況 1. 利用率 回答者202人のうち,触図訳のサービスを受けていた人は16人(7.9%),受けていなかった人は182人(90.1%),無回答4人であった(図7-1)。点訳・音訳サービスの利用率がどちらも40%超であることと比べると[7],触図訳サービスの利用率は低い。触図訳サービスを受けている16人は全員全盲者であり,全盲者172人に対する割合は9.3%であった。 触図訳サービスの利用率が地域間で異なるかどうかを調べるため,回答者の居住地区を東京23区,政令指定都市,中核市,その他の市,町村に分けた。それぞれの区分からの回答者数は,12人,50人,44人,68人,11人となった。区分ごとにサービスの利用率を求めたのが図7-2である。東京23区と町村における利用率が高いが,Fisherの直接確率検定を行ったところ,自治体の区分による有意な差は見られなかった(p = 0.077)。 図7-1 触図訳サービスの利用率(円グラフ) 触図訳利用:16人(7.9%) 触図訳不利用:182人(90.1%) 無回答4人 n=202人 図7-2 地方自治体区分別に見た触図訳サービスの利用率(横棒グラフ) 東京23区(12人):25.0% 政令指定都市(50人):6.0% 中核市(44人):11.4% その他の市(68人):4.4% 町村(11人):18.2% n=185人 2. 依頼先 触図訳サービス依頼先の回答数を図7-3に示す(複数回答)。点訳サークルの利用者が9人と最も多く,サービス利用者16人の56.3%となった。次いで点字図書館,個人ボランティア,友人・知人に依頼している人がいずれも4人(25.0%)であった。その他の具体的な回答は,歩行訓練士に触地図を作ってもらった人が2人,所属する団体の職員が1人であった。 図7-3 触図訳の依頼先(複数回答)(横棒グラフ) 点訳サークル:9人 点字図書館:4人 個人ボランティア:4人 友人・知人:4人 点字出版所:1人 意思疎通支援事業者:1人 その他:4人 3. 触図訳文書 触図訳文書のうち,調査者が選択肢として提示した文書への回答者数を図7-4に示す(複数回答)。地図を触図訳してもらっている人が最も多く14人(サービス利用者16人の87.5%)であった。ほかの文書を触図訳してもらっている人はいずれも少なく,グラフが4人,写真とイラストがいずれも2人,絵画が1人であった。その他の具体的な記述は,「講演や研修資料,行政の説明会のパワーポイント資料からの文字の取り出しと図の理解のための解説や並べ替え」であった。他の質問項目への回答であったが,平仮名と片仮名の形を触れるようにしてもらっているという記述もあった。 図7-4 触図訳文書(複数回答)(横棒グラフ) 地図:14人 グラフ:4人 写真:2人 イラスト:2人 絵画:1人 その他:1人 n=16人 4. 利用頻度 触図訳サービスの利用頻度を選択肢と自由回答で尋ねた。その他の回答を,これに付随する自由記述をもとに分類し,選択肢への回答数と合算した。この処理の結果としての利用頻度の分布を図7-5に示す。数ヶ月に1回という回答が最も多く7人,週に1回と月に1回がいずれも2人であった。年に1回以下(「特に必要としたとき」1人を含む)が5人であった。週に1回と高頻度で利用している人の依頼先は,1人が点訳サークル/ボランティア団体,プライベート点訳の意思疎通支援事業者,友人・知人,所属する団体の職員のいずれかと,あと1人は個人ボランティア,歩行訓練士のいずれかであった。 図7-5 触図訳サービスの利用頻度(横棒グラフ) 週に1回:2人 月に1回:2人 数ヶ月に1回:7人 年に1回以下:5人 n=16人 5. 利用上の問題 触図訳利用上の問題を選択肢と自由回答で尋ねた。回答者15人のうち7人が問題なしとした。問題を指摘した8人の回答のうち,その他の回答を,これに付随する自由記述をもとに分類した。その結果を図7-6に示す。選択肢のうち,時間がかかるを選んだ人が7人と最も多く,問題点を指摘した8人のほとんどとなった。「触図が分かりにくい」(選択肢の「質が低い」を選択した1人をここに含めた)と「触図の作成に課題がある」はいずれも5人であった。「触図が分かりにくい」の具体的な記述は以下の通りである:触図の表現方法が少なく,識別しづらい:公共の触地図では記号が多く理解しづらい:行政説明の触図の質が低い:触図を読み取る力が必要である。「触図の作成に課題がある」の具体的な記述は以下の通りである:試料提供者と触図訳者との密な連絡の必要性:触図依頼者と触図訳者の密な連絡の必要性:触図表現のノウハウがない:簡単に頼めるところがない:作成器具が高い。 図7-6 触図訳サービス利用上の問題(複数回答)(横棒グラフ) 時間がかかる:7人 触図が分かりにくい:5人 触図作成上の課題:5人 n=8人 6. サービスを受けていない理由 触図訳サービスを受けていない182人にその理由を尋ねたところ,178人から回答が得られた。基本的に択一選択だが,複数の理由を回答した人も10人いた。最も多かった回答はサービスを受ける必要がないとした人で90人(回答者178人の50.6%)だった。サービスを知らなかった人が55人(同30.9%),サービスの受け方が分からない人が17人(同9.6%)と多いのが,点訳・音訳とは異なる触図訳サービスの特徴である(図7-7(a))。 その他で自由記述された内容を調査者が分類した結果を図7-7(b)に示す。触図訳されても内容が分からないという理由を11人が挙げた。図を読む経験不足や図を読む自分の能力不足が挙げられている。触図訳の依頼先がないという理由も11人から得た(点字図書館がやっていない(3人),触図訳ができるサークルがない,団体によって質が異なる,依頼できるところが県内にはない,できる人がいなくなった,など)。ほかは,時間がかかるが3人,他の手段(ルーペ,拡大等)で代替しているが3人であった。 図7-7 触図訳サービスを受けていない理由 (a) 選択肢からの回答(円グラフ) 必要ない:90人(50.6%) サービス知らない:55人(30.9%) 受け方分からない:17人(9.6%) その他:31人(17.4%) n=178人 (b) 自由記述の分類(横棒グラフ) 触図が分からない:11人 依頼先がない:11人 時間がかかる:3人 他の手段で代替:3人 n=19人 7. 触図訳してほしい文書 現在サービスを受けていない人に,触図にしてもらいたい図を尋ねた。最も回答数が多かったのが地図で,92人(回答者123人の74.8%)が選んだ。これ以外は地図の半分以下の回答数となり,写真(39人,31.7%),イラスト(35人,28.5%),絵画(31人,25.2%),グラフ(28人,22.8%),その他(22人,17.9%)が選択された(図7-8)。 図7-8 触図訳してほしい文書(横棒グラフ) 地図:92人 写真:39人 イラスト:35人 絵画:31人 グラフ:28人 その他:22人 n=123人 8. 考察 8.1 触図訳の課題 触図訳サービス利用上の問題点(図7-6)と,サービスを受けていない理由(図7-7)は,おおむね同じ内容となっている。これらから,触図訳特有の根本的な課題を次の2点に絞ることができる。 (1) 触図が分からない:触図を読み取るのに技量が必要であり,自分は読めないと諦めている視覚障害者が存在する。 (2) 触図作成上の課題:分かりやすい触図を作成するには技量が求められる。具体的には,図の目的を理解すること,触って分かりやすい表現方法について熟知していること(分かりやすい触図作成のガイドラインは,日本語のもの[24]のほかに,北米[25],オーストラリア[26],スウェーデン[27]のものなどがある),図の目的が伝わるような触図に翻案できること,図の作成技術(現在では主としてパソコン上の作図ソフトウェアを使用する技量)をもつこと,これらすべてが必要となる。図の目的を正確に把握するためには,調査への自由記述にあった通り,原図の提供者(行政など)・依頼者(視覚障害者)・触図作成者の間で密な連絡を取る必要もしばしばある。更に1線ごと丁寧に描画していくと,どうしても長い時間がかかる。最終的に触図を印刷するには,点字プリンタや立体コピー機など,比較的高価な機器が必要となる。 この(2)の作成上の課題は,触図の作成を依頼できる人の少なさにつながり,更には依頼先となる点訳サークルや点字図書館の少なさにつながる(図7-3)。触図訳サービスをしている点訳サークルや点字図書館が少なければ,同サービスの存在を知らない視覚障害者がいるのも当然であり(図7-7(a)),視覚障害者からの要望がなければ点訳サークルや点字図書館も触図訳サービスの必要性に気付けない,という悪循環に陥る。 これらの課題を解決するための案を考察する。作成者に求められる図の目的の理解,触図ガイドラインの学習,触図作成技術の習得を促進するには,作成希望者向けの講習会の開催が有効であろう。実際,触図に関する国際会議Tactile Graphics 2005(2005年12月1日-2日,Birmingham, UK)では,プレカンファレンス行事として,触図入門者向けの講習会(The diverse world of tactile graphics: an introduction for novices)が開かれ,触図とは何か,触図の作成方法,触図の設計と利用方法について実演を交えて説明された。触図の作成方法に関する講習会は日本でも行われているものの,受講対象が教科書点訳者を中心としている傾向がある[28]-[30]。これを,教科書以外の図を含めた講習会とすることが望まれる。 触図の作成に時間がかかることに対しては,原図データをもとに触図を自動生成するソフトの開発が有効であろう。そのようなソフトウェアの開発が地図[31]-[33],グラフ [34]-[36] ,星図[37],一般の図[38],[39]を対象に行われている。その一部は既に実用化されているが,その性能の更なる向上が求められる。 高価な触図作成機器が必要となることに対しては,点字図書館や盲学校など活動の拠点となる施設・団体が機器を所有し,そこで印刷作業を行えばよく,触図を作成する個人が機器を所有する必要はない。これは点訳サービスにおいて既に実施されている方法である。 8.2. 地図へのニーズ 現在触図訳をしてもらっている文書と(図7-4),触図訳サービスで訳してもらいたい文書のいずれでも(図7-8),最も多くの人が挙げたのは地図だった。情報提供施設で作成している触図においても,具体的に挙げられたのは地図であった。日本点字図書館が同館の利用者を対象に点字利用について尋ねた調査結果においても,録音図書より点字図書を利用する理由として調査者が用意した選択肢以外の回答で最も多かったのが地図を読むためであった[23]。これらのことから,点訳サークルや点字図書館が触図訳サービスを始める場合,まずは地図を対象とするのがよいと考えられる。著者らは触地図の作成サービスを2010年から続けており[40],視覚障害者のニーズに合致したサービスであったと言える。 [30ページ] 第8章 当事者からの意見 -補助者による情報保障の確立を- 社会福祉法人 日本盲人会連合   会長 竹下 義樹 1. 視覚障害者にとっての情報保障  視覚障害者にとって永久の課題は情報保障である。外出時における安全確保といえども,その本質は情報保障である。なぜならば,歩行時の段差や路面の状況,障害物の有無,自動車等の接近は,全て情報であって,それらの情報が視覚によって獲得できないからこそ,安全が確保できないのである。ましてや,人間としての尊厳を保ち,生活の質を維持・向上させ,自己実現をはかるためには,日々の情報は極めて重要な意味をもち,情報の的確性や充足が生活の質を決定づけ,自己実現の基礎となるのである。とりわけ,文書による情報は,教育にとどまらず,人間の成長を支え,想像力を身に付けるために重要であることは,今更指摘するまでもないことである。 「点字」が考案され,録音技術が進歩し,さらには対面朗読を含めたボランティア等の支援が定着した今日においては,視覚障害者は,職業的選択を広げることができるようになったし,趣味や教養を通じた豊かな感性を育てることもできるようになった。私事ではあるが,14歳で失明した私にとって,点訳書,録音図書,そして対面朗読サービスが得られたからこそ,大学に進学し,弁護士という職業に就くことができたのであって,そのことは,今日においては,すべての視覚障害者にとって,共通の条件となっているのである。それだけに,この度の渡辺准教授による調査・研究は,現状の問題点を改めて分析し,次代に求められる人的支援を探る上で重要な意義をもつことになるはずである。 2. 現状の課題 わが国においては,点字に関する文法は確立しているし,点訳者のためのテキストやカリキュラムも存在するが,それが全国的に共通したテキストやカリキュラムとして認証され,あるいは定着しているかが気になるところである。とりわけ,触図については,視覚障害者が位置関係や全体像を把握する上で有用であるにもかかわらず,盛り込むべき情報の量や表示方法等が未だ統一されていない。また,触図を使いこなすための訓練もあまり行われていないため,その有用性が十分には理解されず,触図の普及そのものも拡大していない。 録音図書の作成においても,文字情報以外の情報をどのように扱うかや,使用されている漢字の説明の要否等についても,全国的に統一されているとは言えない。 近年,特に問題となりつつあるのは,代読・代筆サービスである。たとえば,金融機関に出向いた際の預貯金残高の確認や払戻手続きに必要な書面への署名,賃貸借契約や売買契約等の締結における代読と代筆等が受けられるか否かによって,日常生活や社会生活に支障を来す事態が発生しているのである。預貯金の預け入れや払い戻しについては,金融庁の指導を受けて,全国の金融機関が代筆・代読のシステムを確立しつつあるが,ローン契約,クレジット契約,保険契約等の重要な契約書作成等については解決の目処は立っていない。郵便物の確認や商品選択の際のカタログの代読ないし申込書の記載等については,代読・代筆するためのサービスを障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律において,地域生活支援事業としての意思疎通支援事業の中で行うことができるとされているが,未だほとんどの自治体において未実施の状態である。そのため,視覚障害者のほとんどは,親族による支援が受けられない場合に,極めて困難な状況に陥るのである。 3. 提言 以上のような視覚障害の特性と情報保障における支援の現状を,渡辺准教授による調査研究の結果を参考として考えた場合,以下のような取り組みを提案するものである。 (1) 点訳・音訳のテキストやカリキュラムを全国的に統一されたものとして確立し,文部科学省及び厚生労働省の認証を取り付ける。また,専門性の高い文献等の点訳ないし音訳ができる専門家を養成し,あるいは短時間で点訳や音訳ができる体制(短い選挙期間中に選挙公報を点訳ないし音訳する等)を作ることが必要である。そして,それらの者が安定的に点訳や音訳の業務を継続的に遂行できるシステムを検討することが急務である。 (2) 触図の重要性ないし有用性を関係者間で確認し,記載内容や記載方法,あるいは情報量に関する研究を行い,点字の文法に準じた規則(約束事)を作成し,これを全国的に統一されたものとする。 (3) 意思疎通支援事業としての代読・代筆が全国的に実施されるためには,意思疎通支援事業を自立支援給付(個別給付)として位置づけるとともに,代筆者や代読者を養成するためのテキストやカリキュラムを,これも全国的に統一されたものとして確立する。さらには,権利義務の得喪にかかわるような契約書等の作成にあたっては,一定の資格を有する者(弁護士,司法書士,行政書士,社会保険労務士等)による代読・代筆を公的に保障する制度が早急に検討されるべきである。 [32ページ] 参考文献 参考文献は,報告書全体を通じて初出順に番号を振り,初出した章ごとにまとめた。 【第1章】 [1] 日本盲人社会福祉施設協議会情報サービス部会(編), 高齢者と障害者のための読み書き支援-「見る資料」が利用できない人への代読・代筆-, 小学館, 東京, 2014. [2] 厚生労働省,障害福祉サービスの内容, http://www.mhlw.go.jp/bunya/shougaihoken/service/naiyou.html [3] 厚生労働省,地域生活支援事業, http://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/hukushi_kaigo/shougaishahukushi/chiiki/index.html [4] 本間一夫, 指と耳で読む, 岩波書店, 東京, 1980. [5] 全国視覚障害者情報提供施設協会, 点訳のてびき第3版, 全国視覚障害者情報提供施設協会, 大阪, 2002. [6] 全国視覚障害者情報提供施設協会, 初めての音訳第2版, 全国視覚障害者情報提供施設協会, 大阪, 2013. [7] サピエ図書館, https://library.sapie.or.jp/ [8] 渡辺哲也,加賀大嗣,山口俊光, "触図作成サービス・ライブラリの国際調査," ヒューマンインタフェースシンポジウム 2016, pp.83-86, 2016. [9] 大内進, 渡辺哲也, "英国における触図作成機関-その組織と作成手順の概要," 視覚障害 その研究と情報, No.197, pp.1-10, 2004. 【第3章】 [10] 統計局ホームページ, 地域区分, http://www.stat.go.jp/data/shugyou/1997/3-1.htm [11] 厚生労働省社会・援護局障害保健福祉部(編), 平成18年度身体障害児・者実態調査結果, 厚生統計協会, 東京, 2008. [12] 厚生労働省社会・援護局障害保健福祉部, 平成23年生活のしづらさなどに関する調査(全国在宅障害児・者等実態調査, http://www.mhlw.go.jp/toukei/list/seikatsu_chousa.html 【第4章】 [13] 日本盲人会連合, 視覚障害者の同行援護事業に関する実態把握と課題における調査研究事業報告書, 日本盲人会連合, 東京, 2014. http://nichimou.org/wp-content/uploads/2014/02/doukouengohoukokusyo.pdf [14] 厚生労働省, 介護給付費等の支給決定について, 障発0928第1号, 2011. http://www.mhlw.go.jp/seisakunitsuite/bunya/hukushi_kaigo/shougaishahukushi/kaiseihou/dl/tuuthi_111121_06.pdf [15] 渡辺哲也, 山口俊光, 南谷和範, "視覚障害者のパソコン・インターネット利用状況調査2013," 電子情報通信学会技術研究報告, Vol.114, No.217, pp.25-30, 2014. [16] 金融庁, 主要行等向けの総合的な監督指針, http://www.fsa.go.jp/common/law/guide/city/ [17] 金融庁, 中小・地域金融機関向けの総合的な監督指針, http://www.fsa.go.jp/common/law/guide/chusho/ [18] 金融庁, 障がい者等に配慮した取組みに関するアンケート調査の結果について(速報値), http://www.fsa.go.jp/news/27/ginkou/20150722-1.html 【第6章】 [19] 高津区役所保健福祉センター, ハートリレー第11回 点訳を通した支え合い・学び合い「点字サークル 芽の字会」, http://www.city.kawasaki.jp/takatsu/cmsfiles/contents/0000035/35874/heart-11p3.html [20] アメディア, 点訳とは?~最新点訳ノウハウ紹介, http://www.amedia.co.jp/product/pc-soft/support/tenyaku.html [21] 音ボラネット, 音訳を志す方へ, http://www.onyaku.net [22] AMTワールド, テキストデータを使ったデイジー図書の製作に役立つ(公共図書館), http://wp.amtworld.co.jp/blog/user/library [23] 点字利用と読書に関するアンケート調査委員会, 点字利用と読書に関するアンケート調査報告書, 日本点字図書館, 東京, 2014. http://www.nittento.or.jp/images/pdf/information/tenji_enquete.pdf 【第7章】 [24] 日本点字図書館 点字制作課, 点訳のための触図入門第2版, 日本点字図書館, 東京, 1988. [25] Braille Authority of North America, Guidelines and Standards for Tactile Graphics, 2010, 2011. http:// www.brailleauthority.org/tg/ [26] The N.S.W. 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[33] Cervenka, P., Brinda, K., Hanouskova, M., Hofman, P., "Blind Friendly Maps: Tactile Maps for the Blind as a Part of the Public Map Portal (Mapy.cz)," ICCHP 2016, Part 2, LNCS 9759, pp.131-138 2016. [34] Jayant, C., Renzelmann, M., Wen, D., Krisnandi, S., Ladner, R., Comden, D., "Automated Tactile Graphs Translation: In the Field," ASSETS '07, pp.75-82, 2007. [35] Cheng, J, Takagi, N., "A Pattern Recognition Method for Automating Tactile Graphics Translation from Hand-Drawn Maps," 2013 IEEE Int. Conf. Systems, Man, and Cybernetics, pp.4173-4178, 2013. [36] Watanabe, T., Araki, K., Yamaguchi, T., Minatani, K., "Development of Tactile Graph Generation Web Application Using R Statistics Software Environment," IEICE Trans. on Information & Systems, Vol.E99-D, No.8, pp.2151-2160, 2016. [37] Taguchi H., Yamaguchi T., Watanabe, T., "Development of a Tactile Star Chart Automated Creation System," Universal Learning Design Collection of Abstracts, pp.100-102, 2012. [38] Way, T.P., Barner, K.E., "Automatic Visual to Tactile Translation, Part I: Human Factors, Access Methods and Image Manipulation," IEEE Trans. Rehabilitation Engineering, Vol.5, No.1, pp.81-94, 1997. [39] Pather, A. B., "The Innovative Use of Vector-based Tactile Graphics Design Software to Automate the Production of Raised-Line Tactile Graphics in Accordance with BANA's Newly Adopted Guidleins and Statistics for Tactile Graphics, 2010," J. Blindness Innovation and Research, Vol.4, No.1, 2014. http://dx.doi.org/10.5241/4-49 [40] Watanabe, T., Yamaguchi, T., "Six-and-a-Half-Year Practice of Tactile Map Creation Service," Harnessing the Power of Technology to Improve Lives (P. Cudd and L. de Witte (Eds.)), IOS Press, pp.687-694, 2017. [35ページ] 研究成果発表 本調査に関する学会発表・論文・成果報告会は以下の通りである。論文の1, 2, 3をもとに本報告書を構成した。 【学術論文】 1. 渡辺哲也, 小林真, 南谷和範, "視覚障害者のための代読・代筆サービス利用状況調査" 電子情報通信学会論文誌D, Vol.J101-D, No.2, pp.377-385, February 2018. 2. 渡辺哲也, 小林真, 南谷和範, "視覚障害者のための点訳・音訳サービス利用状況調査," ヒューマンインタフェース学会論文誌, Vol.20, No.1, pp.13-20, February 2018. 3. 渡辺哲也, 加賀大嗣, 小林真, 南谷和範, "視覚障害者のための触図訳サービスに関する調査," ヒューマンインタフェース学会論文誌, Vol.20, No.2, May 2018.(印刷中) 【解説】 1. 渡辺哲也, "視覚障害者の意思疎通支援サービス及びICT機器利用状況の地域間差の分析," 保健医療科学, Vol.66, No.5, pp.523-531, 2017. 【学会発表】 1. 渡辺哲也, 小林真, 南谷和範, "視覚障害者のための代読・代筆サービス利用状況・要望調査," 電子情報通信学会技術研究報告, Vol.117, No.29, pp.49-54 (HCS2017-7), 那覇市, May 2017. 2. 渡辺哲也, 小林真, 南谷和範, "視覚障害者のための触図訳サービス利用状況調査," 電子情報通信学会技術研究報告, Vol.117, No.188, pp.1-5 (WIT2017-14), 秋田市, August 2017. 3. 渡辺哲也,小林真, 南谷和範, "視覚障害者のための点訳・音訳サービス利用状況調査," ヒューマンインタフェースシンポジウム 2017, pp.193-198, 大阪市, September 2017. 4. 小林真, 渡辺哲也,南谷和範, "聴覚障害学生のICT機器及び人的支援利用状況調査," ヒューマンインタフェースシンポジウム 2017, pp.199-204, 大阪市, September 2017. 【市民公開講座】 「点訳・音訳サービス利用状況調査報告会」 会場:すみだ産業会館サンライズホール第4会議室(東京都墨田区) 日時:平成29年11月1日10:30~12:30 [付録] アンケート調査票 [37ページ] 調査票 本調査は、新潟大学倫理委員会の倫理審査を受け、新潟大学長の許可のもと実施いたします。調査の費用は、厚生労働科学研究費補助金により支出されています。 研究目的:視覚障害者の代読・代筆・点訳・音訳・図訳の利用状況を調査し、結果を報告書としてまとめて公開することにより、 (1) 政府(厚生労働省ほか)にとっては、同行援護事業・意思疎通支援事業・居宅介護支援事業等に関連する施策立案の基礎資料とする。 (2) 上の事業従事者、ボランティア、情報提供施設職員等にとっては、代読・代筆・点訳・音訳・図訳サービスに対する要望の基礎資料となる。 (3) 同サービスを利用している視覚障害者にとっては、サービス向上のための要望を政府・自治体・サービス提供者に伝える機会となる。同サービス未利用の視覚障害者にとっては、サービスを知る機会となる。 調査方法:ご所属の視覚障害者団体から配布された調査票にご記入の上、ご所属の視覚障害者団体へご返送下さい。各視覚障害者団体は記入済み調査票を取りまとめて日本盲人会連合へ送ります。 回答に要する時間は1時間程度と見込んでいます。 調査結果は、メーリングリスト、講演、学会発表、報告書などで公開いたします。ほかの方々のサービス利用状況などを、今後のサービス利用の参考になさって戴けるかと思います。なお、公開の際に、個人を特定できる情報は出しません。 回答頂いた用紙は、調査期間終了時(平成30年3月31日)までにすべて破棄します。 本件に関する問い合わせ・苦情等は、調査実施の代表者である新潟大学の渡辺哲也までお寄せ下さい。 住所:新潟市西区五十嵐2の町8050 電話:025-262-6133 メール:t2.nabe@eng.niigata-u.ac.jp 以上の研究の趣旨にご賛同頂き、記入済み調査票の提出をもって、アンケートの趣旨に同意したものとさせて戴きます。 アンケートの回答を提出後に撤回(回答したすべてのデータの破棄)を希望される場合は、上の連絡先までご連絡下さい。 [38ページ] パート1. あなた個人に関する質問 1. 性別をお答え下さい。(単一選択) ア.男性 イ.女性 2. ご自身の年代について、下の選択肢から一つお選び下さい。(単一選択) ア.10歳~19歳 イ.20歳~29歳 ウ.30歳~39歳 エ.40歳~49歳 オ.50歳~59歳 カ.60歳~69歳 キ.70歳~79歳 ク.80歳以上 3. お住まいの都道府県と市町村をお答え下さい。(記入式) 4. 身体障害者手帳(視覚障害)をお持ちかどうか、お持ちの場合は等級もお答え下さい。(単一選択、記入式) ア. 持っている(等級: 級) イ. 持っていない 5. 視覚を使って文字の読み書きができますか?(単一選択) ア.できる イ.できない パート2.代読・代筆に関する質問 1. 現在、代読・代筆のサービスを受けていらっしゃいますか?(単一選択) ア. 代読・代筆のサービスを受けている イ. 代読のサービスのみを受けている ウ.代筆のサービスのみを受けている エ.どちらのサービスも受けていない 質問1で「ア」「イ」「ウ」とお答えになった方は2から7の質問にお答え下さい。 「エ」とお答えになった方は8から10の質問にお答え下さい。 2から7の質問は、代筆・代読のサービスを受けている方に伺います。 2. 代読・代筆のサービスをどなたから受けていますか?下の選択肢からお選び下さい。二つ以上を選択しても構いません。(複数選択可) ア. 視覚障害者移動支援従事者(同行援護者) イ. 居宅介護サービスのヘルパー ウ. 家族、同居者 エ. 友人、知人 オ. その他(具体的にお書き下さい) 3. 代読サービスで読んでもらっているものを下の選択肢からお選び下さい。二つ以上を選択しても構いません。(複数選択可) ア. 郵便物 イ. 各種説明書 ウ. 新聞・雑誌・チラシ エ. その他(具体的にお書き下さい) 4. 代筆サービスで書いてもらっているものを下の選択肢からお選び下さい。二つ以上を選択しても構いません。(複数選択可) ア. 官公署(市役所、年金事務所など)の書類 イ. 公共機関(郵便局、銀行、NTT、電力・ガス会社、水道局、病院、学校など)の書類 ウ. 福祉施設の書類 エ. その他(具体的にお書き下さい) 5. 代読・代筆サービスを利用する頻度を下の選択肢から一つお選び下さい。 ア.ほぼ毎日 イ.週2回から3回程度 ウ.週1回程度 エ.月2回から3回程度 オ.月1回程度 カ.数ヶ月に1回程度 キ.その他(具体的にお書き下さい) 6. 代筆・代読サービスを断られたことがありますか? ア. 代読を断られたことがある(どこで、誰が、何の代読を断ったか、具体的にお書き下さい) 具体例: イ. 代筆を断られたことがある(どこで、誰が、何の代筆を断ったか、具体的にお書き下さい) 具体例: ウ.断られたことはない 7. 代筆・代読サービスを受ける中で問題点を感じることがありますか? あるようでしたら、下の選択肢からお選びになるか、あるいは具体的にお書き下さい。選択肢は二つ以上を選んでも構いません。(複数選択可、記入式) ア. 読んでくれた内容(文章の意味)が分からなかった。 イ. 写真、図、イラスト、グラフ、表の説明が分からなかった。 ウ. 個人情報/プライバシーが守られるか不安である。 エ. その他(具体的にお書き下さい) オ. 困ったことは特になかった。 代読・代筆に関する質問へご回答下さり、ありがとうございました。 引き続き、パート3へお進み下さい。 8から10の質問は、代筆・代読のサービスを受けていない方に伺います。 8. 代筆・代読サービスを受けていない理由を下の選択肢から一つお選び下さい。 ア. サービスを受ける必要がない イ. サービスがあることを知らなかった ウ. サービスがあることは知っていたが、サービスの受け方が分からない エ. その他(具体的にお書き下さい) 9. 今後、代読サービスで読んでもらいたいものがありましたら、下の選択肢から選ぶか、具体的にご記入下さい。選択肢は二つ以上選んでも構いません。 ア. 郵便物 イ. 各種説明書 ウ. 新聞・雑誌・チラシ エ. その他(具体的にお書き下さい) オ. 代読してほしいものは特にない 10. 今後、代筆サービスで書いてもらいたいものがありましたら、下の選択肢から選ぶか、具体的にご記入下さい。選択肢は二つ以上選んでも構いません。 ア. 官公署(市役所、年金事務所など)の書類 イ. 公共機関(郵便局、銀行、NTT、電力・ガス会社、水道局、病院、学校など)の書類 ウ. 福祉施設の書類 エ. その他(具体的にお書き下さい) オ. 代筆してほしいものは特にない パート3.プライベート点訳に関する質問 1. 個人のニーズに応じたプライベート点訳サービスをご利用になっていますか? ア. はい イ. いいえ 質問1で「はい」とお答えになった方は2から5の質問にお答え下さい。 「いいえ」とお答えになった方は6から7の質問にお答え下さい。 2. プライベート点訳を依頼しているところを下の選択肢からお選び下さい。二つ以上を選択しても構いません。 ア. 点字出版所 イ. 点字図書館 ウ. 点訳サークル/ボランティア団体 エ. プライベート点訳・代読の意思疎通支援事業者 オ. 個人ボランティア カ. 友人・知人 キ.その他(具体的にお書き下さい) 3. プライベート点訳してもらっている書籍等を下の選択肢からお選び下さい。二つ以上を選択しても構いません。 ア.雑誌 イ. 小説 ウ. ノンフィクション エ. 教科書 オ. 専門書(専門分野等を具体的にお書き下さい) カ. その他(具体的にお書き下さい) 4. プライベート点訳サービスを利用する頻度を下の選択肢から一つお選び下さい。 ア.週1回程度 イ.月2回から3回程度 ウ.月1回程度 エ.数ヶ月に1回程度 オ.その他(具体的にお書き下さい) 5. プライベート点訳サービスを受ける中で問題点を感じることがありますか? あるようでしたら、下の選択肢からお選びになるか、あるいは具体的にお書き下さい。選択肢は二つ以上を選んでも構いません。(複数選択可、記入式) ア. 一般的な書籍の点訳に時間がかかる(例:数日でほしいところを1ヶ月かかる、など) イ. 一般的な書籍の点訳の質が低い(誤訳がよく見られる、など) ウ. 教科書・専門性の高い書籍の点訳ができない(対応してくれない、依頼先が分からない、など) エ. 教科書・専門性の高い書籍の点訳に時間がかかる オ. 教科書・専門性の高い書籍の点訳の質が低い カ.その他(具体的にお書き下さい) キ.特に問題はない プライベート点訳に関する質問へご回答下さり、ありがとうございました。 引き続き、パート4へお進み下さい。 6から7の質問は、プライベート点訳サービスを受けていない方に伺います。 6. プライベート点訳サービスを受けていない理由を下の選択肢から一つお選び下さい。 ア. サービスを受ける必要がない イ. サービスがあることを知らなかった ウ. サービスがあることは知っていたが、サービスの受け方が分からない エ. その他(具体的にお書き下さい) 7. 今後、プライベート点訳してもらいたいものがありましたら、下の選択肢から選ぶか、具体的にご記入下さい。選択肢は二つ以上選んでも構いません。 ア.雑誌 イ. 小説 ウ. ノンフィクション エ. 教科書 オ. 専門書(専門分野等を具体的にお書き下さい) カ. その他(具体的にお書き下さい) パート4.プライベート音訳に関する質問 1. 個人のニーズに応じたプライベート音訳サービスをご利用になっていますか? ア. はい イ. いいえ 質問1で「はい」とお答えになった方は2から5の質問にお答え下さい。 「いいえ」とお答えになった方は8から10の質問にお答え下さい。 2. 音訳を依頼しているところを下の選択肢からお選び下さい。二つ以上を選択しても構いません。 ア. 録音制作所 イ. 点字図書館 ウ. 音訳サークル/ボランティア団体 エ. プライベート点訳・代読の意思疎通支援事業者 オ. 個人ボランティア カ.友人・知人 キ. その他(具体的にお書き下さい) 3. 音訳してもらっているものを下の選択肢からお選び下さい。二つ以上を選択しても構いません。 ア.雑誌 イ. 小説 ウ. ノンフィクション エ. 教科書 オ. 専門書(専門分野等を具体的にお書き下さい) カ. その他(具体的にお書き下さい) 4. 音訳サービスを利用する頻度を下の選択肢から一つお選び下さい。 ア.週1回程度 イ.月2回から3回程度 ウ.月1回程度 エ.数ヶ月に1回程度 オ.その他(具体的にお書き下さい) 5. 音訳サービスを受ける中で問題点を感じることがありますか? あるようでしたら、下の選択肢からお選びになるか、あるいは具体的にお書き下さい。選択肢は二つ以上を選んでも構いません。(複数選択可、記入式) ア. 一般的な書籍の音訳に時間がかかる(例:数日でほしいところを1ヶ月かかる、など) イ. 一般的な書籍の音訳の質が低い(誤訳がよく見られる、など) ウ. 教科書・専門性の高い書籍の音訳ができない(対応してくれない、依頼先が分からない、など) エ. 教科書・専門性の高い書籍の音訳に時間がかかる オ. 教科書・専門性の高い書籍の音訳の質が低い カ.その他(具体的にお書き下さい) キ.特に問題はない プライベート音訳に関する質問へご回答下さり、ありがとうございました。 引き続き、パート5へお進み下さい。 6から7の質問は、音訳サービスを受けていない方に伺います。 6. 音訳サービスを受けていない理由を下の選択肢から一つお選び下さい。 ア. サービスを受ける必要がない イ. サービスがあることを知らなかった ウ. サービスがあることは知っていたが、サービスの受け方が分からない エ. その他(具体的にお書き下さい) 7. 今後、音訳してもらいたいものがありましたら、下の選択肢から選ぶか、具体的にご記入下さい。選択肢は二つ以上選んでも構いません。 ア.雑誌 イ. 小説 ウ. ノンフィクション エ. 教科書 オ. 専門書(専門分野等を具体的にお書き下さい) カ. その他(具体的にお書き下さい) パート5.プライベート図訳に関する質問 この調査では、地図、グラフ、写真、イラスト、絵画などの図情報を触図に変換することを図訳と呼ぶことにします。 1. 個人のニーズに応じたプライベート図訳サービスをご利用になっていますか? ア. はい イ. いいえ 質問1で「はい」とお答えになった方は2から5の質問にお答え下さい。 「いいえ」とお答えになった方は6から7の質問にお答え下さい。 2. プライベート図訳を依頼しているところを下の選択肢からお選び下さい。二つ以上を選択しても構いません。 ア. 点字出版所 イ点字図書館 ウ. 音訳サークル/ボランティア団体 エ. 意思疎通支援事業者 オ. 個人ボランティア カ. 友人・知人 キ. その他(具体的にお書き下さい) 3. プライベート図訳してもらっているものを下の選択肢からお選び下さい。二つ以上を選択しても構いません。 ア.地図 イ.グラフ ウ.写真 エ.イラスト オ.絵画 カ.その他(具体的にお書き下さい) 4. プライベート図訳サービスを利用する頻度を下の選択肢から一つお選び下さい。 ア.週1回程度 イ.月2回から3回程度 ウ.月1回程度 エ.数ヶ月に1回程度 オ.その他(具体的にお書き下さい) 5. プライベート図訳サービスを受ける中で問題点を感じることがありますか? あるようでしたら、下の選択肢からお選びになるか、あるいは具体的にお書き下さい。選択肢は二つ以上を選んでも構いません。(複数選択可、記入式) ア. 図訳に時間がかかる(例:数日でほしいところを1ヶ月かかる、など) イ. 図訳の質が低い ウ.その他(具体的にお書き下さい) エ.特に問題はない 6から7の質問は、プライベート図訳サービスを受けていない方に伺います。 6. プライベート図訳サービスを受けていない理由を下の選択肢から一つお選び下さい。 ア. サービスを受ける必要がない イ. サービスがあることを知らなかった ウ. サービスがあることは知っていたが、サービスの受け方が分からない エ. その他(具体的にお書き下さい) 7. 今後、プライベート図訳してもらいたいものがありましたら、下の選択肢から選ぶか、具体的にご記入下さい。選択肢は二つ以上選んでも構いません。 ア.地図 イ. グラフ ウ. 絵画 エ. その他(具体的にお書き下さい) 調査は以上です。ご協力ありがとうございました。 [奥付] 視覚障害者の人的支援サービス利用状況調査 編集・発行 国立大学法人 新潟大学 工学部 福祉人間工学科 渡辺 哲也 〒850-2181 新潟市西区五十嵐2の町8050番地 TEL: 025-262-6133 FAX: 025-262-7198 URL: http://vips.eng.niigata-u.ac.jp/ 発行月 2018年3月 印刷・製本 株式会社新潟印刷 (C) 渡辺 哲也 2018 [裏表紙] Funded by Health Labour Sciences Research Grant (H28-H29 Fiscal Year). A Survey on the Use of Human Support Services for Blind and Visually Impaired People Conducted by Tetsuya Watanabe, University of Niigata, Toshimitsu Yamaguchi, University of Niigata, and Kazunori Minatani, National Center for University Entrance Examinations.